『霊長砂漠の浄化 6班から9班』
6班——
「負のこごりは、もともと人間の強烈な思いの塊で行き場がないでしょう? だから。その行き場のない思いを美しい花として咲かせてやる、というのはいかがですか?」
「わぁ、そんなことができるんですか?」
「はい。濁世の穢土に咲くのに相応しいのは蓮の花。ここに因果界の蓮の種があります。みんなで負のこごりに植えましょう。あとは光の加護を注いでやれば、みんなの思いが蓮の花になります」
「すごいですね、いつの間に用意したんですか」
「こんな機会があれば、と思って集めていたのです。こんなに早く機会が巡ってくるのも、神仏の思し召しでしょう」
牧師をしているリーダー、ランス・アスペクターの発案で、メンバーは蓮の種を負のこごりに植えていった。
7班——
「だからさ、一つずつやってたんじゃ、埒が明かないだろ。一挙に集めて浄化するか、導火線に火をつけて爆破させるみたいな方法が必要なんだよ」
「そうは言うけどさ。こんだけ距離が開いてちゃ、大渦で集めるわけにもいかないし、竜巻なんぞ使おうもんなら砂嵐で滅茶苦茶だよ」
この班には鳥俯瞰者が二人に方向者が三人で、方法を巡って意見が割れていた。
リーダー、キーツ・アスペクターに呆れて、方向者ら三人は地道に|炎魂《フレイムソウルで浄化させている有り様だ。
船頭多くして船山に上る。
いい加減にしろ、と先導するフレイム・ラプターが甲高く啼いた。
8班——
「そっち行ったぞ!」
「OK、
気流を作り出して負のこごりを押し流し、風の力を宿らせた手刀で一刀両断する手法で、浄化させている。
リーダー、タイラー・アスペクターの的確な指示で、作業がサクサク進む。
能率のいい方法だったので、早くも作業が終わりそうだった。
9班——
「よーし、行くぞー! 光の壁で負のこごりをプレスしてやれ」
「おーっ!」
四人が等間隔に並んで、地区全体の幅がある光の壁を押してやる。
その向こう側には、リーダー、アロン・アスペクターが一人で作った光の壁が。
壁が迫り、ピッタリ押し付けられた時、負のこごりは浄化された。
「よっしゃ、作業完了!」
「うわぁっ、なんだこいつは」
メンバーから悲鳴が上がったので、全員集まってみると、豚のような体躯の鼻先の尖った動物が踏ん張っていた。
「——猪? にしちゃあ、牙がないような」
「ああ、こいつは
「へぇっ、これがあの……でも何で怒ってんですかね」
「そりゃ、俺たちが悪夢の元を絶ったからだろ」
「せっかくいい餌場で、人間の役にも立ってきたのに、この仕打ちかよ。って感じですかね」
「別の餌場を紹介するか」
アロンが妥協案を出した。
「えっ、どこです?」
「近いとこで、不安の塔はどうだ。あそこは昔から地縛霊がうようよしてるというので有名だからな」
「異議なし」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます