閑話 先輩は達観していた。

私がオペレータとして働いていた時に、先輩と彼女とか欲しくないの?という話しになったことがあった。


酷く軟派な話だと思いつつも、私は「欲しいと思ったことがないし、何が良いのか分からない。」と言うと、少しばかり複雑そうな顔をした先輩が「確かにね。」と言っていた。


余談にはなるが、私はよくも悪くも家族以外の女性と接点がなく、中学生の頃から今に至るまで殆ど女性と会話したことがない、確かに高校にも女子はいたし、専門学校にも女子はいたがあまり良い思い出がない。勝手に写真を撮られたり誰かが適当に言ったであろう私の噂話の詳細を聞かれた位だろう。それに加えて姉が凄まじく裏表が激しい人間なので他の女性も似たようなものだろうと今でも思っている。


私は先輩に身の上話を暇潰しにしたことがあり、先輩も多少なりとも似通った経験があることを聞いていた為、なんとなくだが思うことでもあったのだろう。

私も先輩も性質はオタク気質だ、私はニワカと頭につくが。


先輩は「片親だったからさ、子供とか出来ても幸せに育てられる自信がないんだよね。」と言っていた。私も真面とは言い難い境遇だったので、同感だった。


正直な所、私も姉も今後結婚できるか、と言われたら不可能という言葉しか出ないだろう。

なにせ自堕落な怠け者と性格が苛烈で口を開けば文句か罵倒しかでない女だ、よく職場でボロを出さないものだと本気で感心している。


無論、私がいた職場でも複雑な境遇が多かったため家庭持ちは疎か、彼女持ちすら居たら一週間位はその話題で持ちきりになるだろう。


私は先輩に「給料も対して貰ってる訳じゃないし、無理ですよね。」と軽く返しつつも先輩に逆に聞いてみた、すると意外にも過去にはいたらしい。


曰く、「いまいち何をして欲しいかよく分からない。話も要点がなくて噛み合わない。怒ってる理由が意味不明。」等々を言っていた気がする。一番嫌だったのは趣味に口を出されたことだったらしい。


普段感情を出さない先輩が、怒りを表に出していたしよほど嫌な思いでもしたのだろうなと考えていた。

面倒臭いから一生独り身で良い。と割り切っていた先輩が、諦観と無関心な表情をしていたのを忘れないだろう。

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