第22話 ノーカード

(このひと、いままでのひとたちとは違う)


 クロエは警戒感を露わにした。落ちぶれてはいるが、正確無比な射撃の腕といい只者ではない雰囲気をまとっている。


「借りたカネは320デナルだったな」


「そうだけど……」


「では、3倍の利子とおまけをつけて、きっちり1000デナル返そうじゃないか」


 チップ一枚を金貨10枚(100デナル)に数えて勝負しようとラモンはいう。


「……わかった」


 ラモンはクロエの手元にチップ10枚とカードの束を押しやった。


「交渉成立だ。配れ」


 クロエがディーラーとなってカードを配る。

 お互い裏向きにして5枚ずつ。

 山札を左脇に置く。


「ベッド」


「ッ!!」


 ラモンがいきなりチップ10枚を場に賭けてきた。

 彼が勝てば借金はチャラだ。降りることは許されない。


「コール!」


 クロエもチップ10枚を賭けた。

 ドロー(カード交換)は1回のみ。ベッティンググランド(賭け金の吊り上げ)は2回とあらかじめ取り決めてある。


 ラモンは持っていた5枚のカードをすべて捨て、山札から新たに5枚引いてきた。


「ベッド」


 さらにチップ10枚を乗せてくる。


「ッ!!」


 負ければクロエの方が新たに1000デナルもの借金を背負うことになる。

 現時点でクロエのカードに役はできていない。

 まったくのノーカードであった。




   第23話につづく

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