第107話密約締結、その歪みを正す者

ーーーーーーーーーーー


どうも、前書きお邪魔します、綴です。


コメントに異能に少し抵抗を感じてしまうというご意見を頂いたので、

その場面変化の際に予め、このマーク→☆

で示そうと思います!

(私の都合で随時過去の話も改稿してまいります。)


暖かくも厳しい意見にかなり助かってます!

ありがとうございます!



















ーーーーーーーーーーーー☆






「・・・やつか。」


風が吹いている。

その男一点に向かう風が。


ジジジジジジジジジジジ・・・・・



痺れる音とともに一反の細いマントが靡く。



「やつが歪みの根源・・・。」



















ーーーーーーーーーーーー




「・・・なんのつもりでこんなところに乗り込んできた。」


義賢には分からない。目の前の人物は相手勢力の総大将の弟なのだ。


そんなことは朱若にも理解できる。

だから、最初から本音でぶつかるだけだ。


「俺ははなっからそういう駆け引きとはの交渉のいろはは知らない。それにこれは交渉じゃない。」


「・・・どういうことだ?」


大事な部分だけはっきりと、結論だけ出鼻では提示しない。だからこそ義賢の示した疑問が次の提案の大胆さを偶然にも強調する。


「俺たちと共闘しよう、叔父上。」


「共闘・・・だと!?」


義賢には分からない。敵の最も近い地位にある少年がただでさえ敵の深層に乗り込みあまつさえ共闘を提案したのだ。


(なんと豪胆だろうか。いや、これが噂の神童たらしめん所以か。巷に出回るような表立った噂では無いものの裏でその真実に近い情報をやっと得られたのも尻尾を簡単に掴ませない。なかなか、これをただの少年と言えようか・・・。)


朱若は公式には初陣は果たしてはいない。

それは歳の問題でもあるが、あまりにもその力が異質であるが故に公にすると面倒なことが付きまとう。幼いからと朱若を利用しようと近づく貴族がいるかもしれない。

だからこそ、真実は近しい者たちにのみ知り口外を禁じてそのことを秘匿したのだ。


「なぁ、叔父上。俺たちは血縁関係だけでお互いを潰し合い、殺し合う。そうだろ?」


「そう・・・だな。」


否定できない。

残酷な運命だ。

源氏に生を受けた時からの運命。











「おかしいと思わないか?」










「え・・・」




故にその異質さが突き刺さる。


「考えてみればそうだろ?鎌倉党も千葉も三浦も奥州の藤原も・・・。昔こそ諍いがあったりもしたけど当主のもと血縁の者達が無償の信頼を担保に力を盛り立てているんだ。だからこそ彼らは大きい。一族で殺し合うどこかの間抜けな奴らと違ってな。」


「だが・・・ッ、戦わなくては殺されるのだ。」












「そんなの俺たちが組んでぶっ壊せばいいだろ?」






「なッ・・・!?」





必ずだ。彼の発言には言葉を失う。




「そんな、ことが・・・できるというのか・・・。」




義賢は知らない。

その方法が皆目検討がつかない。




「できる・・・。必ず・・・。」



しかしだ。不思議とだ。笑いが込上げる。




「ふふ・・・ふははははははは・・・!」




(そうか・・・なるほどな。これは・・・今までとは違うなにかが・・・いや、異質過ぎる意志が・・・源氏我らを変えようとしている。だからこいつの言葉には・・・)
















「残念だ・・・。全くお前の言っていることが分からない。」


「・・・ッ!」




目の前の朱若は悔しそうに悲痛に瞼を力ませ顔を顰めた。

これも源氏の血だろうかと思いながら義賢は譲らない。だからこそ、そのまわりくどさにその全てをのせて・・・








「だが、お前を無性に信じたくなった。」









「え・・・。」





「ふはは、すまんな。会って間もないが君には驚かされっぱなしで少し癖で出し抜きたくなってしまった。許してくれ。」


呆気に取られる朱若がさっきの言葉との差を感じる。やはり、異質であっても子どものようなあどけない反応には少し滑稽な気分になる。


「・・・。全くビビらせんなよ・・・。

こっちだって割と命かけて来てんだからさ。」


「あんなに余裕そうな出会いからは想像も出来んな。ふははははは!」


一本いつの間にか取られている。

朱若はそう思った。


「・・・ッ。まぁ、いいよ。とりあえずだ。重隆が兵の準備を始めたらすぐに俺に伝えてくれ。」


「さっきも信じると言ったが、信じても良いかな?」


図りかねるふりをする義賢に対してもう隠す必要も無い。


「これは俺の予想だ。多分義平兄者は既にそれを待っている。そんな気がするんだ。俺でも気づけてない何かが・・・。」


実はここ最近鎌倉への物流の流れが著しく向上していた。最初は義平から仕掛けようものと戦の準備でも始まったのかと思ったが、雰囲気はむしろ緩く鎧一つ見かけやしなかった。


(大幅な物流の変化が鎌倉一点に集中してる今、何も無いはずがない。)


「とにかくだ。よく注視しててくれ。特に重隆の動き次第では来月とかでも可能性はある。」


朱若にとっても大蔵合戦は1155年に起こったことは知っているとはいえ詳しい月日までは分からない。昔とは暦も違うし閏年もある。大体は初夏を過ぎたあたりぐらいと認知しているだけで、対策が非常に立てずらいのだ。


「わかった。何かあれば文をよこそう。出る時は裏口から出るといい。武蔵嵐山の麓へ繋がる抜け道がある。」


「りょーかい助かるぜ。じゃあ、源氏の再興と平穏を目指して・・・ほら」


朱若は手を差し出す。


「お前にかけるとしよう。」







二人の密約は握手を持ってここに成立した。











ーーーーーーーーーーーーー☆



草をかき分けてようやくけもの道に辿り着いた。


「ふぅ〜、忍び込んだ時より楽に出れたな。」


「この道は義賢様の息がかかった武士が管理していますがゆえ、行きこそは使えなかったもののこうして裏をとれば容易く出れましたな。」


この隠し道には小太郎も関心していた。


「ッ!?」


不意に感じる悪寒。

心の臓から指先の末梢神経に至るまで震えが走る。

おかしい。森の獣かと思った。

しかしだ。


(獣ごときに私が遅れをとるのか?)


それ自体が有り得ない。

そして、答え合わせは目前に。


「?お前誰だ?」


何も知らない朱若の前に人のような、だがしかし、人の風貌では無いなにかが立っている。

まるで、ここにくる自分たちを待っていたかのように。


「若ぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」


「え・・・?」


ドサッ・・・・


叫んだ時には遅かった。

まだあどけなさ残る主は既に地面に意識を手放し倒れていた。


(全然・・・見えなかったッ!?あの動きからして、首に峰打ちと言ったところか!)


「歪みの根源・・・。」


「何・・・?」


その風が一点に彼者へと吹く。


「貴様に用は無いから、ひとまず気でも失ってもらおうと思ったが・・・どうやら庇われたみたいだな。」


突っ伏した朱若を見てその者は冷たく言い放つ。


(そんな・・・若は私を庇って・・・ッ!)


「貴様は・・・何者なんだッ!」


霧がかった雑木林から赤い目の覆面。そして紫雲の大布が背中を覆う。


「・・・俺は、歴史の歪みを正す者。そして、歪みを正すために次元に囚われ彷徨う続ける者・・・。」


意味が分からない。

この者の言うことが皆目検討がつかない。


ふと思った。

主の突拍子もない考えの思いついた時に似ていると。






「名を・・・エイジ。しがない次元の戦士・・・。」



そう名乗りどこからともなく取り出した巻物をゆっくり、そして淡々と腰に付ける。














腰帯から響く電子音。


ジジジジジジジジジジジ・・・・!


その矛先は、間違いなく朱若へのトドメであった。

ゆっくりと歩み呟く。







「・・・覇昇脚。」









力が脚に収束していた。

腰を落とし、半身で膝を曲げ構え、

そして・・・








宙を舞う。





「わ、若様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」







反時計回りのきりもみ回転の形から踵にこめらた渾身の蹴りが朱若を襲った。

















どしゅうううううううう・・・・・

















・・・かに見えた。


「ッ!なかなかね・・・。」


その瞬間初めての狼狽を見せた。


「貴様は・・・」


「あら、同業者に近いようだけれど・・・似ても似つかずのところね。」


その少女の手には斬るにはむかない細身の剣。

上で整えまとめられた髪。




「ねぇ・・・とりあえずその子を連れて逃げなさい。」


「え・・・はっ!?か、かたじけないッ!あなたの名は・・・。」


小太郎は咄嗟のことに尋ねられるまで言葉を失っていた。


「そうね・・・その寝ている子に絶賛追われているのよねぇ。仙女ってとりあえず名乗っているわ。」


「なっ・・・!?あなたが件の!?」


「そう言ってる暇もあんまりないかも・・・」


必殺の踵と細身の剣が再び軋む。


「ほらッ、行って!」


「このお礼はいつかッ!」


朱若を背負い小太郎は武蔵嵐山を駆け下りた。






















ーーーーーーーーーーーーー



「なぜ邪魔をした。」


無機質だが、強い意志が現れた声色だった。


「まぁ、私の勘ってところかしら。」


「貴様らにとってもわかっているだろう。歴史の改変の禁忌は暗黙の了解、理への大罪だ。」


「知ってるわよ。」


「ならッ!」


そう怒りをこめても目の前の女は、揺らがない。


「だって"彼"だって手を伸ばして救えるなら歴史だって裏切るはずよ?」


かの者にはわからない。

守りたいものが同じはずなのに、こうして壊すことを容認するのは。


「あなただって尊敬してるのでしょう?私とあなたが彼を尊敬するのと同じぐらいにあの厩戸が言ったことを。」


「俺は俺の正義を貫くだけだ"あの人"の言葉を俺貴様のように曲解するつもりは無い。今回の俺の介入で歴史は著しくデフォルトに近づいた。ここは引くとしよう。」


「・・・。世界線は増えていくものらしいわよ。」


「何?」


「別に私達は本来の時間に叩き出されるだけで私達が望む未来には問題ないわ。」


「・・・それでも俺は・・・。」


「だけど、の残滓がこの世界にいるわ。」


「なんだとッ!?」


『あいつ』と呼ばれたその名乗りすら忌まわしいもの。そして凶悪な何かに気づき覆面の下が手に取るように分かるような動揺。


「どうにも大方この世界から力をつけて私達のところを壊そうとするはずね。まだ、小さいから分からないけど貴方なら戦う理由、あるんじゃない?」


かの者は腰の巻物を外す。


ジジジジジジジジジジジ・・・


「・・・考える。」


再び森の中へ消えていった。


「はぁ〜、全く・・・私も初めて会ったけど彼も厩戸うまやとも重たい子を育てちゃったわね・・・。」


森の中で仙女の独り言は溶けていった。











ーーーーーーーーーーーーーーー


こんにちは、綴です。


次話の投稿は来週の平日を予定しています。


また、大蔵合戦編は120話で完結予定です。

121話から保元の乱編を始める見込みです。


もし、気に入って頂けたら、応援、星レビューよろしくお願いします!


また、気になることがあれば気軽にコメントしてくれると嬉しいです!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る