賭け事。



 思考する。


 相手はグリフォン。何故こんな場所に居るのかはさて置いて、現に居るんだから仕方ない。


起動コール!」


 二積みだったバフにコボルトを足して三積みにする。これで少しはマシになったはずだ。


「お前ら、カードは何がある!? 手札を全部教えろ! 包み隠さずだ!」


 俺は手勢が死兵と化してグリフォンに襲い掛かって稼いだ僅かな時間に声を上げる。


 同業であり、時には敵にもなるハンター同士。パーティでも無いのに手札を全て晒すなんて馬鹿な事をする奴は居ない。出し抜かれて儲けを奪われたら堪らないからだ。


 しかし今はそんな状況じゃない。持てる手札を全て投入しても死ぬだろう今に、手札を惜しむような馬鹿を助ける義理はない。


 もし拒否するなら、俺はもう一度グリフォンを抜いて帰る気満々だ。Cランクモンスターが居る現場にまで駆け付けた救助に対して協力を渋るような奴、助ける義理も義務も無い。


 そんな状況なら努力義務は充分果たしたと言えるし、俺が逃げても問題無い。手札を晒さない馬鹿が悪い。


「こ、コボルトとゴブリンが2枚……」


「わだじはっ、スライっ……」


「泣くな! ハッキリ言え! 死ぬぞ!?」


 聞いた結果、ろくな戦力にならない事が判明した。二人合わせても手持ちのカードはゴブ、コボ、スラが2枚ずつらしい。


 …………いや、待てよ?


「お前らDランクは召喚出来るか!?」


「わっ、わだしはむりっ……」


「で、出来ますっ! Dは一匹だけ……」


「でかした! 手持ちのカード全部出せ!」


 俺は急いで女二人からカードを全て回収し、胸ポケットからスライムボックスを出して融合する。これで勝ち筋が見えて来た。


 スライムボックスから出て来たカードを1枚女に渡し、もう一枚は悪いが俺が貰う。召喚出来ない奴にパイを持たせて置く余裕は無いからな。


 俺も召喚は出来ないが、使う当ては有る。


 前を見れば順当な結果として俺の手勢が全滅していた。この間わずか一分。いや、カードのランク差を考えれば一分も稼いでくれたパワーズやハウンズは大金星と言えるだろう。


召喚サモン! おい、お前はを召喚したら、!」


「わ、わかりまひたっ……!」


 追加の手勢を召喚しながら指示を出す。


 分かりきった事だが、俺達はグリフォンに勝てない。今この場にCランクカードが無いと、この戦力差はどうにもならない。


 だから、俺達の勝ち筋とは『死なない事』が全てとなる。


 Dランクのライカンスロープを召喚出来たとして、結局一匹では順当に殺されるだけだ。ハウンズ達よりも少し長く時間が稼げるだけだろう。


 だが、グリフォンをどうにか出来なくても、背後を塞ぐ瓦礫くらいならば排除出来る。Dランクだって人にとっては戦車みたいな存在だ。それくらいは余裕である。


 つまり、俺がグリフォンを相手に時間を稼ぎ、女達が逃走ルートを確保して、その後はひたすら逃げる。


 それを察した女二人も、死ぬしか無かった状況に産毛の先ほどは可能性が見えて来た事で気合いを入れて頷いた。


「作戦開始! 生き残るぞ!」


「「はいっ!」」


 俺はグリフォンの視線が二人に向かないように横へと駆け出し、封鎖せれた交差点の外周を回るように走る。


 さらに、女から回収したカードで生み出したライカンスロープと、俺が持ってるラス1のライカンスロープをスライムボックスへ突っ込む。


 しかしスライムカードは基本的にその場で全て使って来たから、繋ぎに使うスライムが手元にない。


「だが、見えてるッ!」


 グリフォンが面白半分に撃ち出す風の砲撃を回避しながら、俺は交差点を塞ぐ瓦礫に向かって突撃する。


 さっきからチラチラと、此処にスライムが居たのが見えて居た。俺の低ランクドロップは100%だ。カードが足りないなら現地調達する。


「居たァッ!」


 瓦礫を蹴っ飛ばして吹き飛ばすと、その下にプルプルと震える粘液の塊が居る。そいつに手を突っ込んで中に有るを握ったら再び走り出し、粘液ごと抱えた核を握り潰した。


 これで数十秒後にスライムがドロップする。あとはグリフォンので死ななければ、また僅かばかりの可能性が生まれる。


 DランクとDランクのカードを融合する。そうすれば、もしかしたらCランクのカードが生まれるかも知れない。


「頼むぞスライムボックスッ……!」

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