本格準備。



「お約束通り、ゴブリン多目に持って来たんだが」


「わぁ、ありがとうございます!」


 妹が大天才だった事を知った翌日、俺は本格的にハンター家業をやるためにまたお店に来てた。


 場所は俺の防護服を買った最大手で、前に対応してくれたお姉さんに声を掛けた。


 ゴブリンは売れ線だから数が欲しいと言っていたから、33枚渡して買い取ってもらう。もちろん他のカードも纏めて渡す。


「こんなにっ!?」


「妹を養わないと行けないので、頑張ったんだ」


 きっちり相場で買い取ってもらい、早速お買い物だ。


「今日は何をお求めですか? 前に買わなかったトンファー買います?」


「いや、今日はゴブリンとコボルトの装備をお願いしたい。あと、管理地区で素早く狩場まで移動出来る足も欲しい」


「…………流石に車やバイクはこの金額だと無理ですよ?」


「自転車とか無いだろうか?」


 無ければ徒歩で頑張るが。


 ひとまず、移動手段は置いといてモンスターの装備を選ぶ事に。


「こちらはお客様がお使いのガードシリーズのゴブリン版、その名もゴブリンガードです」


「そのまんまだな」


「ゴブリンを戦闘に使う前提ですと、使い捨てが多いですからね。製品名もそれなりになってしまいます」


 なるほどな。苦労して名前を捻り出しても、それを使うのがゴブリンじゃ仕方ないか。


「武装はゴブリン用のショートソードとバックラーを合わせた近接用と、強力なゴムを使った対モンスター用スリングショットが有ります」


「ふむ。五組ずつ見積もって貰えるか?」


「そんなに買います?」


「予備も含めて買わせて欲しい。現場で戦闘中に装備が壊れて丸腰なんて事になるなら、最初から予備を用意して臨みたい」


 本当は全部同時に使うつもりだが、召喚数無制限なんて意味不明な体質をバラすのは気が引ける。予備と言っておけば大丈夫だろう。


「コボルトはライダースーツのようなガードシリーズみたいに、全身装備は嫌がるんです。なので、ショートジャケットにハーフパンツで良いと思いますよ。装備はコボルト用のガントレットがオススメです」


 勧められるままに見積もると、もうコレだけで八十万を超えてた。しかも大量購入で割引も利いてコレだ。ハンター家業はイニシャルコストが異次元過ぎるな。


「最後に、足が必要との事だったので…………」


 モンスター装備を選び終わったら、お姉さんが最後に管理地区仕様の自転車を見せてくれた。 


 マウンテンバイクをベースにオフロード仕様に仕立ててある質実剛健な自転車は、アバランチと言う名前らしい。


 雪崩アバランチ? 雪崩なだれの中さえ走り抜けるぜって事か? 雪崩に飲まれたら自転車は無事でも俺は死ぬから普通に嫌だが……。


「これで色々と割引お勉強させて頂きまして、きっかり百万でどうでしょう?」


「買った」


 ガードシリーズは自分が使ってる感じだと信頼に値する装備だし、これを勧めてくれたお姉さんも信用出来る。


 そのお姉さんがこの値段でコレが良いと言うなら、良い物なんだろう。


「それと、お客様は銃砲取り扱い資格はございます?」


「いや、無いな。手に入るなら欲しいが、どうすれば良いだろうか?」


「Cランクカードの販売実績でもあれば試験無しで一発なのですが……」


 無理だな。Cランクドロップ0.01の男だぞ俺は。


「地道に試験を受ける事にする」


「お待ちしておりますねっ」


 欲しい物は買えたので、そろそろお暇するか。


「またの起こしを〜」


 店を去る時になって、俺はまたお姉さんの名前を聞いてない事を思い出した。


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