第5話 貸し馬屋
いままで住んでいた丘陵地隊の村から降りて、南へ60マイル進んだところにその貸し馬屋はあった。
ジャック・サントス。
宿場町の入り口となる場所で貸し馬屋を営んでいる男だ。
クロエが三枚あった借用書のなかから、このサントスを真っ先に選んだのは文字通り足がほしかったからだ。
馬屋の玄関脇の囲いには三頭の馬が太いロープに繋がれている。そのなかの一頭にクロエは目がいった。
燃えるような赤毛でたてがみが炎のように逆立っている。いかにも気性が荒そうな馬で、クロエの視線を感じるや否やじろりとにらみ返してきた。
クロエはますます興味を惹かれた。
赤毛の馬に歩みを向けると——
「おい、離れろ。ケガするぞ」
灰色のヒゲを綿菓子のように蓄えた初老の男がでてきてクロエに注意を促す。
「ジャック・サントスさんですか?」
クロエは振り向くと初老の男に向かって訊いた。
「そうだが……お嬢ちゃん、用件はなにかね?」
クロエはサントスの借用書を取り出すと、目の前に突きつけていった。
「借金の取り立てにきました」
第6話につづく
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