第13話

俺はあの日から走るトレーニングを続けて半年が経った。


最初はクレオも、苦虫を噛み潰したような顔をして俺のトレーニングを見ていたが、最近は普通の表情でトレーニングを見るようになってきた。


半年程俺は気絶を繰り返して走っていたが、今や運動場を10周以上も走れるようになっていた。


運動場の大きさはかなり広めなので、1周300メートルぐらいだろうか。



2歳でここまで走れるのは前世では有り得なかったな。


「ふム、そろそろいいですネ」

「どうしたんだ?」

「そろそろ自身の得物を決めましょうカ」


おお!!俺の武器を決めるのか!


「たのしみだ!」

「ふフ、楽しそうですネ」


リラは運動場にある倉庫から武器を持ってきた。その中にはオーソドックスな剣に、槍、弓に、マイナーなもので大鎌などがあった。



「この中デ、好きなものを選んでくださイ」


何選ぼっかなぁ


まずは剣でも使うか


「まずは剣ですネ、まずは振って見てくださイ」


俺は剣を振るってみるが、まぁ、わからん、使ったことがないから才能があるのかないのかわからん。リラの方を見て確かめる。


「なかなか才能がありますネ、最初にしてハ使い方が上手すぎるのはなんででしょうカ」


まぁ、前世は色々なゲームをやっていたおかげで、何かを‪”‬操作‪”‬することは上手いからな。


次に槍を使う。


槍はかなり使いにくいな、剣は振るうだけで良かったが、槍はリーチのことも考えなければ行けないので脳死では使えないな。


正直俺の好みじゃなかった。


弓はめちゃくちゃ上手かったらしい。

正直、遠距離手段は欲しかったため弓を候補の中に入れる。


他にも斧や大鎌、ナイフなど、沢山の武器を使って見たが、弓以外はしっくり来ない。弓は遠距離手段の1つなので、近距離の1つは欲しい。



ん?なんだこれ


武器の置いてある山の中の奥に篭手のようなものがあった。


篭手か...使ってみるか


「りら、これをつかってみてもいいか?」

「篭手ですカ、なかなか面白いものを選びましたネ。」



篭手をつけて拳を振るう。

うん、いいな、自由度も高いため、使っていて面白いのも高得点だ。


「りら、これをつかう」

「そうですカ、それでハかかって来てくださイ」


リラは俺から離れ、戦闘準備をする。


よっしゃ!楽しみだな!!




俺はその後、リラに向かって攻撃するが、殴る前に吹き飛ばされる。あまり攻撃は痛くないが、かなりの距離を吹き飛ばされる。


あまりにも吹き飛ばされすぎて、受身がめちゃくちゃ上手くなったのが今日の収穫だな。




自身の得物を決めてから半年ほどが経ち、俺は3歳となった。


俺は今日も今日とてリラにボコボコにされている。


ちゃんと体力を作るトレーニングもいているおかげで、かなりの長時間リラとの模擬戦ができる。



「オラッ!」

「甘いでス」


さすがに近づこうとすると見えない速度で殴られるのは、あまり学ぶことが無かったため、模擬戦っぽくした。まぁ、未だに全くとして勝てるイメージがわかないけどな。


俺が小さい体格を利用して懐に入り殴ろうとするが、リラは最低限の動きで俺のパンチを避けてカウンターを入れてくる。

カウンターを食らって俺は吹き飛ばされるが、上手くなった受け身で何回でも向かっていく。





そろそろ夕飯の時間だな。

空が赤みがかってきはじめた頃に今日の模擬戦の訓練は終わる。


毎回リラに吹き飛ばされ、体が砂で汚れるため毎回訓練終わりには風呂に入る。



ふぅ...



いい湯だ、この屋敷の風呂は1人で入るには広いため、偉い人になった気分だ。めちゃくちゃ気持ちいい。



「アレスー!!」


...あぁまた来たな


風呂の扉のものすごい勢いで開きながら母さんが風呂の中に入ってくる。


俺が3歳になって、1人で風呂に入り始めてから、毎回毎回母さんが俺の風呂に突入してくる。



「背中洗ってあげるわね!」


そう言いながら、俺の背中を洗ってくる。


...もう背中洗ったんだがな


母さんは俺の体を隅々まで洗ってから俺を抱えながら一緒に風呂に入る。母さんの胸は大きいため、枕としてはちょうどいい。


「どう?アレス、強くなった?」

「いや、あまり強くなれてないと思う」


俺は徐々に喋り方がスムーズになっていき、最近もう舌っ足らずな喋り方じゃなくなった。



「強いオスはモテるわよぉ!アレスは顔もいいから女の子が放って置かないかもしれないわね!」


うーん、モテるのはどうでもいいんだけどな

今は強くなりたい、最近走りまくっているため30周を超えないと疲れなくなった。


しかしリラと戦っていると自分の力不足が目立つ。うちの私兵とも戦ってみたが、リラ程ではないが手も足も出ない。


母さんと一緒に風呂から出て飯を食べる。今は長い机が置いてある広い部屋で、母さんと父さん、妹達と一緒に食べている。


俺が食事場に近づいて行くと、階段から俺の妹達が降りて来るのが見える。


「おにぃちゃん!」

「にいさま!」


そう言いながらすごい勢で俺に抱きつく。

この2人の勢いを体を回転させながら流す。


俺が妹達を甘やかしたせいか、訓練の時以外はいつも俺に着いてくる。最初、俺の訓練にも着いてきたが、俺がボコボコにされていた所を見た2人は泣いてしまって、訓練どころじゃ無かった。


そのため、俺に一緒に居たがっている2人は、訓練以外は俺にコアラのように抱きついている。


俺達が食事場に着くと、メイド達が部屋の扉を開けてくれる。


「やぁ、待っていたよ」


父さんは、俺のことを待っていたのか、先に部屋の中にいた。


俺たちが席に着いて食事をし始める。


あぁ、そういやリラから聞いた話で、父さんに聞きたいことがあったんだ。


「父さん、何故私兵を鍛えようとしたんだ?父さんは伯爵なんだから、もっと強い私兵がいるはずじゃないのか?」

「あぁ、元々僕は辺境伯だったんだけど陞爵されたからね。元々いた私兵は後任の辺境伯のところに置いてきたんだ。辺境は魔物が強いから、強い人がいないと困ると思ってね。王都は危険は少ないから新しく私兵を雇ったんだ。」


なるほどな、伯爵なのに私兵の中であまり強い人がいないのは謎だったからな、その謎が解けた。


この国の爵位は、王を1番上として、公爵、侯爵、伯爵、辺境伯、子爵、男爵、騎士爵


この7つの爵位がある。父さんは何年か前に伯爵になった為上から4番目に偉い。



俺は夕飯を食い終わって、部屋に帰る。


妹達は変わらず俺の部屋と一緒だ。


眠たくなってきた。今日はもう寝るか。

寝る時は妹達に抱きつかれるのが当たり前になってきた。


「おにぃちゃん...」


金髪ツインテールの、可愛い顔をしたリエルが俺の右手に抱きつく。


「おにいさま...」


黒髪長髪の、綺麗な顔をしたミカが俺の左手に抱きつく。


...まだ、最強には遠いな


そう思いながら微睡み、瞼が落ちていく。

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