役割。



 昼を回って、午後二時頃か。


 あれから管理地区を駆け回ってモンスターを探しているが、思ったよりも見付からない。


 一昨日はハンター共何やってんだと憤ったが、実際のところ良く働いてるらしい。


 もしくは侵攻の時に減り過ぎたのか? 


 本来なら魔境と接してる地区、つまり前線に居るハンターがしっかりと仕事をしてるから管理地区にモンスターが少ないと言えるんだが、一昨日に侵攻された場所に住んでた身としては微妙なところだ。。


 まぁどっちにしろ、モンスターが少ない事には変わりない。


 お陰でゴブリンとコボルトが10枚ずつと、スライムが2枚手しか手に入らなかった。


 まぁコボルト10枚ってだけで売値が五十万なので、金額だけ見ると凄い。


 しかし、Eランクまでは確定ドロップらしい俺の能力を加味すると、朝から昼二時までの六時間近く使って、モンスターが二十匹ちょいしか見付かってないのだ。


 コボルトが居たから良かったものを、もし全部ゴブリンだったら一昨日の稼ぎの半分以下である。これじゃ良くない。


「ふむ、どうするか」


 少し考え、俺は思い切ってコボルトを追加で五枚召喚した。


「稼げないなら、手数を増やせば良いよな」


 最初に召喚したコボルトと合わせて計六匹。三体ずつに分けてスリーマンセルを組ませたら、そのまま前と同じように索敵をさせる。


 あれなら、ゴブリンの群れ程度であればアイツらだけで討ち漏らしも無く殲滅出来るはずだし、コボルトは群れても二体か三体なので、コボルトの巣にでも突っ込まなければ同数で渡り合えるはずだ。


 そして俺が召喚したコボルトは俺の知性をベースにしてあるから、普通のコボルトよりはいくぶん強いと思う。


召喚サモン


 更にゴブリンを一匹増やし、こっちも三匹ずつに分けて行動させる。


「お前らには荷物持ちを任せる。コボルトの後を追ってカードを集めて来てくれ」


「げぎゃ!」


 ああ、しまったな。全部を使いに出してしまった。自分の護衛とカード回収にも召喚しておこうか。


 俺はゴブリンとコボルトを更にもう一匹ずつ召喚した。コボルトは俺の護衛で、ゴブリンはカードの回収を任せる。


「…………しっかし、此処にも昔は人が住んでたんだよな? ビルや民家が並んでても、全く想像出来ん」


 人が居ないと言うだけで、人工物が密集してるはずの廃都市は寒々しくて恐ろしい。


 これほどの規模で人類は住む場所を追われたのだと思うと、やはりワールドブレイクを憎々しく思う。


「せっかくだ、ビルの中も探索してみるか」


 パッと見で倒壊の恐れが無さそうな損壊が少ないビルを探すと、七階建ての丁度良さそうなビルを見付けた。


 窓ガラス等は全てに割れてるが、ゴブリンやコボルトが巣とするには丁度良さそうな建物だ。


 コボルトを先頭に立て、ゴブリンを後ろにビルへと入る。


 ベアナックルを構えて一歩一歩、慎重に。天井も良く確認しながら歩く。スライムなんかが降って来たら大変だからな。


 床に散らばる細かいガラス片や砕けたコンクリートの欠片をパキパキと踏み割りながら進み、一室一室確認して上を目指す。


 途中、コボルトが鼻をスンスンと動かしてたので、何かしらのモンスターは居ると思われる。


「……毛が落ちてるな。コボルトの巣か?」


 コボルトはあまり群れない。だが共同体は持つ社会性のモンスターだ。


 狩りは一匹から三匹までの少数で動き、その結果を巣に持ち帰って成果とする。


 管理地区でモンスターは何を狩って暮らしてるのかと言えば、同じモンスターだ。


 この辺はゴブリンとコボルトが多い地区らしいので、ゴブリンはコボルトを食べるしコボルトはゴブリンを食べる。

 

 虫とかもたぶん食べてると思うが、詳しくは知らない。


 まぁ基本的にコボルトの方が強いので、ゴブリンは返り討ちに遭うのだろうが、しかし単独のコボルトを複数のゴブリンで囲めば倒せる事もあるのだろう。


 あとは、スライムか。スライムならゴブリンでも簡単に食えるだろ。


 その他で言えば、まぁ人だ。下手打って死んでしまう、俺みたいな新人を食べて生きてるんだろうな。


 流石に企業勢や公務員がこんなところで死ぬとは思えないから、やっぱり新人が食われるんだろう。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る