第12話 死のカード


 クロエはアトラスを乗りこなして去っていった。


 ——仇を討ちたくないの?


 言葉が通じたのかどうかはわからない。

 アトラスは不思議な馬だ。

 雨や嵐が吹くときは事前に察知し、高いいななきと蹄音で教えてくれた。サントスがアトラスを処分しなかったのは天候の予報代わりとして重宝だったからだ。


(人馬そろって復讐の旅にでるとは……)


 しかも乗り手はまだ少女だ。荒くれ者ぞろいの荒野を無事に渡っていけるとは思えない。

 サントスはテーブルの上に残された一枚のカードをみた。

 ❤️の4。

 クロエが山から奇跡的に引いてきたカードだ。

 きっちり21。

 そのときはこう思った。

 このコには運があるのではないかと……。

 だが、博打場で出会った、極東の島国からきた男がこんなことをいってたのを思い出した。


 ——おれの国では4は死を意味する数字だ。


(やはりイカサマを使ってでも止めるべきだったか……)


 サントスは山からもう一枚カードを引いた。

 それは抜いたはずの死神の絵札。

 ジョーカーのカードであった。




 第13話につづく












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る