あとがき
僕にできるなにか
「ヴィーナス・トランス・サクリファイス」をお楽しみいただき誠にありがとうございます。
「シン・ウルトラマン」公開前の折にも、その映画を観た前と後で自分におけるウルトラシリーズ風小説の書き方が180度変わってしまうと思ってはいましたが、
・団地に立つ外星人(星ではなく世としたのは洒落もありますが、長年僕の妄想を支えている「
・庵野脚本に特徴的な、個性を圧し殺した難解だがシンプルに伝わる台詞回し、
・メフィラス(演:山本耕史)の演技プランの逆で最初から人類らしさを捨てた知的生命体、
・ウルトラQへのオマージュ(今回はむしろ空想科学読本への、だったかもしれませんが)、
・ウルトラマンと人類のコミュニケーション、
・初めての必殺光線(わざわざ右手を左手で押さえつけるシークェンス付き)、
・シン・ウルトラマンでは叶わなかった伝説の押し問答の再演
を、アマチュア作家だからこそ「てへぺろ☆」で済まされる
そしてほんの少しのオリジナリティ、秘伝のタレである、
・一冊の長編小説ならばじっくりと女神の勇者女体化計画を進めていくところを、ボン・ガチムチ・ボンの朝おんで済ませたTS要素。
でも、本気でゼロからTSシークェンスを書くならあまりにも女性にとってはデリケートな部分(それもなおのことルッキズム的な……!)に触れずにはおれないし。
それに女神の化身がビキニアーマー、あるあるじゃないですか。ビキニのサイズは……読者の特権に委ねられました。ここに挿絵は、
それと今回でやはり自分にオリジナルモンスターを創造するスキルが無いことを確信しました。まあ、誰がどう読んでもローグラはテレスドン、それもウルトラマンZのほうだよなと自分でも思います。この調子だと
あと、余談ですがローグラの由来は不思議のダンジョンシリーズでも知られるゲームジャンル「ローグライク」です。
そんな怪獣だけではなくてわざわざゴウトの世界にイド以外の外世人が侵略する可能性を残してはいますが、それは他ならぬイド達の活躍によって
別にそんなところまでシン・ウルトラマンを
「だったらそれはもう異世界転生用最終兵器を名乗るしかないだろう────!!」
と
郷愁の侵略者は、あの夕陽に染まる世界からいつでも懐かしいという感情エネルギーを狙っています。そう、あなた様もどうぞお気をつけくださいませ。
そして今回の執筆を完了するにあたり、僕こと七峰らいがが7月初旬にコロナ陽性者となったことを付け加えねばなりません。
幸いにして陽性反応確認から二日ほど自宅で安静に過ごすことで一時39度も出た高熱は去りましたが、同じ家で暮らす家族の玉突き事故的な感染リスクを避けるべく、ホテルでの療養に切り替えました(後日退所済み)。
結果として僕は一日で一万字を超す短編小説が書けるほど
あの時、高熱と倦怠感の中でこれがコロナか、人が大勢死ぬ病気にしては自分の症状はまだ軽いな──モデルナワクチンを三度打ったおかげかな、などとマスクの中で益体もないひとりごとをしゃべっていました。それは不安だったからです。
咳をしても一人、ではないけれど、この
やっぱり
では作品の解説に戻ります。
捨て女神イドのパーソナリティは今までの自作物と同じ私小説のそれかもしれません(彼女が戦士に覚醒する瞬間が、自作のオウカというキャラクターに少し似ています。僕が「強い女性の戦士」を書こうと思うと自然、こうなるようです)が、異世界転生もののあのトラックで轢かれた主人公が亜空間で出会う女神のことを拡大解釈しつつ、
彼女がうつ病らしき精神
異世界に転移してからのイドは完全にウルトラマン化していくのでもはや当たり前のようにプロレス技を使い出しますが、ここにもっともらしい伏線はありません。
何か見えた人は失礼ですが錯覚です。実はイドは現代日本の自宅に帰ったら
閑話休題。イドに対するゴウトは、言わばバディ役として彼女と逆位置になるよう個性を配分しています。
というか、俺様になびかないおもしれー女、の逆パターンと言ったほうがもっと適切なのでしょう。神をも疑う不遜な態度は、いざとなったら少数派の自分が
僕はあの方ほど人類史を
けれどゴウトって自分の生理現象と本心があべこべになってるキャラクターなので、ああいう描写になりました。ちょっと彼に理想を託しすぎて、かっこよすぎましたかね。
今回のゴウトをイドが助ける心理的ロジックは、もちろんシン・ウルトラマンで描かれるそれとの状況と立場の違いを考えつつ、自分の中の「ウルトラマンが人類を守ろうと思う」きっかけづくりに位置づけています。
解説代わりに「ウルトラマンガイア!」を熱唱するまでもなく、最後まで人類の希望を捨てなかった者に、ウルトラマンは手助けをしてくれるのだと思います。その素晴らしい王道を、改めてリスペクトします。
しかし誰でも逃げ出したい状況下で一人だけ反対方向に「逃げる」やつがいたら、あれって思うからイドの推理は高速であっても無理はないと思うんですが、作者の書きたいシナリオレベルにキャラクターを当てはめすぎている、のかもしれません。わざわざゴウトを窮地から救わせるためだけに、彼より歩幅が八倍も大きいイドを立ち止まらせていますしね。
僕の三人称視点は読みづらくなかったでしょうか。一応はイドとゴウトの物語なので視点を彼らからずらすことなく…………いや1話最後にレトロンへカメラ寄ってたな。もしも僕の脳内と読者の間でシーン描写のイメージが共有できていなかったら、単純に僕の筆力不足です、すみません。
それにイドとローグラの戦いが完全勝利に終わらなかったのも、シナリオの都合……と言えばそれまでではあります。イドとゴウトが合体し、ついでに村を焼いて安息地に物理的に帰れなくする理由づくりのためにはイドのスーツは暴走し、ローグラは大爆発を起こすのが最適解だと思いました(ウルトラマンオーブの影響じゃないの? と聞かれた場合「そう言われたらその通りかもしれない」と答えます)。すべての物事がプラスに働いていくエンターテインメントの原則に従わなかったことは反省します。
少し言い訳をさせてもらうと、そもそも異世界転生を担当するだけで自分で戦ったことのない女神が圧倒的暴力を手に入れて「これでとどめだ!」って初めての必殺技を使ったとして、一発で制御できたらそれ奇跡っぽくないですか?
なんかもうエイって蛇口を捻ってトリガー押しっぱなしにしたら、ホースからものすごい量の水があっという間に噴出しちゃった…………ってなりません?
しかしこの物語はこれっきり終わってしまうと今は考えているので、しなくていいのに、わざと外世人レトロン再登場のために用意した彼の郷愁エネルギー回収フラグと「あの爆発の寸前で救出しました」の可能性(おいおい、という声が聞こえてきそうです)、鷹の目を持つ生スーツが暴走したのもレトロンの企み、実験室のフラスコごときが並行世界のみならず天界そのものを脅かす可能性、そして先述のイドのトラウマが最悪の敵として帰ってくる展開などは案として提示するにとどめます。こうなったら面白いよね、ベタだけど……みたいな。
最後に、「他の女に私の勇者を取られたくないからと自身が守護する勇者を女体化したり、一体化して女体化したり融合しようとするヤンデレウルトラマン系女神様」という素敵な妄想ツイートを発信したフォロワー氏(直接の名指しは回避いたします)に敬意を。そのものとまでは行かなかったですが、自分でも心の内に求めていたウルトラシリーズ風小説を書き上げることができて、眠気が吹き飛ぶほど楽しかったです。
長文・乱文失礼致しました。
2022年7月11日 ゾーフィのソフビに一部始終を見守ってもらいながら 七峰らいが
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