第14話 YAMANECO
「そうか……エディは死んだのか……」
クロエから事情を聞いてコルブッチ老人は深いため息を漏らした。
「まあ……わしもじきにそっちへゆくがな」
「父とは親しかったんですか?」
赤子のころのクロエを預けて世話を頼んでいたのだ。それなりの間柄であったことは想像できる。
「それほどでもないさ。第一親しかったら借用書など残してはおくまい」
「はあ……」
としかクロエは返事のしようがない。ギャンブラー同士の複雑でドライな関係は独特なものといえるかもしれない。
「いまさら取り立てにきても手元にカネはない。この工房のなかにある銃を適当に選んで持っていけ」
違い棚やラックには大小さまざまな銃が飾られてある。
クロエは改めて見回すといった。
「これ全部、コルブッチさんの作品ですか?」
「そんなわけなかろう。なかには自作もあるが、たいていは修理したり改造したりしたものだ。まあ、こんな年寄りでも腕はまだ衰えちゃおらんがね」
コルブッチ老人の小鼻が自慢げにうごめいた。瞬間、視線が机の引き出しに飛んだのをクロエは見逃さない。
クロエは机の引き出しの取手に指をかけた。
「おい、それはッ!」
思わずコルブッチ老人が腰を浮かす。
本当に大切なものは人目につくところには置いておかない。
クロエは引き出しの奥にしまわれていた一丁の拳銃を取り出した。
その真鍮の握りの部分には『YAMANECO』と刻印されてあった。
第15話につづく
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