第3話 三枚の借用書

 クロエの父親エディ・ライドは元ギャンブラーであった。

 賭博で稼いだカネで牧場を買い取り、羊を育てていた。

 羊を放牧して追い立てるために馬を一頭飼っていたのだが、その一頭を押し入ってきた無法者に奪われ、抵抗した際、撃たれたのだ。


 ピーターの父親とともに牧場に駆けつけたクロエの目に飛び込んできたのは、血まみれの父親の姿だった。


「パパ、しっかりして!」


「エディさん、ここにくる前、医者を呼びにいかせてある。もうすぐ駆けつけてくるだろう」


 ピーターの父親の言葉にエディは空しく首を振ると、クロエに向かっていった。


「つ…机の引き出しに…三枚の……借用書が……ある。わしは……もう…おまえを……守ってやれん。その…借用書で……自分の身を守れ……」


「借用書……?」


 クロエが思わず訊き返す。だが、エディはこたえることなく、娘の前で息をひきとるのであった。



 第4話につづく









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る