第4話
あの2人の決闘を見た日から俺は強くなるための特訓を始めようとしたけど無理か。
俺生まれて1年も経ってないから父さんに抱えられないと外に出られないし。
こんなんじゃまともに修行できないからまずは喋ることから始めるか。
言葉を伝えられないの不便だからな、
俺は部屋の中で発声練習をする。
赤ちゃんの体は大人の体に比べてかなり柔らかい、筋肉が少ないためだろう、声をあげるのに違和感を感じる。
この体の動かし方に慣れた方がいいな...
まず俺はこの体を理解する必要がありそうだ。
発声練習をしはじめて半月程だろうか、俺は拙いながらも、声は出せるようになってきた。
母さんと父さんが部屋の中に入ってきた。
フフフ... この2人は俺が喋れるようになったの知らないからなぁ...いっちょ驚かせてみっかぁ!
「かあたんっ」
あー、母さんと言ったつもりなんだがまだハキハキと喋れないか。
「かあたん」と言いながら顔を向けると、2人は時が止まったかのように固まっていた。
おー初めてだこんな反応、俺が声を初めて出した時は倒れていたけど、今回は倒れないんだな。
しばらく2人の固まった姿を見ているけど復活する感じがないんだが、いつもなら父さんが倒れた母さんを介抱しているんだけど今回は父さんも固まっているからなぁ。
1時間程待っていても2人が復活する様子がない。メイドたちも不審に思ったのか、外が騒がしい。騒ぎが静かになった直後、イザベラが入ってくる。
イザベラが部屋に入り、安堵しながら、固まっている2人に近づく。2人に近づくにつれイザベラの表情が驚愕に変わり叫ぶ。
「きっ...気絶してるっ!!」
なんで「かあたん」って言うだけで気絶してんだよ....
イザベラとメイドたちは、2人をかかえ部屋から去っていった。
2人が気絶した日の翌日、母さんがすごい形相で部屋に入ってきた。
「お母さんって、もう1回言ってっ!!」
母さんの顔がすごい勢いでこちらに近づく。
ちっ、近い!! 鼻息あたってるんだが!!
俺はビビりながら声を出す。
「か...かあさん...」
そう言った瞬間母さんの口からヨダレが滝のように流れ始めた。目もまるで肉食獣のように鋭くなる。
えぇ...なんでぇ...
どんどん母さんの顔が近づいてくる。母さんの頭を小さい手で叩くが止まる気配がない。
だ..誰かぁ、助けてぇ!!
心の中でそう叫ぶが助けは来るわけがないよな...。
ヨダレまみの死んだ顔で部屋から去る母さんの後ろ姿を見る。
死ぬかとおもたぁ...
顔中ヨダレまみれで息ができん...母親のヨダレで溺死ってエロゲかよ...
父さんも部屋の中に入ってくる「おっ、お父さんってよんでくれないかいっ!?」
と興奮しながら叫んで来たので「とうさん」
と言ってみると涙を流す。泣くだけで済ませてくれるとは...父さんが常識人で助かったぜ!!
それから半月が過ぎかなり流暢に喋れるようになった。
今日も今日とて、母さんが部屋の中に入ってくる。お腹の中にいる子供のために部屋で休まないのだろうか。
「アレスッ!おはよう!!」
「おはよーかあさん」
「キャーッ!!今日のアレスも可愛いわねぇぇ!!」
そう言い、俺の顔を舐めてくる。
うん...舐められるのは...慣れたよ...
「アレスッ!今日はなにするっ?」
「えほんよみたぃ」
俺がそう言うと、母さんが最近絵本が増えてきた棚から絵本を取り出す。
母さんが毎日読み聞かせしてくれるおかげで文字の意味が分かるようになってきた。
「今日はこの絵本を読むわねぇ」
今日母さんが読んでくれる本はなんだろうか?表紙を見るかぎり初めて見る本だ。
「今日読むのは、覇王アルクスよ」
絵本で覇王とは、なかなかイカしてるタイトルじゃないか。今まで見てきた絵本とは一味違いそうだ。どんなストーリーか気になるな。
「じゃあ行くわね
覇王アルクス、彼は特別な生まれでもなく、大きな才能があった訳でもない、だがありとあらゆる試練を超え、国を作った英雄の話である。」
おぉー面白そうだな。
まぁ結構話が長かったから短くまとめる、
まずアルクスは元々孤児であった。そこから這い上がり冒険者になった。才能のなかったアルクスは成り上がるために死ぬほどの努力し冒険者として大成していく。
アルクスの強さに目をつけたある国の王様が、国を襲う龍を倒して欲しいと依頼する。
だがその国の王女はアルクスの強さが信用ならずアルクスに戦いを挑む。この国の王女は戦いの才能に溢れ、この国最強だった。アルクスと王女は戦い、アルクスが勝利する。王女はアルクスのことを信用し、一緒に龍に挑む。そしてからくも龍に勝利しアルクスは旅を再開しようとするがアルクスに惚れた王女はアルクスの旅について行き、国を作ったという話である。
「どお?面白かった?」
と笑顔の母さんが聞いてきた。
「おもしろかった」
本当に面白かった。特に手に汗にぎる戦いとか。アルクスめっちゃ強いじゃん才能ないって嘘だろ。剣振って山を削るってバケモンじゃん。
「むふふー!そうでしょ!私この絵本大好きなのよぉ!特に王女とアルクスの恋模様とか!!」
アルクスと王女の恋模様とかほとんど聞いてなかったわ。山を削ったってところで思考止まってたわ。
母さんと覇王アルクスの話をしばらくしていると。扉を開けてイザベラがはいってくる。
「奥様、体を休めないとお体に差し障りますのでお部屋で休んでくださいませ。」
「むう...そうね...部屋に戻るわ」
そう言い母さんが部屋から出ていこうとする。扉をあけようとする直後母さんが何か閃いたように手を叩く。
「あっ!!それならアレスを私の部屋に連れて行けばいいじゃい!!」
名案のように言うが俺の意見はガン無視だ。
イザベラ呆れたように頭を振る。
「奥様...あなたすぐアレス様の顔を舐め回すじゃないですか、いつかアレス様は奥様のヨダレで溺死してしまうかもしれません」
「いいじゃない!いいじゃない!イザベラのケチー!」
「ケチじゃありません」
そう言いイザベラはまともにとりあわない。
俺をの部屋の中に連れ込もうとする計画が失敗した母はしょんぼりとしながら部屋を出ていく。
ふぅー、文字は簡単なものを読めるようになったから。もっと色んな本が見てみたいなー、専門書みたいなやつとか。
また母さんに聞いてみるか。
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