『天職:ヒール』

今日から俺が勇者

ステータス取得篇

第1話 俺と転移と聖人と

『ダンジョンに初めて入った時にステータスを入手できる。』


今ではごく当たり前のことだ。地球にダンジョンが出現して早1年。今ではステータスを持っていない人の方が遅れている。


そんな風潮の中、「絶対に死にたくないから、そもそも危険に近寄りたくない」という至極当然の理由でダンジョンに入らなかった男がいる。その男の名は『しゅう』。とある理由キラキラネームだった為で改名し、以後、さらに険悪となった両親との関係を断つために、公式の場以外では苗字を名乗ることを辞めた男である。


秀は大学生である。しかも大学四年生であり、現在は三月。無い内定のまま本日の卒業式を迎えてしまった悲しき怪物である。まだ今日という日が続いている限り大学生と名乗る気満々の秀は、居酒屋で独り、しこたま酒を呑み、蕩け切った脳味噌で新卒での就職を諦めることを決断した。


この決断は、人類には小さな一歩かもしれないが、秀には途轍もなく大きな一歩であった。


大きな決断をしたことで悪酔いした秀は、周辺の席の客に絡みまくり、店員から強制退去させられた。秀、人生で初めての出禁の店である。


不貞腐れた様子の秀は、小石を蹴りながら帰路に着く。足下で小器用にドリブルしたかと思えば、誰も居ない場所のむけてシュートしてみたり。因みにこの男、小中高大の全てにおいて部活動なるものに参加したことはなく、帰りの道中はひたすら一人遊びに興じていたメンタル強者である。そのため石蹴り検定免許皆伝の実力者であり、白線から落ちない程度のバランス感覚を持ってるが故に、ピラニアに食べられたことは小学校低学年の一度を除き存在しないのである。他にも様々な称号はあるが長くなるので割愛する。


カツンカツンと乾いた音をたてながら小石を転がしていた秀は、何を思ったか突然進路を変えた。行き先は路地裏、ではなくそこを抜けた先にあるダンジョンだった。


死ぬのが嫌な秀であったが、酒の所為で思考がぶっ飛んでおりイケイケになっていた。なんか今日の自分は最強なんじゃないかと、突拍子もなくそう考えていた。


その結果がコレだ。酔いと興奮で顔が真っ赤になっている秀は、千鳥足のまま受付に向かった。そして新規冒険者登録を行なった後、係員に連れられてダンジョンの入り口前に立った。


そして事ここに至り酔いが覚め始めた秀は自身の迂闊さを呪った。


何が自分は最強だ。初代プリキュアだって二人揃ってようやく最強なのに、思い上がりも甚だしい。


顔を真っ青にして胃から迫り上がる酒を飲み下した秀は、係員の誘導に従い、震える足で魔境へと踏み入ったのであった。


この一歩は、人類には小さな(以下略)。


ダンジョンに入った途端、空気が一気に殺伐としたものに変わったことを持ち前のチキンハートで感知した秀は、早速とばかりに『ステータスオープン』と口に出した。


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名前:坂田さかた 魔王ベルゼビュートサタノルシフェル

年齢:22歳

性別:男

天職:ヒール

固有技能:【転移】

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名前の由来

麻呂魔王

シュ

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