Cランクモンスター。
Cランクモンスター・グリフォン。
それが俺の目の前に居るバケモノの名前だ。
Cランクでは
大きさは体高だけで179ある俺よりもデカく、その時点でもう生物としての格を思い知らされる気持ちだ。
獅子と比べて鷲の爪が勝ってるとは思わないが、鷲の脚を獅子と同サイズにした場合は爪の長さなどで鷲に軍配が上がるだろう。
実際、目の前に居るグリフォンの前脚に備わってる剥き出しの爪は凶悪さがありありと伝わってくるほど大きく、あんなので引っ掻かれたら一撃で致命傷だと理解出来る。
それだけでも厄介なのに、コイツは更に鷲の顔と翼まで持ってるのだ。
飛ばれて不利なのは誰が考えても分かる。そんな翼パーツはもう言うまでもなく厄介だ。そして鷲の顔も同じくらい凶悪である。
なにせ、ライオンの顔だったなら『噛み付く』しか出来なかった物を、鷲の顔を手に入れてるグリフォンは『突き刺す』事が可能なのだ。
噛み付く攻撃は口を開き、口を近付け、口を閉じる。この三動作が必要なのに対し、突き刺す場合は口を突き出すだけで良い。ワンアクションで攻撃になる。
もちろん鋭いクチバシでも噛み付きは可能だろうし、大きさが揃って筋力も伴っているなら、鷲の顔は獅子の顔よりも単純に上位互換と言える。
「おらコッチだデカブツ!」
そんな相手に後ろから肉薄し、ケツを思いっ切りベアナックルでぶん殴る。
「GAaaaa!?」
「アメコミの雑魚みてぇな声を出すな!」
俺の存在には気付いて居ただろうに、脆弱な人間が一人だったから気にもしてなかったんだろう。
デカいケツを俺に殴られてから初めて敵だと認識したのか、それでもマトモに相手をするつもりが無いのか後ろ脚で引っ掻くような攻撃をされる。
樹木のように太い脚から繰り出される爪撃混じりの蹴りに冷や汗をリットルでかくが、スウェーバックで回避してからグリフォンの股下に抜けて前に進む。
俺の方を向いてくれないなら俺が前に行く必要がある。
「無視すんなデカブツっ!」
「GRraaaa!」
そのまま股下から頭に抜けると、抜けた瞬間バックリ食われるので横に抜けながら、ついでにグリフォンの腹をぶん殴ってやる。
ライカンスロープにゴブリンバフまで積んでるのに、これだけ殴ってもグリフォンはなんの
横に抜けたなら抜けたで前脚の引っ掻きが飛んで来て、俺は慌ててベアナックルでぶん殴って弾き返す。しかし膂力で負けてて弾かれたのは俺の方だった。
そのまま吹っ飛ばされる方向を僅かばかり調整し、なんとか要救助者の側まで来れた。
「おい、大丈夫か!? 助けに来たぞ!」
本当は吐くほど嫌だが、万が一にもライセンスを剥奪されたらルミを養えない。
「あ、ありがとうございまずぅっ!」
「たすけてぐざぁいッッ……!」
俺が女性ハンター二人の方をチラッとだけ見てから確認すると、助けが来た事に感動でもしたのか女性二人が涙声で俺に感謝するが、今は泣いてる場合じゃないから前を見ろ。
Cランクモンスター。このレベルになると人間が現代兵器で武装した程度じゃ何万人集めたって勝てやしない本物のバケモノとなる。
下手したらミサイルですら仕留められない生物兵器であり自然災害。
ちなみにBランクモンスターまで行くと、最低でも
正面に見据えるグリフォンは、鷲であるが獅子でもある怪物。そのネコ科特有の嗜虐性でも発揮したのか、どうやら俺達で遊ぶ気らしい。
だから女性二人はまだ生きてたんだな。じゃなきゃ素人同然の新人ハンターがCランクを相手にして瞬殺されてない訳が無い。俺を含めてな。
もちろん、殺す時は殺すつもりなのだろう。だってさっきチラッと見た時、間に合わなかった女性の遺体が二つほど見えたんだ。
アレが、グリフォンの遊びの結果なんだろう。俺ももう少ししたらアレの仲間入りを果たすはずだ。
最悪だ。今すぐ帰りたい。理不尽すぎて吐きそうだ。
だって、頑張ったって俺はコイツをドロップさせられないんだぞ? 万が一にも勝てないのに、万が一が起きても旨みが無いとか最悪過ぎる。
勝ち筋を考えろ。可能性を
「二分隊、ヤれぇッ!」
俺の叫び声を聞いた、わざと置いて来たモンスター達がグリフォンの背後から襲い掛かる。
スリングショット持ちのパワーズが距離を保ちつつ狙撃を開始し、ハウンズとナイフ持ちパワーズがグリフォンの尻に飛び掛った。
今は少しでも時間を稼ぐ。何か、何か手札を用意しなければ。
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