第27話 三年後……。

 ……また、例の悪夢をみた。


 ラモンはベッドから降りると顔をしかめた。

 左膝がいっそう悪くなっている。


 ダン!

 ダン!

 ダン!


 朝っぱらから銃声が裏庭で響いている。クロエの射撃練習だ。一日も欠かしたことのない朝の日課だ。



 あれから三年の歳月が流れた。クロエは17歳の美しい少女になり、またガンファイターとしてもめざましい成長を遂げている。

 ラモンは痛む左膝をさすりながら机の引き出しを開けた。

 そこにはクロエのYAMANEKOが眠っている。


 ――この銃はおれが預かる。

 ――どうして?

 ――おまえにはまだ早い。ときがくれば、これがどんな銃なのか教える。


 そう約束してクロエには別の拳銃リボルバーを与え現在に至っている。


「どれ、たまには師匠らしいこともしてみるか」


 杖をつきながらラモンは裏庭にでた。


 ダン!

 ダン!

 ダン!


 空き缶や空き瓶が軽快な音をたてて弾け飛んでゆく。シリンダーに銃弾を装填する手つきも鮮やかだ。淀みがない。

 思えばクロエは最初から銃の扱いには慣れていた。きっと父親のエディがある程度は教えていたのだろう。

 対象物には10メートルもの距離があるのにクロエは先ほどから一発もはずしてない。驚異の命中率だ。

 彼女のブラウンの髪が揺れる。顔はまだあどけなさを残してはいるが、当時145センチほどの身長もあれから20センチは伸びている。体格的には立派な大人の女性だ。

 当然、身につけていた衣服も合わなくなり、ラモンは大人用の綿シャツや厚手のジーンズを買い揃えて与えていた。


「ふむ………」


 アドバイスをしようにもラモンには口の出しようがなかった。

 だが、唯一いえることがあるとすれば……。


「おーい、ラモン!」


 ベアーズサイドタウンの保安官ドッジ・テッサリが二人の保安官助手を引き連れてやってきた。

 クロエはテッサリの顔をみると露骨に顔をしかめた。何事にも命令口調で横柄なことこの上もない人物だ。


「おまえさんにちょいと頼みたいことがあるんだが……」


 そういうとテッサリはラモンの左足をみた。もはや杖なしでは歩けない体になっているラモンに一片の同情を示していった。


「今日の午後3時。広場で公開処刑が行われる。そこで警固役を頼みたいと思ってきたんだ」


「死刑囚の警固だったらそこの助手が二人もいるだろう」


 ラモンが杖で後ろの二人を指し示す。


「死刑囚の警固じゃなく、見物に集まってくる住人の警固さ」


死刑囚ヤツはそれほど大物なのか?」


 仲間や身内が囚人の身柄を奪還にくるかもしれないとテッサリはいう。


「だれだ、そいつは?」


 テッサリはひとつ間をおくと溜め息まじりにいった。


「ゴンゾ・バジーナ。バジーナ三兄弟の末弟だ」




   第28話につづく

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