第4話女侯爵4
他国に留学してもヘンリーへの想いが薄れる事はありませんでした。どんなに素晴らしい人を見てもヘンリーほどの貴公子はいませんでした。誰を見ても物足りないと感じるのです。優美な美貌に物腰も柔らかく教養も高いヘンリーは「当代一の貴公子」と誉れ高かったのです。
「ダイアナ嬢、私と結婚して欲しい」
留学先で出会った王子。
王家の末の王子殿下に求婚されたのはそんな時でした。
元々、王子殿下とは留学先の学園で同級生として親しくしていたのです。
私が古代文字の授業を選択して隣同士の席になった事が切っ掛けでした。話す機会が増えて思ったのです。私と王子殿下は趣味趣向が似通ってる、と。本の好みから始まり、音楽に観劇、果てはお茶や菓子の好みまでも……本当に同じでした。知った時はお互いに目を白黒させながら驚き笑いあったものです。男女の友情とばかり思っていたので王子殿下から求婚された時は酷く驚きました。
程なくして王子殿下の求婚に応じました。
そこにあったのは政略よりも、私の意思で決めたのです。
結婚するなら彼が良い。
それは彼がヘンリーよりも地位が上だったから。
彼となら「侯爵家」を守れるという打算が働いたのも事実でした。
王子殿下は、ヘンリーとある意味で正反対の人物でした。
繊細な美貌に他者よりも病弱でありながら努力家。長身でありながらも儚げな印象が強い方だったのです。透き通るほどに白い肌と白銀の髪がよけいにそう思わせていたのかもしれませんが、実際に王子殿下の幼少期は殆どベッドで過ごさなければならない程だったそうです。大分改善したようですが激しい運動は医師から禁じられております。御本人も「剣を持つ事も禁止させられているんだ。軍事大国の王子としては不甲斐ないばかりだ」と茶化されていました。
本来、王子殿下は他国に婿入りする立場ではありません。
それでも末っ子故の特権とでも申しましょうか。王家の方々は皆様、王子殿下には大層甘く「軍事国家である自国よりも友好国の侯爵家に婿入りした方が心穏やかに過ごせるだろう」と仰って婚姻を直ぐに認めてくださったのです。
まぁ、我が国はしがない農業国家。友好国とはいえ、王子殿下の国とでは天と地ほどの力関係があったのです。
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