第13話 ガンスミス

 アトラスを駆って西へまっすぐ進むと、粗末な造りの工房が見えてきた。

 周囲に民家はなく、まさに荒野にぽつんと建てられた一軒家といった風情である。

 クロエは馬を降りると、玄関ポーチのきざはしに足をかけた、そのとき——


 扉が内側から開き、ショットガンの銃身がにょきっと突き出された。


「ッ!」


 反撃しようにもクロエは銃を持っていない。少年カウボーイの姿ではあるが丸腰だ。

 突き出された銃身の持ち手が現れた。

 ジャック・サントスが初老の男性であったのに比べ、こちらはまごうことなき老人であった。頭頂部は見事に禿げあがり、腰は曲がって前屈みになって散弾銃を構えている。


「コダー・コルブッチさんですか?」


 落ち着いた声音でクロエは訊いた。


「そうだが、おまえさん……女か?」


 逆に問い返してきた。男装はしていても声をだせば女であることはバレる。


「借金の取り立てにきました」


 クロエは胸ポケットに折りたたんでいた借用書を取り出し開いて見せる。


「クロエか?」


「そうだけど……あたしを知ってるの?」


「ああ。おまえのオシメを替えてやったこともある。まあ、なかに入れ」


 ショットガンを納めて老人は手招きした。打って変わった歓待ぶりである。

 クロエは工房のなかに入るとぐるりと室内を見渡した。

 亡くなった父親の意図がわかってきた。

 ここは銃製造の工房で、この老人コダー・コルブッチは銃職人ガンスミスなのだ。


 第14話につづく







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