第2話 案内人・山田(うろ覚え)
「坂田くん、ステータスはきちんと取得できたかい?」
新人研修担当の山本は、心の内で苛立っていた。よりによって金曜日の夜に初ダンジョン探索という迷惑極まりない行為を仕掛けてきたスーツ姿の小僧のお守りをせねばならなかったからだ。給料を貰っているからなんとか案内はしてやろう。ただ酒飲んで来んなよ、迷惑だなぁ。常識も知らねえのかよ。そう憤っていた。
しかし山本は一応プロの案内人である。微塵もそのような態度を見せず、クソガキに尋ねた。
「あ、はい。なんか呆気ないっすね(笑) なんでもっと早くダンジョンに行かんかったのか後悔するレベルっすわ(笑)」
先程まで真っ青な顔をして吐きそうだった青年は、未だに顔は薄ら青いがステータスを得たことで調子に乗っているのか、ダンジョンに入る以前より饒舌になっていた。
「……ハハ、そうかい。ところで坂田くんはレアな天職や固有技能をゲットできたのかい?」
そのことになおイラッとするが、山本はもしかしたらこのガキはレアな天職や固有技能を持っているかもしれないと思い直した。もしコイツがレアでユニークな存在なら何かに利用できるかもしれないのだ。聞くだけならタダという言葉もある。
ならば聞いてしまおう。そして、もしコイツがレアだったならば。確実に全てを聞き出してやろう。
「あっ、ハイっす。俺の天職は……」
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「あっ、ハイっす。俺の天職は」
秀は未だに怖気が抜け切らない中、必死に無い頭を巡らせていた。自分の天職及び固有技能をそこの中年オヤジになんと伝えようかと。
そもそもの話、自分が
阿呆の癖に様々なことを勘案した結果、嘘をつくことに決めた。
「
さて奇術師の固有技能を何にするか絞りきれなかった秀は、系統という便利な言葉で誤魔化した。その際、なぜハッキリと言葉にしないのかを誤魔化すべく、あまりハッキリと言葉にしたくないような、しかし絶妙に聞きたくなるような雰囲気を醸し出す演技もした。そして秀にはこの演技が必ず上手くいくという謎の自信があった。
「へー、
「へへっ、あざっす(笑) ……あ、それより、もう今日のダンジョン体験はいいんで帰っていいっすか?」
「あぁー、もう満足しちゃった感じかい?うぅーん、一階層の魔物ならステータスを取得した段階でも普通の人なら文字通りワンパン出来るから、多分君も固有技能を上手く使えれば簡単に倒せると思うけど……」
「いやぁ、どうっすかねえ……」
「
「いやまあさっきも言った通り
「ははは、術師の天職を貰った人は大概秘匿体質だからね。まあ
「あー、全然違うっす……。それよりもう帰りません?」
「分かった分かった(笑)。それじゃあ帰ろうか!」
「うっす!」
秀の持っていた自信が本当に謎であった瞬間である。確かに案内人から固有技能について探られたが、その詳細までを明らかにしようとはしてこなかったのだ。秀は案内人程度と内心侮っていたが、山田(うろ覚え)侮り難しと評価を改めることとなったのであった。
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歩数にして数十歩で魔宮から帰還した秀は、案内人に感謝の言葉を述べ、そのまま受付でステータスを取得したことを伝えた。そしてそのまま冒険者本登録を行い、プラスチックでできた茶色のG級バッジを受け取った。
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新規冒険者登録……仮登録
冒険者本登録……本登録
ステータス前回ver.
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名前:
年齢:22歳
性別:男
天職:ヒール
固有技能:【転移】
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ステータス仮作成ver.
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名前:
年齢:22歳
性別:男
天職:ヒール
レベル:0
〈能力値〉
体力:G
筋力:G
器用:G
魔力:G
知力:G
精神:G
固有技能:【転移】
───────────
さらに改善点などがありましたら是非ともご教示ください。
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