『ルイスとリサ』
「まずいまずい! おーい、リーダー各位、大丈夫か?!」
エリックは慌ててテレパスで各地のリーダーに呼びかけたが、いきなり脳内がパンクするのではないかという抗議が寄せられた。
「遅いぞ! 何やってるんだ」
「どうすんの、こんなの聞いてないよ」
「何とかしてよ、あんたリーダーでしょ」
「こんな数の幽霊、とても五人じゃ浄霊できないわよ」
「おいおいおい、冗談キツいぜ」
「卒倒しそうです、助けてください」
「幽霊のデモ隊に囲まれてるみたいで、気味悪いよ」
「こんなところで力使い果たして、くたばれってのか?!」
「誰だよ、作業中の安全は保障されてるとか抜かしたのは」
「わ、わかった、わかったから全員で怒鳴らないでくれ。今事情を聴いてるところだから、方針が決まるまで待ってくれよ」
エリックが各地のリーダーとの対応に追われている間、ルイスとリサは疑問点を整理していた。
「まず第一に、彼らはここ数年で亡くなった者たちばかりだということ。第二に、全員カピトリヌスかエスクリヌスで亡くなっているということ。第三に、銀霊鳥になりそこなってるんじゃなく、何らかの原因で、なってから唐突に解けたこと。第四、負のこごりに対処する呪いを授けた人物がいること。第五、その人物によれば、今回の作戦はすでに予期されていた――こんなところかしらね」
「第一と第二については、調べるのが難しそうだな。でも、二国の数年間の死者全部ってことはないだろ。何か条件があるはずだ」
「参考までに……どんな?」
「例えば、二国の共通点って言えば、テロだ。どっちも戦争の跡地としては最悪の負のこごりを抱えてる。もしかしたら……呪界法信奉者側が霊を貶める何らかの方法を考えたのかもな」
「それが本当なら大問題だけど……そんなことが可能かしら?」
「わからんが……連中の技術が世界の仕組みを壊すためのものだってことはわかってる。いつか取り返しのつかないことをやらかすんじゃないかってのは、俺たちが常に危惧してることだからな」
「例えそうだとして、目的は?」
「パラティヌスの攻略だよ。連中は霊長砂漠を支配下に置けば、パラティヌスの牙城を崩せると思ってる」
「ずいぶん回りくどい方法ね。私なら連中が作ってるっていう、ミサイルの完成を待つわね。その方が早いわよ」
「勘違いをしてるのかもしれないぜ。修法陣の効力が弱まったのは、修法者の力が弱まってるからだってな」
「まさか……狙いは万世の占術師様?」
「修法陣と負のこごりの因果関係はわからんが……影響あると思うぜ。負のこごりは天地の恵みを阻む元凶だ。それが積もるように覆い被さって、害がなかったとは思えない。五十人がかりでやっと除去できるようなものを抱え込んで、よく修法陣を維持できたと俺は思うね」
「なるほどね。でもそれは、呪界法信奉者が霊を貶める方法を開発した、という前提の話よね」
「あくまでも仮に、だな。あるいは……偵察が目的とか」
「偵察? 何を……あっ」
二人は幽霊を慰めているレンナを見た。
こうは考えられないか。
呪界法信奉者にとって、霊長砂漠はパラティヌス攻略のためにどうしても手に入れたい場所だ。それには万世の占術師の修法陣が邪魔になる。そこで、銀霊鳥にはなるが、昇華する力が足りなくて、星の野原まで渡り切れない魂を送り込む。すると、霊長砂漠の負のこごりがそれらを取り込んで巨大化する。よって修法陣が弱くなる。
問題はここからだ。
修法陣が弱くなったことによって、万世の占術師が何らかの方法を取る。自分で施し直すか、あるいは次代に担わせるか――。
つまり、呪界法信奉者の目的は、万世の占術師であり、次代を担う者——レンナの存在を突き止めることかもしれないのだ。
そこまで思い至って、ルイスとリサは大樹海を背にレンナの前に立ち塞がった。
「……どうしたんですか?」
レンナが驚いて尋ねると、ルイスは言った。
「何にも言わないで、俺たちの後ろに隠れてて」
リサもにわかに緊張した様子で話す。
「気づかなくてごめんね。あなたはパラティヌスにとってかけがえのない人だから、呪界法信奉者に狙われるかもしれない。微力だけど、私たちでも盾になれるから、何かあったら真っ先に逃げてちょうだい」
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