『10班の浄化作業』
10班——
「天の大三角を召喚する。天の恵み、
不毛の砂漠に響く、少女の澄んだ声。
「
すると、砂漠やその中空に、大人が一抱えできそうな岩ほどの大きさの水晶の
フレイム・ラプターが照らし出す明かりで、闇夜に光を放つ。
その透明な結晶の中に、負のこごりが閉じ込められていた。
同行していたエリックらは、感動することしきりだった。
「すげぇなぁ……扱うパワーが桁違いだよ。修法者の修法陣は天の運行すら動かすって言うけど、納得だよね」
エリックが何度も頷く。
「で? これどうすんの、レンナちゃん。破壊するとかして除去するんじゃないのかい」
エリックの友人である平面者、ルイスが尋ねる。
レンナは首を振った。
「いいえ、これは朝日を浴びると消えてしまうようになってます」
「綺麗ねぇ……癒しようのない負のエネルギーが、結晶化して、朝日とともに消えていく。光と水と大地に抱き取られて……最高にロマンチックだわ」
「おーっ、詩人じゃねぇの」
エリックがからかうと、女性の平面者、リサが溜め息をついた。
「一緒にいるのがこんなのでなきゃ、うんと浸るんだけど」
「悪かったよ」
ムスッとしたエリックだったが、重要なことに気づいた。
「ところで俺ら、出番ないんじゃねぇの? ねぇ、レンナちゃん」
「えっと……はい、ごめんなさい」
レンナは頭を下げた。
「いやいや謝られても。でも惜しいなぁ。せっかくカッコよく決めようと思ってたのに」
いくつか構えのポーズから、技を繰り出して見せるエリックに、平面者二人は情け容赦ない。
「負のこごり除去すんのに、闘技が役に立つかよ」
「バカ丸出し」
口を挟まずにいた方向者、テリーがフォローする。
「エリックさんはエターナリストの負担を考えたんですよね!」
「是非、私たちの話を聞いてほしい」
「そうそう。いくら位階が上でもさぁ、女の子にパワー使わせるようじゃ男が……今、何か言ったか?」
「いや」
「別に何も」
「お願いします、無視しないでください」
「言ってんだろ、無視しないでくれってさ」
「俺じゃねぇって」
「同じく」
「僕でもありませんよ」
「え……するってぇと何か? つまり――」
沈黙する五人。
恐怖は足元から這い上る。
出た――っ!!
全員の緊張がピークに達する。
「お、落ち着け。やつらがどこにいんのか、そいつを確かめるんだ」
背中合わせに円陣を組んだ五人は、辺りに目を凝らした。
リサが「ヒィッ」と引きつる。
「こっ……こっ……」
テリーが自分の右を指差して、声を上ずらせる。
「あわわ、こっちにも!」
「囲まれてるぞ!」
ルイスとエリックが一歩後ろに下がる。
謎の声の正体は、もちろん幽霊だった。
しかも、百人以上はいる。
一様に青白い顔をして、肩を落とし、突っ立っている。足は……ぼやけて見えない。紛れもなく本物である。
エリックは自分に言い聞かせるように、仲間に言った。
「いいか、この数だ。いっぺんに相手するには分が悪いが、魂浄めで浄霊するしかない。幸い俺たちはパワーが余ってる。絶対切り抜けるぞ!」
「わ、わかった。場数は少ないが、ここで経験値を増やそう」
「ヘタな同情は自滅にまっしぐらよ。いいわね、ここは冷淡になりきるのよ」
「は、はいっ」
四人が魂浄めに力を集中している時に、レンナは落ち着いて幽霊たちの様子を見ていた。
すると、彼らはしくしくと声を立てて泣き出した。
中にはレンナよりも小さい男の子がいて、泣きじゃくっている。
なだめている女性の幽霊たちが、口惜しそうにこちらを見ていた。
スッとレンナは円陣から外れて、男の子の方へ向かった。
「お、おお、おいっ、レンナちゃん?!」
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