自覚する体質。
「流石におかしいな?」
五匹のゴブリンを倒し切った俺は、目の前の状況に困惑してる。
「カードが、5枚ある。さっきのは一枚使ったから、ポケットのカードと合わせると6枚…………」
ゴブリンのカードは買取相場が五千円だから、これで三万円だ。
中には『金塊』と言うカードもあるのだとか。
いや、良い。今は良い。金塊の事なんて考えても現実逃避にしかならない。
「…………流石に、おかしいな」
呟いた言葉を再び繰り返す。
今日、この十数分で七匹のゴブリンを殺した。そして、7枚のカードがドロップした。これはいくらなんでもおかしい。
俺のドロップ率はS〜Dまで全て「0.001%」だった。
これ以下だと『測定不能』って表示される最底辺。下限も下限、奇跡が起きればドロップするねって言われるくらいの数値だ。
同時召喚数もS〜Dまで全てゼロ。あまりの結果に、一応の確認と言うことで特別にEとFも見てもらったが、それは測定不能と出た。
もはやカードマスターとしての才能がマイナスへと振り切ってるなんて係員に言われた程の数値であり、俺も諦めた。
しかし、なんだ、今のところ100%ドロップしてる。Fランクのゴブリンに限って、だが。
「…………もしかして、本当に俺はFランクだけドロップ率が良いのか?」
ゴブリンを二匹殺した後に呟いた妄想が、突然現実味を帯びて来た。
「試して、見るか。…………
おもむろに、手に持ったカードから一枚だけ召喚してみる。俺の召喚数は測定不能らしいので、本当なら召喚は出来ないはずだ。
「--げぎゃ!」
しかし、出来てしまった。
手に持ったカードが一枚消え去り、代わりに霧が集まる様にしてゴブリンが一瞬で目の前に生成される。
「召喚、出来たな。測定不能だったのに」
「げぎ?」
俺の顔色を伺って首を傾げるゴブリンは、先程まで殺し合ってた生き物と瓜二つだ。当然だよな、同じ生物なんだから。
ふむ、召喚したモンスターは本当に従順らしい。
「もしかして、測定不能って反対の意味だったのか?」
ゼロ以下じゃなく、召喚数が無制限だったりする可能性がある。
確かめねば。……一枚五千円で売れるカードを使うのは正直に言うと気が引けるなんてもんじゃないが、だが確かめる必要がある。
「…………
追加で四枚分、俺は呪文を口にした。通常、Fランクの召喚数最大は公式記録で20だったか。
同時召喚数はモンスターランクが高い程、複数体呼べる人は減って行く。Fだった五匹も呼べたならかなり多い方である。
そして、
「「「「ぎげゃぁ?」」」」
「ぎぎ!」
呼べてしまった。二万五千円分も使ってしまったが、俺はもう後悔すらしてなかった。なんなら口角が上がってしまってる。
「…………そうか。そうなのか」
苦節八年、俺はやっと自分の持つ大きなアドバンテージに気が付いた。
「俺は、低ランク特化型の体質なんだな?」
SだのAだの、高いランクのカードはドロップさせられないし、召喚も出来やしない。
けど、Fランクに限って…………--
「いや待て。確か、俺の召喚数はEランクも測定不能だった。そして国家試験だとEランクのドロップ率は調べてない」
もしや、FだけじゃなくてEランクも確定ドロップで無制限召喚が可能? だとするなら、俺はもう二度とルミにひもじい思いをさせずに済むぞ。
「ふふ、ふははっ、ははははははは! 凄い、凄いぞ! これでルミに肉を食べさせてやれる!」
「げ?」
「ぎぎ〜」
「「ぐぎゃっ!」」
あまりの喜びに、珍しく高笑いなんて上げてしまう。それくらいに嬉しい。ああルミ、待ってろよ。明日はきっと牛丼くらいは食べれるから!
「まずは、俺が持つFランクドロップのチカラを本物なのか確定させようか。これで奇跡的な七連ドロップだっただけと言われたら心が枯れてしまうからな!」
とにかく試行数を増やそう。俺がFランク確定ドロップ体質だと自信が持てるまで!
「ゴブリン達よ! 今から町へ向かい、ほかのゴブリン達をここまで
本当は自分から探しに行きたいが、ルミを残して家から離れたく無いからな。
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