第3話
過去の人間について調べる必要があった。
もう何千年も前の人類とはいえ、もはや別種の生き物だ。ネットで調べてもいいが、息子にも読みやすい図解の本を取り寄せた。
「ねぇ!尿?って何?」
「西暦人はね、食べ物をたべて、それをエネルギーにして動くのよ、それの残り滓とか、体から出さなきゃいけないものを出す機能があるの、それのひとつが、尿なのよ」
「食べ物?」
「時々、お母さんと一緒に、おひさまのキラキラ、浴びるでしょう?それの代わりなの」
「そうなんだ!」
西暦人は多くは食べて体内に溜めておけない。
人類以外、ペット全般が毎日餌をやらなければならないことはわかっていたが、まさかこんなに頻繁に食べるとは。しかも、一度の接種で、小指の関節二つ分ほどだ。かなりこまめにやらないといけない。
入れるものも多ければ、体から出すものまであるとは。ゲージから出す時に漏らすまで、まるで知らなかった。
強く握りすぎて中身がはみ出したのかと勘違いして、急いで纏ってる布を剥ぎ取って怪我の部位を探してしまった。西暦人は眼球からも汁を流していた。
本では足の付け根から尿が出ると描かれているが、まさか眼球からも出るとは。あてになるんだか、ならないんだか、子供向けの本だから、端折られている内容もあるのだろうか。
息子が西暦人に名前をつけたようだ。
西暦人がよく鳴く声だ。ギィギィ。声色からして、あまり良い意味ではないだろう。急に住処から遠く離れた土地にやってきて、ゲージに押し込められているのだし。
私は、手持ちの通信機の中にあるペット用の翻訳機能でこっそり西暦人の鳴き声の意味を調べて読んでみた。
「おうちに帰りたい」
息子には、翻訳機能を見せないことにした。
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