マンション探索。
余ったお金でルミに野菜炒め(肉入り)を食べさせてあげた翌日、俺は新装備を携えて管理地区までやって来た。
装備は既にモンスターに装備済みで、装備を持たせてからカード化すると、カードのイラストが武装を装備したモンスターイラストに変化する。
今更ながら不思議なカードだ。
二番区から始まり三番区を貫いて管理地区まで伸びるハンター用道路を歩いて境界まで行き、ライセンスを見せてサクッと入場する。
俺と同じような個人系ハンターも多いが、『個人系』とは個人で税金を収めてる事業主と言うだけで、ソロで活動してる事を意味しない。
何が言いたいかというと、つまりソロで活動してるハンターなんて見渡す限り俺だけだった。
中には明らかに大学生の集団が、合コンの会場を間違えたのかってくらいのテンションで「おっしゃぁ、稼ぐぜえ!」とか叫んでたりする。
叫んでるのは見目良い若者で、その彼を囲うように男女様々な人間が相槌を売ったりヨイショしてたり。まぁなんだ、平和だなと思う。
あの人数なら、確かに物見遊山で管理地区に入っても大丈夫なんだろう。浅い場所なら。
魔境に近いとランクの高いモンスターとか普通に遭遇するらしいからな。そっちまで行くと彼らは死ぬんだろう。
だって装備品が俺と大差ないのが見てわかる。俺と同じガードシリーズの最低ランクだ。あれでCランクとかのモンスターと遭遇したら即死だろ。
色んなハンターが居るなぁと思いつつ、俺は廃都市の大通りから外れて小道を進み始めた。確定ドロップが見られると面倒なので、早めにソロで戦える狩場を探そうと思う。
今思うと、偶然カチ合ったあのコボルトの巣、美味かったなぁ。コボルトは数が居る上にそこそこ高いから狙い目なんだ。
個人的にはゴブリンも使い易くて好きなんだが。
「さて、
俺はライカンスロープのカードを
この二種も敵と味方で紛らわしいから、ゴブリンをパワーズ、コボルトをハウンズと呼ぶ事にする。
呼称の由来は大した事無く、ゴブリンガードを着てヘルメットを被ったゴブリンがパワードスーツを着てるように見えたから。それとコボルトは
パワーズとハウンズはそれぞれ十匹ずつ居るが、ハウンズを二匹、そしてスリングショット持ちのパワーズを一匹に、剣持ちのパワーズを一匹加えて四匹で一組の分隊とする。
手持ちの枚数だと、この形でちょうど五組作れる。
しかし大通りが近いこの場所で全部を召喚したりはしない。出すのは一分隊だけだ。無制限召喚がバレるのは避けたいからな。
「ついてこい」
分隊に指示を出して、押して転がしてた
モンスター達は軽くジョギングする程度で人の何倍も早く走れるから、自転車に乗ってる俺にも容易に併走可能だ。なんかちょっと悔しいけどな。
住む人が居なくなったビル群から離れて住宅街付近へ。今日はアパートやマンションを探索して巣を探し当てるつもりだ。
「なるべく人が来なくて、なるべく雑魚が多い場所が良いよな」
場所を探して管理地区を見渡す。人が居なくなっただけの廃都市は、たったそれだけの事で『色』が消えて見えるから不思議だ。
「あそこにするか」
良さげなマンションを一棟見付け、自転車を停める。鍵はかけるが、他のハンターが盗もうと思えば鍵なんて焼け石に水だし、モンスターに壊されるかも知れない。
一番の防犯はモンスターに警備させて置くこと。モンスターが死ぬと召喚者は感覚的にそれを知ることが出来るので、遠くに居ても問題無い。
乱戦だと
「アバランチを見ててくれ」
モンスターにそう指示して、俺はマンションへ向けて歩き出す。
「状態の良いマンションだな」
マンションを見ると、所々欠けてはいるが、管理地区にある建造物にしては状態が良い。モンスターが巣とするにはうってつけだろう。
しかし、エントランスに入ると瓦礫が転がった埃も積もってる。俺が歩くと埃を巻き上げる事から、このエントランスは利用者が居ない事が分かる。
…………無駄足か? モンスターの巣になってるなら埃に足跡くらいはあると思うが。
だがエントランスの割れた自動ドアを踏み越えて先へと行けば、そこには真新しい足跡が大量に残ってた。
「………………ああ、裸足だからガラス片が転がるエントランスを嫌がったのか。マンションの裏手がメインの入口になってるのか?」
エントランスに足跡が無い理由を察した俺は、このマンションにもモンスターが居る確信を経て、二分隊ほど召喚する。
「先行しろ。モンスターは見つけ次第殺せ」
モンスターに指示を出し、俺もその後を追うようにマンションの探索を開始する。
さぁて、今日も稼ぐとするか。
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