『告白』

 その告白で和やかな空気に、突然ビシッと氷が張った。

「マ、マジ告白!」

「言いやがった、あいつ」

「狂ったか」

 囁かれる声に、真っ赤になるエリック。握る手にも力が入る。

 絶句していたルイスだったが、ハッと我に返ってエリックに言った。

「ちょっと待て、おまえ何言ってんだよ。確かにレンナちゃんはかわいいよ。大人びてるし、一人前さ。けど十二歳の女の子だぞ。よく年の差は関係ないとは言うけど、彼女はこれからの人間なんだよ。頼むからその前に立ちはだかるようなやつにならないでくれよ!」

 語尾はもう懇願だった。

 だが、エリックは引っ込みがつかなくて、そのままだった。

 レンナは――労わるように優しく告げた。

「エリックさん」

「はいっ」

 ピンッと背筋が伸びるエリック。他一同。

「ありがとうございます。そんなふうに思っていただけて、とても光栄です。でも……私、本当はまだまだ幼いんです。いっぱい悩みがあるし、気になることもあります。その一つ一つを自分の力で解決しなくちゃいけないと思ってます。今はそっとしておいてください」

 同情の中の、小さな哀しみ。

 それを感じ取って、エリックは大人の分別を働かせた。そっと手を離す。

「そっか。レンナちゃんはこれから、自分で選んだ道を歩もうとしてるんだね。ごめんよ、大人の俺が邪魔しちゃいけないよな。でも、そんな君に告白した男がいたってことを覚えておいてほしいんだ」

「……はい」

 その二人を遠巻きに見ていた仲間たちは、何とも言えない気持ちになっていた。

「マジだったんだ、あいつ……」

「……感動した」

「そっか、それもアリなんだ」

「エリック、これを機にホントに修法者目指しちゃうかもね」

「だったらすごいけどな」

 百五十人が回復したのを見て取って、僧侶たちは降霊界マンダラーヴァへ帰還した。

 エリックたちは童話の里へ帰っていった。

 レンナは一人残って、やることがあった。

 霊長砂漠の地下に眠る、石油鉱床の封印だ。








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