買い物。



 可能な限り、花田家に資金的な負担をかけたくない。しかし、俺の活動に先立つものが必要なのもまた事実。今は世話になって、すぐにでも山ほど稼いで金を返すしかない。


 そして、腕輪と指輪の存在を身近に感じた事で改めて知った、カードの可能性と利便性。


 大金を掛け、人の身では体現出来ないだろう奇跡を起こしてしまうアイテムカードの存在。コレは雑魚しか使えない俺にとっては光明と言って差し支えない物。


 何が言いたいか、つまり今の俺には足りないものばっかりって事だ。


 中学校への編入を数日後に控えた今日、俺は馴染みのショップに来ていた。


「お久しぶりですね」


 ハンターガードやベアナックルなどを勧めてくれて、尚且つ高性能なジャケットまで融通してくれたショップのお姉さんと久しぶりの対面だ。


 久々に見るからなのか、やけに可愛く見える気がする。


「今日もゴブリンの売却ですか?」


 俺がこの店にくる理由の八割がそれなので当然の反応だが、残念ながら売れるカードが無い。


「悪いが、今日は購入なんだ」


 俺は事情を話し、救助義務からグリフォンとの戦闘を経て装備をロストした事を伝える。当然、カードも全ロストしてる。


「だからゴブリンを20、コボルトを10は欲しい」


 装備はパパさんが用意してくれたが、カードはまだなので今ここで買う。


 ゴブリングのお陰でバフに使うゴブリンを考慮しなくて良いのは助かるが、それを踏まえても計画には大量のゴブリンとコボルトが必要である。


 また装備を揃えて、パワーズとハウンズを再編しようと思う。


「実は、俺のFランク召喚数は世界記録に並ぶ物で、それを活用するために色々と準備したいんだ」


 ここで俺は一つの情報を開示する。今までは「人よりも多い」程度で誤魔化してた召喚数のハードルを下げる。さすがに無制限召喚なんて馬鹿げた事は伝えないが、世界記録である20体同時召喚くらいまでならギリギリ大丈夫だと思う。


 お姉さんは驚いてたが、すぐに俺が望む物を考えれくれる。


「つまり、ゴブリンを本格的に軍として使いたいと?」


「まぁ、平たく言うとそうなる」


 最初に銃砲許可を勧めてくれたのもお姉さんだったっけ。レベル3まで買えると言うとさらに驚いてた。


「とはいえ、レベル3の弾薬なんて中級モンスターを相手に使う様なものばかりですからね。低級モンスターを相手にするならコスパが悪いと言わざるを得ません」


「それでも、グリフォンの件も有るから用心したい」


 当たり前だけど、強い武器や弾薬は相応の値段がする。リターンを考えずに威力だけを求めたら働く度に赤字がかさむ。だから基本はレベル1やレベル2の弾薬で揃えて、有事の際はレベル3で対抗するって形で揃えたい。


「ゴブリンに銃を持たせるならば、人間用のアサルトライフルは大き過ぎますね。ゴブリン用のPDWから選びますね」


 ちなみにだが、銃を持たせるのにコボルトは向かない。手の構造的にゴブリンを使う方が良いのだ。


「PDWでもレベル3の弾薬はあるのか?」


「御座いますよ。やっぱり高いですし、アサルトライフルの弾と比べると弱いですけど」


「でも数を揃えればCランクの足止めくらにはなるだろ?」


「使い方によりますね。ハイエンド品のアサルトライフルを多数揃えて、やっとCランクの討伐が見えてくるって程度でしょうか」


 やっぱCランクから上が化け物すぎる。レベル3の弾薬がどれくらい強いかって言うと、普通のアサルトライフルで対物ライフルを超える威力が出せるのだ。それを数揃えてやっとギリギリって時点で生き物のスペックじゃないだろそれ。


「ですが、レベル3の弾薬が使えるタイプの銃は高いですよ?」


「その辺は大丈夫だ。グリフォンの件で助けた相手の親御さんから色々と貰ってるから」


 そんな訳で、モンスターを買い揃えてから装備を選ぶ。パワーズは前のと同じゴブリンガードを揃え、銃器も最新式のPDWを勧められる。


「コレは全レベルの弾薬が使えるモデルなんですけど、着目すべき点が『メンテナンスのコスパ』でして」


 つまり、レベル1弾薬を使って雑魚狩りしても、メンテが安いって事か。普段使い出来るのは普通に助かるな。


 最悪は雑魚狩り用の銃を別に用意するつもりだったけど、共用できるならその方が良い。


「仮にだが、Dランクを狩るのはレベル1でも大丈夫か?」


「そうですねぇ……」


 頭数を揃えればレベル1でも出来ない事は無いけど、可能ならレベル2を用意しておいた方が良いと言われた。


「だが、弾薬を三種類も持たせておくのは……」


 今更だが、ゴブリンは小さい。小学生高学年くらいの体躯だ。そんな奴にごちゃごちゃと多種多様な弾薬を持たせるとか、銃を共用の物にした意味が無い。弾薬ってのは相応に重いらいしから、種類別で持たせると機動性が死ぬし、切り替えも面倒だ。


「でしたらコチラはどうでしょう。二ヶ月前に出た新商品なんですけど、威力がレベル1とレベル2の中間くらいで、しかし値段はレベル1弾薬よりちょっと高い程度なんですよ。頭数を揃えるならば充分にレベル2弾薬の代用としても使えます」


 ほうほう、良いじゃないか。言うなればレベル1.5って所か。コスパが良いのが最高だ。


「なら、この弾薬を普段使いにして、保険でレベル3を少し持っておけば良いのか」


「そうですね。そもそも銃でCランクを相手にするのが間違ってますから、逃走を前提に足止めに使う程度の保険で良いかと」


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