『鳥俯瞰者の使命』
そこへ、その緊張をぶち壊す、能天気な声が。
「いやぁ、参った参った。みんなに責められてオタオタしちゃったよ。……って、何やってんの二人とも?」
エリックが戻ってきて、ルイスたちを見て言った。
「……説明しなきゃわからんか?」
「うん、まったく」
「あーもう嫌! なんでこんなのが鳥俯瞰者なのよ」
リサがうんざりして言った。
「だから、修法者は国の宝だって、そういう意味だよ」
エリックはしばらく考えていたが、頭を掻いて言った。
「あのさ、困るんだよ。レンナちゃんはいないもんだと思って振舞ってくれないと」
「はぁ?」
エリックがレンナの側近くを指差した。
二人がその辺りに目を凝らして見ると、レンナの周りを半球状に包む、透明な防御膜が。
「これって……あんたが?」
「言われるまでもなく、修法者はその稀少さと優れた技能で、かけがえのない存在だ。鳥俯瞰者は世界を支配しようとする輩から、自らの支配的観点を持って、逆説的に修法者を守れ。——これが俺たち鳥俯瞰者に課せられた使命だ。俺たちには呪界法信奉者の考えていることが手に取るようにわかる。それを生かして呪界法信奉者を欺くんだ」
いつになくシリアスなエリックの言葉に、黙り込むルイスとリサ。
「わかったかな? だから協力してくれると助かるんだけどさ」
「ごめん……知らないで侮辱してた」
リサが素直に謝ると、エリックは親指を立てた。
「いいってことよ! それにしても呪界法信奉者の意図に気づくなんて、二人とも鳥俯瞰者に足かけてんじゃないの?」
ルイスとリサは気まずそうに笑った。
「あの……何があったのか、説明してもらっていいですか?」
事が収まるまで待っていたテリーが、みんなに話しかけた。
「いやぁ、テリーはさ、この人たちの浄霊をどうするかって、それだけを考えててくれよ。それが方向者だろ」
「はぁ……仲間外れですか。つまらないなぁ」
テリーががっかりすると、エリックはその肩を抱いた。
「何言ってんだよ。こっからが出番だぜ。テリーの思いを通す力が必要なんだ。頼むぜ」
「はいっ!」
エリックの言葉の巧みさで、班が一つにまとまっていく。
鳥俯瞰者は人をまとめるのに向いていると言われる。
集団の中にあって、頭角を現し、導いていく力。
空を飛ぶ鳥のように、高き処から世界を見渡す、為政者の視点。
支配的になるのを抑え、失敗を認め、引き返す勇気。
どれ一つ欠けても、鳥俯瞰者の資質に満たない。
(——エリックさんは、とぼけているように見えるけれども、人を懐に入れてまとめ上げていく、心の広い人)
レンナは澄んだ目で見通して思う。
ふと、エリックと目が合った。
存在を尊ぶ心から、レンナはニッコリ笑った。
エリックは――何もかも見通されているのを悟って、顔を赤くした。
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