第11話 アトラス


「この馬の名は?」


 玄関表に出るとクロエはサントスに訊いた。


「アトラスだ。殺された保安官の馬だ」


 苦虫を噛み潰したような口調でサントスはこたえた。

 このアトラスという赤毛の馬は保安官にだけなつき、決してそれ以外のものは背に乗せなかったという。


「アトラス、おいで。今日からあたしがあなたのご主人さまよ」


 クロエが無造作にアトラスのもとへ歩み寄る。

 アトラスがいななき、前足を高くあげて棹立ちになる。


「おい、やめろ! 蹴り殺されるぞ!」


 サントスが慌ててクロエの肩をつかむ。

 だが、その手を振り払うとクロエはアトラスに向かっていった。


「仇を討ちたくないの? アトラス!」



 第12話につづく







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