第21話 ノーズピン

「用心棒ふぜいがエラソーにッ! 死にやがれッ!!」


 ゴリラ男は銃口をラモンに向けると拳銃リボルバーのトリガーを引いた。


 カチッ!

 カチッ!


「あれっ?!」


 ゴリラ男が何度トリガーを引き絞っても弾は発射されない。


「おっ、おい!」


 隣の小太りタヌキ顔が拳銃の撃鉄ハンマー部分を震える指で指し示す。


「げえっ!」


 ゴリラ男の口が開いたまま固まった。

 なんと撃針をたたくノーズピンの部分が折れている。ラモンは初弾をはずしたのではなく、ハンマーノーズのピンだけを狙い撃ちしたのだ。


 ゴリラ男とタヌキ顔はすごすごと無言で消えた。

 ラモンはといえば拳銃をホルスターに戻し、涼しい顔でカードをシャッフルしている。


「……凄い」


 クロエは思わず口にだして呟いていた。舌を巻くとこのことだ。

 父親が託した三枚の借用書にはそれぞれ意味があった。

 馬(移動手段)。

 銃(武器)。

 腕(スキル)。

 エディはその三つを手に入れ、荒野で生き抜けと娘に教えてくれたのだ。


「勝負はポーカーでいいな?」


「ポーカーで父に負けたの?」


 クロエはあえて訊いた。


「いや、負けたジャンルでまた勝負するのはバカだけだ」


 ラモンはクールにいい放った。




   第22話につづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る