第6話子爵(元公爵子息)1
妻のドロシーと結婚した理由は当然、愛していたからだ。
貴族学校で出会った恋人。
私は学園で同じ歳の親友を始めて持った。男爵家の跡取り、ローリー・トゥルース。私達の間には身分の差があったが、学園事態が「身分の垣根を超えた友情」を推奨していた事もあり気兼ねなく親友と過ごすことが出来た。
親友を介して多くの友人に恵まれた。
新しい環境、新しい友人、新しい生活。
学園生活での新しい日々は全てが新鮮だった。
高位貴族以外の友人達との遊びは刺激的で、見るのも聞くのも全てが始めてのものばかり。私はそれに夢中になった。
一年後に親友の妹が入学してきた。
「初めまして、ローリーの妹のドロシーといいます。兄がお世話になっていますので、これからは私がヘンリー様のお世話を致しますね」
茶目っ気たっぷりに言われたセリフを今でも覚えている。
ドロシーは可憐な少女だった。
チェリーブロンドの柔らかな髪、思わず口づけしたくなるぽってりとした唇、ほっそりとした肢体。
「わぁ!ステキ!こんな高価なネックレスは初めてだわ!」
彼女に似合うと思った宝飾品をプレゼントすると全身で喜んでくれた。
流石に家族でもない婚約者でもないドロシーにドレスをプレゼントする事は出来ない事が残念であったが、それ以外のアクセサリーや靴やバック等はプレゼントした。
贔屓のレストランに連れて行くと「美味しいわ!デザートも食べるのが勿体ないくらいキレイ!」と可愛らしい事を言うドロシーが好ましかった。
貴族、特に高位貴族の女性は感情を表に出すことを「はしたない」とする風潮がある。
ドロシーはそんなこと関係ないと言わんばかりに喜怒哀楽を素直に出す。くるくる変わる表情は見ていて飽きなかった。兄のローリーも感情表現が豊かで、流石に兄妹だなと感心した程だ。
ローリーとドロシー。
二人は私の「特別」だった。
だが、当時の私には親が決めた婚約者がいた。2歳年下の侯爵家の令嬢ダイアナとは幼馴染でもあった。両親同士も仲がよく、ダイアナとも家族同然の付き合いだった。私達は兄妹のように仲が良かった。
お互いに「恋」はしていなかった。だが、「愛情」はあった。男女の愛情というよりは家族愛に近いものだった。それだけ私とダイアナは近し過ぎたのだ。
ドロシーのようなトキメキを感じた事は一度も無かった。
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