第5話女侯爵5
祖国よりも大国の王族を夫に迎え入れる。
それはヘンリーや公爵家に対する意趣返しになるのと同時に、侯爵家と私から生まれる子供達が他者に侮られない事を意味していました。ヘンリーの裏切りは自分自身で思っていた以上に打撃を受けていたのです。両親は私の状況を誰よりも理解していたのでしょう。寝込んでいる間に全てを終わらせていたのがその証拠です。私は当事者でありながら婚約解消の場に出席する事もなく、ベッドから起き上がれるようになっても学園に一度も戻ることなく留学したのです。ヘンリーや公爵夫妻に会う事もありませんでした。
彼らのその後を知ったのは帰国して暫くたってからでした。
私の夫の影響力を侮っていました。
侯爵家の婿といっても大国の王子殿下でもあるのです。その地位は国王陛下よりも上でした。我が侯爵家はその恩恵を受けて領地経営も順調に周っています。帰国早々に「女侯爵」として認められたのも夫のお陰です。
「女だてらに爵位を継ぐなど。可愛げのない。だからヘンリー殿に捨てられるのだ」とか、「恥ずかしげもなく社交界に出席するなど何様だ?あの女侯爵が裏から手をまわしてヘンリー殿を公爵家の跡取りから外すように圧力を掛けたのだ」とか、的外れな陰口を叩く方々はいつの間にか社交界から消えてしまいました。殆どが下位貴族の方ばかりだったのできっと王家がナニかしたのでしょう。馬鹿ですね。私の悪口=夫への悪口に繋がりますのに……。夫を溺愛する軍事大国の耳に入ったら大変ですから、王家の判断は正しいのでしょう。
私達夫婦は、3人の男児に恵まれました。
これで跡取りの心配をする事はありません。
男児を3人産んだことは半ば意地でした。
それというのもヘンリーの妻が女の子を産んでいたからです。
ヘンリーは私との婚約をダメにしたことで公爵家の跡継ぎから外され「子爵位」を譲り渡されて公爵領で小さな館を構えていました。夫婦の間には女児しかいないのです。女性が「爵位」を継ぐのは未だ少数。しかも受け継いだ女性全員が「才女」と言われているのです。ヘンリーの娘が「爵位」を継ぐのなら相当の努力が必要になるでしょう。
私と結婚していれば男児にも恵まれ次期公爵として華々しい栄華の人生を送れていたものを……そう悔やんで欲しかったのかもしれません。
私が大国の王子殿下を夫として連れ帰った影響か、ヘンリーとその妻である子爵夫妻と彼らと親しい人々は高位貴族から嫌煙されていたのです。
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