第12話

俺は限界まで走り、倒れた。


屋敷の医務室で目を覚ました俺は、リラに怒られたが、何で怒っていたのかが分からない。


俺のことを狂人よりも酷いと言っていたが、俺のどこが狂人なんだ?リラもよく分からないことを言うもんだ。



今日の訓練は、俺の体が動かないため辞めることになった。まぁ、最初にしては飛ばしていたかもしれないな


俺は部屋に帰ろうととしたが、今の足は立つだけでも産まれたての子鹿のように震えるため、リラに抱きかかえられている。


「もうアレス様の体ハ限界でス。しばらくハ体を休ませて下さイ。」

「しばらくってどれくらいだ?」

「3日ほド」


そんなに体を休ませないとダメなのか?


「そんなにながく、からだをやすませないといけないのか?」

「はイ、筋肉が損傷していますのデ、無理に動かすと体に、支障をきたすかもしれませんヨ」

「はやくなおすほうほうはないのか?」

「回復魔法でなラ、すぐに治せまス」

「かいふくまほうをつかえるやつはいないのか?」

「今はいませんネ、この屋敷にいる医師は休暇中でス」


おっ、回復魔法で治るなら、何回でも限界まで走れるのか、便利だな。


「そのいしのきゅうかはいつまでた?」

「そろそろ休暇は終わるはずでス、明後日には帰って来るのではないでしょうカ」




俺はリラに抱えられながら喋っていると部屋に着いた。


「アレス様ではこれデ」

「あぁ、ありがとう」


リラが部屋に俺をそっとおいて、立ちさって行く。


俺の部屋に帰ってきたがあまりすることがない。いや、今は何も出来ないかもしれない、常に体に激痛がに走っており、足をあげるだけでも辛い。


体がまともに動かない中でも1歩づつ歩き、ベットに近づく。


もうベビーベットではなく普通のベットだ。


俺の部屋は広いため、ミカとリエルと一緒にこの部屋で過ごしている。


...将来はお兄ちゃんと一緒の部屋は嫌とか言われるのだろうか...


ミカとリエルは今ぐっすりと眠っている。


2人に近づいて顔を見てみると、とても幸せそうにしている。妹達に手を近づけると寝ていながらでも俺の手を掴んでくる。


めちゃかわいいな


俺はベッドの上で休んでいると体が疲れているせいか、大きな睡魔が襲ってくる。


今日はもう寝るか。

そう思い、睡魔に身を委ねる。




なんだ?体が動かん、体に上に何か乗っているのか?


体が動かしにくいため、目を開け周りを確認する。


俺の腹の上には、ミカとリエルが乗っていた。


「にぃた」

「にいたま」


にぃたと言った方はリエル、にいたまと言ったのはミカだ。


あら可愛い


俺は2人を抱きしめながら起き上がる。かなりの時間寝ていたのか空が赤みがかっている。


そろそろ夜飯の時間か


にぃにぃ言いながら俺に抱きついてくる妹達と遊びながら、ベットの上でゴロゴロしていると、イザベラが部屋に入ってきた。


「アレス様、ご夕飯の時間です。」


飯を食いに行きたいが、俺の体はボロボロなのでまともに歩くことは出来ない。


「すまないが、へやにめしをもってきてくれ」

「体調が優れないのですか?」

「あしがうごかないんだ」

「っ!大丈夫ですかっアレス様っ!!」


イザベラは焦ったように俺に近づいてくる。


俺はイザベラを安心させるように言う


「だいじょうぶだ」

「ほ、本当ですか?」

「あぁ」


イザベラは渋々ながら俺から離れていく。


「...それではお部屋にご食事を来ますね」


イザベラそう言い部屋を出ていく。


うーん、そんな心配することか?

俺も愛されているって事なのかな?


ミカとリエルは俺とイザベラのやり取りを、ガン無視して俺に抱きついて、寝ていた。


よくあの状況で寝れるな。




俺は体を休めた3日後、運動場に来た。


「きょうはなにをする?」

「アレス様、今日も走りましょウ。体力はあって損はないですかラ」


俺は今日も走り始めた。


この前と同じように、3週目で限界が来たが、前回より進んでいるような気がする。まぁ誤差かもしれないが。


今回も俺は倒れて意識が薄れていく。


俺は目を覚ますと医務室の中にいた。俺は目を覚ましたが、前に倒れて目を覚ました時と比べて体が痛くない、いや、体に痛みを感じない。



「アレス様、体はどうですカ?」

「...いたくないんだが」

「それなら良かったです」


ベットの横に掛けられていたカーテンの裏から声が聞こえる。この部屋の中にはリラ以外にいたのか。


カーテンの裏からメガネをかけた優しそうな男性が出てくる。


「どうも、この屋敷の医師をやらせていただいている、クレオと申します」

「よろしく、くれお」


クレオは前にリラが言っていた休暇中の医師のの事か。


「アレス様、どうしたらこんなに体を酷使出来るのですか?」


クレオはよく分からないことを聞いてくる。ただ走っただけなんだけどな。



「?はしっただけだが」

「...どうしたら走るだけでこんなに体をボロボロにできるのですか...」


本当に走っただけなんだけどな


「この後ハどうしますカ、アレス様。」

「はしる」

「!!ちょっと待って下さい!」


クレオは大きな声を出して止めてくる。


「なんだ?」

「...いえ」


?何か俺に用があったのか?




俺はその後もリラを連れて運動場に来た。

何故かは知らないがクレオも着いてくる。



俺は、気絶しながらも走りきり、倒れる。

クレオが運動場にいてくれるため、医務室に行く時間のロスがないので結構いいペースだ。


俺のことを回復させてくれる度、クレオの顔が歪んでいく。


限界まで走り気絶する度に、走る距離が長くなっていくような気がする。


空が赤くなったところで俺は訓練を辞めた。

そろそろ夜飯だからな。


俺が部屋に帰ろうとすると、クレオが死にそうな顔で俺に聞いてくる。


「アレス様は...大丈夫なのですか...?」


さっきから大丈夫ですか?とか聞いてくるがマジでなんのことだ?


「ほんとうになんのことだ?」


クレオはカッと目を開きすごい勢いでくる。


「何故ですかっ!!何故そんなに激しいトレーニングをするのですかっ!いつか死んでしまいますよっ!!」


なんだ、そんなことか


「さいきょうになるためならしんでもいいぞ、おれは」


俺はそう言うと、クレオが頭を抱えながらブツブツと呟く。


「はぁっ、分かりました、分かりましたよっ!」


何がわかったのかは知らないが、良かったな。さっきの死にそうな顔より、いい顔をしている。



まぁ今日のトレーニングはこれぐらいでいいか。夜飯を食べて早く寝るか。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る