第49話 設定
万吉ともふもふは気の性質分類を研究した。
万吉は日本に居た頃のバトル系漫画の影響を色濃く受けた分類方法を提案した。
「色は属性っぽいね。今のところ黄色が風、緑が土、赤が火、青が水、白が光、黒が闇って感じかな。形はふわふわしてるのが魔法っぽく放つのが得意、トゲトゲしているのは持っている物にうつしたりするのが得意、カクカクしているのが自分自身に使うのが得意、丸っこいのが気自体をいろんな形に変化させるのが得意。さらになんか中間っぽい感じの形態や色もありそうだね」
万吉は早口で大層興奮していた。こういう設定物が大好物だった。
「色と形、更にそれぞれが混じり合う……凄いニャ」
もふもふも、大好物だった。
それから設定中の二人は厨ニ病を炸裂させ、気の分類方法を決めた。
「まず形態はそれぞれ、魔法のように変化し放つ朱雀型、手にしたものに付与する青龍型、気を変化させる白虎型、自分自身を強化する玄武型に分けられる。
朱雀と玄武は相性が悪くて、青龍と白虎も相性が悪い。
そして、全部バランスよく使える麒麟型、これは俺だ」
どやぁ顔が凄い。
「火が得意なものは水が苦手、風が得意なものは土が苦手、その逆も同じにゃ、光と闇は特殊っぽいのニャ、これは完全にゲームの設定ニャ!」
「同じようなものが魔法にもあると聞いたことがあります!」
「どうやら共通設定っぽいね!」
「つまり私は風の青龍型……」
「多分だけど、スペシャリストに伸ばしていくか、相性が悪くない型や属性を幅広く伸ばしていくか、育成方針はそんな感じになると思う。弱点、苦手属性を伸ばすのは麒麟型出ない限りはやめた方がいい」
「器用貧乏になるニャ」
「土で身体強化……」
「イメージ的には防御に伸びそうだよねケビルは」
「もしくは巨大な武器を使いそうニャ!」
「いいねー!」
隙あれば妄想を楽しむ万吉ともふもふをよそに、自分の気の性質や属性を知った各人はそれを伸ばすための鍛錬に勤しむのであった……万吉と出会った獣人。そして味方となる人間は全てこの気の開通と解析をうけ、その結果を元に鍛錬に勤しむことが常態化していく。それが、この世界において異質な集団であることに気がつくのは、まだずいぶんと先の話になる……
蛇たちの解体が済み、洞窟の調査も終了した。多くの亡骸が転がる場所を供養し洞窟には慰霊碑とも言える魔石に気を込めた気石を設置し、再びの死神の鎌の大量発生を防いでおく。
こうして万吉たちは大量の食料と素材を手に入れることに成功した。
「さて、こうなったらもう、街に戻って、ケビルたちの街との戦いの準備をしたほうが良いね」
「そうですね、事情を説明するまもなく全員殺そうとしてくるでしょうから、わざわざ相手に有利な場所に我々が向かう必要はないと思います」
「今の我々であれば、魔法使いであろうとそれなりに戦える……マンキチ殿、他の仲間達にも是非気の使い方をっ!」
「そうだね、鱗も骨もたくさん手に入った。このまま降りかかる火の粉を払い続けるより、一度力を貯めてこの世界の序列を変える準備をするか……」
「マンキチ様、バンザイ!!」
「うおおおお、俺はやるぜ!!!」
「お、落ち着いてくれよ……」
「気を使えるからと調子に乗りすぎないようにするニャ!
万吉は皆の犠牲を望まないニャ、こういうときこそ慎重に行動するニャ!」
「ははぁ、もふもふ様の言う通り、力を過信することなく磨くことを誓います」
「頼むよ皆!」
「おうっ!!」
気で強化された肉体で一気に帰還……となるかと思ったら現実はそうはいかなかった。気を利用した肉体強化に慣れている獣人はまだ良かったが、人間たちは気の消耗によってむしろあっという間にダウンしてしまい、休み休みの帰還を余儀なくされた。
「まずは、気を抑えることを……徹底して……はぁ、はぁ……」
「座禅とかがいいよ」
「ザゼン?」
「ああ、そうか。えっと。まず、こうやって座って。
自分の気の流れだけに集中して、余計なことを考えずに、臍の下を中心に気の流れにだけ集中……」
「集中……なるほど、たしかに気だけに意識を向けられます。これを訓練に混ぜます!」
「よく寝てよく食べることも大事だから」
「分かりました。ワク殿、迷惑をかけてすまぬ、すぐに追いつきますゆえ」
「ザゼン、我々も取り入れます」
人間は持ち前の器用さで気の繊細なコントロールを座禅を通して身につけていく。
繊細な操気術のコントロールで人間に及ばないこと、すぐに追いつかれるであろうことは獣人たちは気がついていた。獣人たちは豊富な気を使って力でどうにかしていくスタイル。人間は限られた気を上手に運用してどうにかするスタイル。お互いが認めあって高めていく万吉たちの集団で、気は今後どのように高まっていくのか。
万吉ももふもふも楽しみであった。
そんなこんなで、人間たちも気の運用に慣れた頃、見慣れた街が見えてくるのであった。
「なんか、壁が出来てないか?」
「そうみたいニャ……」
ちょっとだけ、以前の街とは変化していた。
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