悲鳴。
「グルァ!」
「ふッ……!」
飛び掛って来たコボルトの
そのまま腕を振り抜くようにしてナイフでも顔面を斬り裂きながら殴り飛ばし、すかさず腰を落として背後からの襲撃も
「ガァッ!?」
「甘いんだよ獣畜生が」
サッカーボールを蹴飛ばすようにオーバーヘッドを決めて蹴り飛ばしたら、背中から地面に落ちて受身を取り、素早く転身して蹴り飛ばしたコボルトに肉薄。
民家の壁に叩き付けられたコボルトに対し、渾身のダッシュストレートを見舞って壁ごと砕く。
「…………うわぁ、ハジメさんって本当に人間ですか?」
「あ? 失礼な事を言う雑用係だな。クビにされたいのか?」
「ひぃっ、ごめんなさぃっ」
調子が出て来たと思ったらクソ失礼な事を言い始めるコトリを睨みながら、俺のモンスターが他の敵を仕留めるのを待った。
「ふむ。生存競争中のモンスターに割り込むと美味いな。ゴブもコボも両得じゃないか」
「乱戦に巻き込まれる私は生きた心地がしないんですけど……」
「あぁ? ちゃんと守ってやってるだろ。仕事面倒まで見てやってるのに贅沢な奴だな」
そも、俺が戦闘に参加してるのはコトリがとろとろしてるからだ。
戦闘を感知したら隠れれば良いものを、テンパってあわあわしてる内に巻き込まれてるんだ。
そのフォローで俺がこうして下がって来てまで守ってるのに、文句を言うとかどう言うつもりなんだコイツ。
「そのどん臭さで、よく今まで管理地区難民出来たよな。どうやって生きてたんだ?」
「それは、そのぉ……」
廃都市である管理地区はインフラも死んでる。水道すら出ない場所で、どうやって生きてたのだろうか。
戦力はもちろん、食料だって手に入らない場所だ。
「柵越えでもしてたのか?」
「あはは……」
聞いてみてもコイツは何も言わない。笑って誤魔化すだけだ。事情が有るんだろうが、やはり信用出来ない。
ちなみに柵越えとは、ゲートを通らずに管理地区と三番区を隔てるフェンスを超える事だ。
どうせモンスターには大した効果が無いのでフェンスには電流とか流れてないので、有刺鉄線を避けてよじ登れば普通に越えられる。
もちろん違法だが、誰かが不利益を被ることも無いので基本罰せられることも無い。
だが柵越えなんてする奴は相当な訳ありだ。普通に考えたら管理地区に入るなんて自殺以外の何物でも無い。
どんなに低賃金で働いてても、三番区で甘んじてれば生きては居られる。それが嫌ならライセンス取って正規の手順で管理地区に行けば良い。
そのどれもやらずに柵を越えて管理地区に行く。なにをどう考えたって厄ネタだ。
「……はぁ、もう良い」
答える気が無いんだから、聞くだけ無駄だ。
コイツにはさっさと稼いでもらって、さっさと家から出て行って貰おう。
それまでは無制限召喚と確定ドロップの事は何とか誤魔化そう。
拾ったカードは半分ほど隠して、後から渡せとモンスター達にも指示を出してる。売りに行く時だけコイツにバレ無いように気を付けようか。
………………こんな得体の知れない奴を、ルミの傍に置いておきたくない。
「誰かぁぁあぁあぁぁぁあぁぁッ! 助けてぇええええっ!」
決意と共に、遠くから
はぁ、次から次に厄介事が起きるな。なんなんだ。厄日か? 連日厄日なのか?
「……は、ハジメさんっ」
「はぁ……、行くぞ。ハンターは要救助者を感知したら救助義務が有るんだ」
この悲鳴を聞いた瞬間を、誰かがスコープで見てるかも知れない。普通に廃ビルの上から望遠鏡で索敵して目撃してるかも知れない。
管理地区で「誰も見てないやろ」は厳禁だ。実際それで資格を失って三番区に落ちてくる落伍者は
俺がこんなにも人の目を気にしてるのもそれが理由だ。三番区落ちした元ハンターの話しなんて山ほど聞く。落ちた本人からな。
「コトリ、気合い入れろ。今から救助に向かう」
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