『降霊界の計らい』
人が昏倒するくらいの行だったから、効果はてきめんだった。
二千唱を超える頃には、八百人は銀霊鳥となって星の野原に向かった。
その筆舌に尽くしがたい幻想と美しさは、祈禱者らの魂をも洗い流した。
響き渡る鈴の音と唱和する光明真言は、一つとなって天の調べにも届こうかという見事さだった。
そんな時、思わぬ援軍が加わる。
祈禱者の後ろに、突然、白く輝く法服をまとった僧侶の一団が現れたのだ。
彼らが唱和に加わって三唱した時だった。
残っていた霊魂たちが、一度に銀霊鳥になって飛び立ったのである。
驚いて三千唱を中断してしまった祈禱者らに対して、僧侶に人が厳かに言った。
「どうぞ続けてください。三千唱を迷い魂たちへの送り火にしようではありませんか」
百五十名の祈禱者らは気になりながらも、僧侶の言葉に従った。
再び一丸となって唱和が整えられた頃、先ほどの僧侶がレンナのところにやってきて一礼した。
「万世の魔女殿ですね。私どもは降霊界マンダラーヴァよりの使者です。
レンナは胸に手を当てて、ニッコリ笑って言った。
「ようこそおいでくださいました。急場のことで略式で光明真言三千唱を行っておりますが、お力添えいただけて光栄です。どうぞご指導ください」
「ありがとうございます。なるほど、利発なお方ですね。内宮様が……私どもの主ですが、あなたとお友達になりたいと仰っておられましてな」
「そんな立派な方と、お友達ですか?」
「いえ、お年はあなたの一つ下で女性でございます。お立場上、手紙を書いたりということはお出来にならないのですが、時至るのをお待ちいただければ幸いです」
「楽しみに待っております、とお伝えください」
「はい、承りました。それでは拙僧も行に加わりますので」
深々と頭を垂れて、レンナは僧侶を送った。
降霊界のことは詳しく知らないが、こうして力を貸してくれることは、特例なのではないかと思い至る。
いつも誰かがどこかで見ている。
それが修法者ならばなおさらのこと。
一段と気を引き締めた。
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