第15話 異国の男

「ヤマネコ……?」


 どうやら異国の言葉のようだ。クロエは刻印された文字を撫でると老人に視線を向けた。


「Wildcat……山猫のことじゃよ。極東の島国からきた男の銃だ」


「そのひとの名前が”山猫”?」


「それはわからん。ある日ふらりとやってきて銃の修理を頼みおった。前金を払っていったが、そいつは二度とわしの前に現れることはなかった」


「死んだの?」


「それもわからん。背中にカタナとかいう変な長いソードを差していたな」


 クロエは銃把を握り締めるとトリガーに指をかけた。六連発の回転式弾倉シリンダーに弾が入ってないのは確認済みだ。


「これがいい」


 まだクロエの手には大きい気もするが、なぜだかしっくり馴染む感じがする。


「それはダメだ。売り物じゃない。客の預かり物だ」


 コルブッチはにべもなくはねつける。


「そのひとが姿を消して何年?」


「かれこれ5、6年は経つか……」


「コルブッチさんもこの銃が気にいったんでしょ」


 クロエが見透かしたような目で老人を見る。わざわざ売り払いもせず、引き出しの奥にしまっているのはこの銃の価値に気づいているからだろう。


「それじゃあ……」


 クロエは借用書をコルブッチの手前のテーブルに滑らせた。


「それじゃあ、なんだ?」


「カードで勝負しましょ」



   第16話につづく

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