初コンビ探索。
「まず、俺達は雑魚だ。雑魚ハンターの中でも更に底辺だ。それを肝に銘じろ」
「は、はい!」
コトリが目覚めてから二日目の朝。俺達は前回コトリを回収したマンションまで来ていた。
コトリは昨日の内に二番区を連れ回し、必要な物は全て買い揃えてある。もちろん全部借金だ。一円単位で全部記録してある。
家で過ごす衣服と下着、食器や歯ブラシなどの必要雑貨は当然として、死なれると困るから女性用のハンターガードもコトリ用に購入した。
家でライダースーツさながらの防護服を着たコトリに対してルミが「お姉ちゃんかっこいいねっ」とニコニコ笑顔で褒めた辺りから、コトリもなかなかやる気を出してる。
ふふ、俺の妹は可愛いだろ?
流石に装備やら必要雑貨やらを買い揃えたばかりで、コトリのハンター測定までは手が回らなかった。
仕方なくゴブリンのカードを渡して実際に召喚させる形で召喚限界数を確認すると、Fランクは2枚が限界らしい。
昨日はゴブリンしか狩れてないから、コボルトは確認出来てない。
「言っとくが、前回はお前のせいで大赤字だからな。その分の損害は請求しないが、適当な仕事はするんじゃないぞ。俺からお前に対する信用度と好感度は割りと最底辺だ」
「がんばりましゅっ!」
前回はライカンスロープのバフを使った上でゴブリンを40枚ちょっとしか稼げなかったんだ。その稼ぎさえコトリの装備や必要雑貨の購入に代金に結構消えたから、マジで大赤字なのだ。
ライカンスロープ1枚で二十万で売れるし、売価四十万だと考えれば前回は四十万のバフを
「マジで気張れよ」
「はひっ……!」
今回、コトリにやらせたいのはスライムの回収だ。スライムさえ手に入ればライカンスロープを量産出来るからな。前回の赤字を回収させて貰う。
「気を付けて欲しいのは、スライムを仕留めずに俺のところに持ってくるか、もしくは俺をその場に呼ぶことだ。間違ってもお前が倒すなよ?」
「えと、なんででしょう……?」
「俺は低ランクのドロップ率が馬鹿みたいに高いんだよ。俺が倒す方が確実に稼げる」
「なるほど……!」
まだ確定ドロップの事は教えない。金を返し終わったら解散するかも知れないコンビだ。渡す情報は少ない方が良い。ルミにもこの辺の事は言い含めてある。
「じゃぁ、このマンションを中心に探索始めるぞ。俺はゴブリンとコボルトをメインに狩るから、スライム探しは任せたぞ」
探索を開始する。
今日は前回の損失が痛かったからライカンスロープを
その代わり、ゴブリンは躊躇わずに
初日はゴブリンも少なかったが、最近は少し増えて来たように思う。恐らく
「おいコトリ、ゴブリンくらいは
ふと、バフもせずに探索を始めようとするコトリを呼び止めた。お前、
「でも、勿体無くないですか……?」
「自分の命よりFランクカードの方が勿体無いと思うなら、それでも構わないが」
「つ、使います使いますッ!
「まったく……。ドロップ率1%でも一時間以内に百匹殺せば赤字じゃ無いんだから、そんなに気負うなよ」
金が無くてコトリのゴブリンには装備を持たせられなかった。野生の奴と見分ける為にスカーフを巻かせてるがそれだけだ。
そんなゴブリンが二匹だけとか、囲まれたら普通に死ねる。
幸い、ゴブリンバフは人間の筋肉量だとカードのランク以上に効果を発揮するから、強いモンスターを使えないなら多少利益が減ってもバンバン使うべきだ。
企業のサポートがあったり、信頼出来る仲間が居るならまだしも、俺達は最底辺ハンターであり、お互いの信用も地の底なんだからな。
五千円で一時間命を買えるなら
カネはカネに集まる。カネを持ってない俺達はカネを消費しながらカネを稼ぐしか無いんだよ。
準備が終わったので、今度こそ探索を始める。
隊列はまず俺、次にコトリだ。俺がモンスターと先行して敵を倒し、その後ろからコトリが着いてきてスライムを探す形だ。
ちなみにアバランチはマンションの駐輪場に置いてる。無事なサイクルスタンドがあったので停めておいた。
召喚した分隊を先行させながら後を追う。この辺りはマンションやアパートも多いからモンスターの巣もきっと多いだろう。
「……いっそ、スライムは買うのも手かもな」
モンスターのランクは、純粋にそのモンスターが持つ脅威度が指標だとされてる。カードに最初から記載されてるランクをそのまま人類も使ってるだけなので確実とは言えないが、概ね間違ってないだろうとされてる。
つまり、希少度はランクに加味されてない。だからこそスライムはゴブリンをぶっちぎって最弱のモンスター認定されているにも関わらず、利用法もゴブリンより少なく限定的にも関わらず、値段がゴブリンより高いのだ。
ゴブリンは五千円で売れるが、スライムは八千円だ。買うなら一万六千円から二万円を見る必要がある。
しかし、ライカンスロープの材料になるなら二万でも安いだろう。
材料を全て購入したとて、合計で十二万円で材料が揃う。それをスライムボックスに突っ込めば二十万のカードに化けるのだ。
「スライムボックス、あれからネットで詳しく調べてみたけどやっぱり出て来なかったんだよな。相当なレアアイテムなんだろう」
あれが世に出ればいくつかのカードが値崩れを起こすだろう事は目に見えてる。なら、俺はスライムボックスの存在も秘匿すべきだ。
「秘密ばっかり増えていくな。そのうちパンクしないか心配だ……」
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