おとぎ話・三
「それで、その少年は少女に会うことはできたんですか?」
レンさんの話に一区切りがついたと判断してそう尋ねた。レンさんは寂しそうに笑って答えた。
「ああ、思いがけない形でね。」
「思いがけないって・・・・・・」
一体どういうことなのだろう。さらに追求しようとしたところで、レンさんは今更まずいことを話してしまったと言わんばかりに顔を顰めた。
「すみません・・・・・・やっぱり忘れてください。」
まさに、崖から突き落とされたような感じとはこういうことなのだろうと思った。
レンさんが今こうして話してくれているのは私が近い存在となれているからだと思い込んでいた。そして、これから謎だったいろんなことがわかると思っていた。でも今、また一歩距離が開いただけだった。
「単なるおとぎ話に過ぎないんですよね・・・・・・忘れて欲しいくらいなら、言わないでください。期待だけ、させないで。」
絞り出した声は驚くほど鋭く細かった。
私は、期待をしていた。賞を取ったあの時も。皆に認められて賞賛されると思っていたのだ。だから、前も今もこんなに痛いんだ。
「すみません。」
違う、そうじゃない。謝って欲しいんじゃない。ただ一歩、こちらに歩み寄ってほしいだけなのに。
「・・・・・・私、ここやめます。」
一度あんな態度をとってしまって、それを引っ込める術を私は知らなかった。レンさんは何も言わなかった。私もそれ以上何も言わずに店を出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます