第26話 品定め
「脱げ」
ラモンに連れてこられた場所は山小屋ふうの一軒家であった。噂どおり宿場町のはずれに居を構えている。
クロエはラモンとのポーカー勝負に負けた。
ラモンが公開した手札は一見して数字がバラバラだった。
462J10。
だが、
――あたしの命をあんたにやる。
そうラモンに啖呵を切った手前、クロエは彼の誘いを断ることができなかった。
「……やはり、そういうこと」
ラモンが見ている前でクロエは服を脱ぎ全裸になった。身には一糸もまとっていない。
「年はいくつだ?」
「今日で14になった」
「そうか……」
ラモンが椅子から立ちあがり近づいてきた。
クロエはもう子供ではないので、これからなにが行われるかはわかっている。
「ふむ……」
ラモンがペタペタとクロエのお尻や胸を触ってなにやら呟いている。まるで品定めをしているかのようだ。
こうなることは負けた時点で覚悟ができている。なるべく早くことが終わるのをクロエは願った。
だが……
ラモンは椅子にもどるとクロエの服を投げ返してよこした。
「もういいぞ。着ろ」
「へ?」
お触りだけで満足したのだろうか? クロエは間の抜けた返事をした。
「しないの?」
「なにをだ?」
「アレよ。そのつもりであたしをここへ連れ込んだんでしょ」
「おれはあいにくとお子様には興味がないんだ」
「じゃあ、なんで――」
裸にしたのかと訊く前にラモンの怒声が飛んできた。
「だから服を着ろといっただろう! おまえは露出狂か?!」
ひとを裸にしておいてなんという言い草だろう。クロエはラモンをにらみつけながら身繕いをした。サントスにもらった少年カウボーイの男物衣装だ。
「……親父の仇を討ちたいんだろう?」
低い声でラモンが訊く。
クロエはただ黙ってうなずくのみだ。
「バジーナ三兄弟か……」
独りごちて腕を組んだ。非情な
「3年」
ラモンが断言した。
「おまえの骨格と肉付きから判断して一人前のガンファイターになるには早くても3年はかかる。明日から特訓を開始するから覚悟しとけよ」
「なんで?」
再びクロエは疑問を口にした。自分は勝負に買ったのに。
「おまえの親父さんには世話になった」
「それだけ?」
「おまえの気迫と覚悟も伝わってきた」
「あんたって……」
「なんだ?」
「いや、なんでもない」
案外いいひとかも……という言葉を呑み込んでクロエは口をつぐんだ。
悪ぶってはいるが真の悪人ではないようだ。
ラモンは立ちあがると台所にいき、コーヒーを二人分いれてもどってきた。
「飲め」
ラモンが先にマグカップに口をつける。
クロエはその横顔をチラリと見やるといった。
「ガマンできなくなったらいってね」
ブーーッ!
ラモンがコーヒーを盛大に噴きこぼしたのはいうまでもない。
第27話につづく
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