おとぎ話・三

「それで、その少年は少女に会うことはできたんですか?」

 レンさんの話に一区切りがついたと判断してそう尋ねた。レンさんは寂しそうに笑って答えた。

「ああ、思いがけない形でね。」

「思いがけないって・・・・・・」

 一体どういうことなのだろう。さらに追求しようとしたところで、レンさんは今更まずいことを話してしまったと言わんばかりに顔を顰めた。

「すみません・・・・・・やっぱり忘れてください。」

 まさに、崖から突き落とされたような感じとはこういうことなのだろうと思った。

 レンさんが今こうして話してくれているのは私が近い存在となれているからだと思い込んでいた。そして、これから謎だったいろんなことがわかると思っていた。でも今、また一歩距離が開いただけだった。

「単なるおとぎ話に過ぎないんですよね・・・・・・忘れて欲しいくらいなら、言わないでください。期待だけ、させないで。」

 絞り出した声は驚くほど鋭く細かった。

 私は、期待をしていた。賞を取ったあの時も。皆に認められて賞賛されると思っていたのだ。だから、前も今もこんなに痛いんだ。

「すみません。」

 違う、そうじゃない。謝って欲しいんじゃない。ただ一歩、こちらに歩み寄ってほしいだけなのに。

「・・・・・・私、ここやめます。」

 一度あんな態度をとってしまって、それを引っ込める術を私は知らなかった。レンさんは何も言わなかった。私もそれ以上何も言わずに店を出た。


 

 

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