『エリックの決意』

 慌ててエリックがレンナの肩を掴んだ。

「ダメだよ、レンナちゃん。ここは俺の言うこと聞いて」

 振り返ったレンナはきっぱり言った。

「みんな泣いてます。私たちが浄霊することしか考えてないからです」

 居並ぶ大人たちを、ギクリとさせる言葉だった。

 レンナはなおも続けた。

「私たちは大いなる生命のもとに一つです。その環から外れてしまったからといって、差別していいんですか? 一人一人にここにいる事情があります。私たちに必要なのは、いつでも彼らの意を汲むことであって、強制的に浄霊することではないはずです」

 言い切ったレンナの目には涙が浮かんでいた。エリックは声を詰まらせた。

「エリックさん、お願いします。話を聞いてあげてください。……ゲイルさんを助けたことを思い出して」

 そう言われた途端、エリックはゲイルの別れ際の笑顔が浮かんだ。自分が助けた命。一歩間違えれば、ゲイルも森を彷徨う幽霊になっていたかもしれない。不思議とそのことを思うと、大勢の幽霊たちもぐっと身近に感じた。いろいろな事情を抱えているだろうと思いやれた。

「……弱いなぁ、俺」

 がっくりと肩を落としたが、次には気を取り直して言った。

「よし。ここは一つ性根を据えて、皆さんの話を聞くとするか!」

「な、何言ってんだよ! 正気か?」

 ルイスは即座に反対した。

「しょうがないわね。骨は拾ってやるわよ」

 リサが続く。

「おまえまで何言ってんだよ」

「さっきのお嬢ちゃんの話聞いてた? 子どもなのに正しい立派な意見だったわよ。あそこまで言われて大の大人が心入れ替えないなんて、みっともないでしょ」

「話聞いてる間に取り憑かれたらどうすんだよ」

「あんた……自分の防御ガードに自信ないんでしょ? だったら耳塞いで我関せずって顔してたら。もっとも誰も相手しないと思うけど」

 徹底的にバカにされて、ルイスは自暴自棄になって言った。

「あーそうかよ。勝手にしやがれ。話を聞きゃいいんだろ。その代わり、ちょっとでもおかしなマネしたら、問答無用で浄霊してやるからそう思え!」

「はいはい」














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