悪魔を愛した水曜日

齊藤 涼(saito ryo)

第1話

 金魚が死んだ。お祭りの最後の日。縁日で掬った和金。弱っているから助からないかもしれないと言われていたけれど。五年も生きてくれた。毎日話しかけ少し前までは元気そうに泳いでいたのに。うたた寝をしてしまい目覚めると水槽の中で息絶えていた。白く濁った目が天井を見つめている姿が脳裏に焼き付く。この子はうちに来て幸せだっただろうか。星も影を潜める雨の中。赤い傘が一輪の花のように揺れた。誰もいない夜中の公園は何かがいそうな気がして振り返る。花壇の隅をスコップで掘り返した。ぬかるむ地面に靴の跡が残る。土に還った命はどこにいくのだろう。家に帰ると微睡が夢へと誘う。亡くなった金魚がこちらに来いと囁いた。美しくきらめく鱗。近づくと足を滑らせ冷たい水の中へと落ちる。

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