11.終わる会話
「……」
「……」
フレイグ様の境遇を考えた結果、私は少し暗い気分になっていた。
それにより、会話が途切れてしまった。それではいけないと思いつつも、言葉が中々出てこない。
『淡々としているな……結婚だぞ? 結構重要なことであるはずだろうが。もっと慌てふためくもんじゃないのか?』
そんな私の耳に、ラフードの声が聞こえてきた。彼は、先程からずっとこんな感じである。
その時、思った。彼があの姿になる前は、実際にそれを口に出していたのではないかと。
そんな彼に対して、フレイグ様はどんな反応をしていたのだろうか。それが、少しだけ気になった。
今みたいに、言い返さないのだろうか。それとも、軽口を叩いたりするのだろうか。その点は、今度ラフードに聞いてみてもいいかもしれない。
「……質問はもう終わりか?」
「え? あ、はい……」
「そうか」
私がしばらく黙ったからか、フレイグ様はそんなことを言ってきた。
思わずそれに頷いてしまったため、会話は完全に途切れてしまった。
彼は、馬車の窓から景色を眺めている。その視線がこちらを向くことはない。本当に、もう会話をする気はないようだ。
『フレイグ、お前さ、なんで会話を終わらせちまうんだよ。別に沈黙が続いたからといって、終わらせることはないだろう』
「……」
『その景色なんて、そんなに楽しいものじゃないだろう? 目の前に同年代の女の子がいるんだ。もっと、こう……あるだろう?』
ラフードは、フレイグ様にそんなことを言っていた。
彼の言葉が届いていたら、この馬車の空気も少しは違ったのだろうか。
どうやら、私は無力であるようだ。フレイグ様との会話すら続けられないなんて、なんと情けないことだろう。
こんなことなら、もっと対人経験を積んでおくべきだった。会話するのが苦手な私は、この無口な婚約者と一緒に過ごすことになる。それが果たして大丈夫なのか、私は少し不安になるのだった。
『はあ……悪いな、お嬢ちゃん』
「……え?」
「む?」
そこで、ラフードがこちらに視線を向けてきた。
それに私は思わず驚いてしまう。すると、フレイグ様が私を怪訝そうな目で見てくる。
『おっと……いきなり話しかけたら駄目か』
「あ、いえ……なんでもありません」
『いや、こいつもさ、悪気がある訳じゃないと言おうと思ったんだが、すまん』
「私は大丈夫ですから、気にしないでください」
「……そうか」
ラフードの謝罪に答えつつ、私はフレイグ様にも弁明を行った。
なんというか、それは奇妙な感じである。
それから、馬車の中で特に会話はなかった。聞こえてきたのは、ラフードの独り言だけだった。
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