賭けに弱いから。
「
今日稼いだばかりのコボルトをどんどん追加し、囮にし、何とかグリフォンの攻撃を避けていく。
グリフォンは最初に居た位置から動かず、風による攻撃だけを放って俺を攻撃してくる。
それは刃だったり、槍だったり、拳だったりするが、いずれにせよ殆ど不可視の攻撃であり、ほんの僅かに見える空気の歪みを察知して攻撃を避けるしか無い。
グリフォンは的当てを遊んでるつもりなのか、逃げる俺を偏差射撃で狙って来るが、それが逆に俺の命を繋いでいる。
ほぼ不可視な攻撃だからこそ、正確に狙ってくれる方が避けやすいのだ。相手の狙いを看破すれば良いのだから。
もしこれが散弾のような攻撃だったら俺は今頃死んでいる。このグリフォンが散弾銃じゃなくて狙撃銃を好むタイプで心底助かってる。
乱雑に、適当に撃たれる攻撃の方がよっぽど避けづらいからだ。
召喚した先から風の刃で真っ二つになって行くコボルト達を視界に収めながらも、緩急付けた疾走で紙一重の時間を続けるしかない。
抱えてるスライムの死骸はまだカード化しない。まだなのか? 極限の一秒が長過ぎる。
チラッと女二人の方を見る。
人型に変化したライカンスロープが瓦礫をぶん殴っては砕き、砕けた瓦礫を蹴飛ばして更に砕き、細かくなった瓦礫をまた殴って吹き飛ばしてる。
あっちは大丈夫そうだ。時間さえ稼げば出口を作れる。
「……ッ!?」
よそ見をしたから、いや気を抜いたからか、目の前を不可視の斬撃が通り過ぎて冷や汗をかく。
タンゴのような複雑なステップをデタラメに挟んでグリフォンの狙いをバラしながら集中する。
「rrrrrryyaaaaaaaaa……!」
「…………まだなのかッ」
無限にも思える地獄の弾幕に、コボルトを犠牲にしながら立ち向かって僅かな時間。
ついに、腕に感じた重さが消えた。
抱えたスライムの死骸が霧のように消え去り、代わりに1枚のカードがそこに生まれる。
遅いと罵りたい気持ちを抑えてカードを掴み、すぐスライムボックスの中に叩き込む。もうライカンスロープ2枚は入れてあるから、これで作動する筈だ。
融合したカードを融合し直す。こんな単純な事に今まで気が付いてなかった自分が嫌になる。
もっと先に気が付いてれば、予めカードを用意して置けたのに。
そんな俺の願望と後悔を受けて生まれたカードは果たして、
Dランク・ツインテールキャット。
Cランクでは、無かった。
…………俺は、賭けに負けたらしい。
「まぁ知ってた。
俺に賭け事を成功させる程に運が有るなら、最初からもっとマシな人生を送ってる。そんな事は分かりきってる。
ぶっちゃけると最初からCランクなんて当てにしてない。出たら楽なのになって考えてただけだ。
俺が狙ってたのは最初から、ライカンスロープでは無いDランクカードだ。
「ツインテールが出たのは、ラッキーだったなぁ!」
カードの
「このギリギリ生きてる戦いに、バフを一個増やせるのはデカいんだぞグリフォンよぉ!」
ツインテールキャットのバフ効果。『二時間、身体能力を倍にする』。
効果の重複が可能なルールでこの効果を使えば、ゴブリン、コボルト、ライカンスロープの三重バフごと倍になる。
実質的にバフ六積み! これならCランクとも殴り合える! 勝てなくても、即死はしない!
「勝負だグリフォン! 生き残ったら俺の勝ち! 俺が死んだらお前の勝ちだァ!」
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