第8話 ギャンブラーの血統

「勝負?」


 思わずクロエは訊き返した。


「おれの借金はもともと、おまえさんの親父に負けてつくった博打の負債だ。博打の負債は博打で返したい。そういってるのさ」


 そういうとサントスは席を立ち、机の引き出しからカードを取り出してもどってきた。


「おれが負けたのはブラックジャックだ。ルールは知ってるな」


 知ってるもなにも父親と遊ぶときは常にカードゲームであった。エディはクロエを博打場に連れてゆくことはなかったが、こっそり宿を抜け出して父親のあとをつけていったことはある。

 そのときのエディはだれよりも輝いていた。初めて父親を誇りに思い、心底カッコいいと感じた。

 だけど、当のエディは旅暮らしの賭博師稼業を恥じていたようだ。

 娘に職場(?)を見られて以降、彼は根無し草の暮らしをやめ、定住を選んだ。すべては娘のためであった。


「……わかった」


 クロエは勝負を受けた。

 カードが配られる。

 カードを手にした瞬間、クロエの総身に電流がはしった。

 秘めていたギャンブラーの血がざわめいたのだ。



 第9話につづく





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