第106話斎藤判官の葛藤、絡まる狂想曲
「どうすれば良い・・・。」
斎藤は揺れていた。
愚問だが、それは義賢を裏切り朱若に走るというほど単純なことでは無い。
「どうする・・・重弘殿と重隆に担がれた義賢様の衝突は絶対に避けねばなるまい・・・。」
そう、彼には彼だけにしか望むことのないエンディングがあった。
(こんなことで秩父党も源氏も力を失ってはいけないのだ。武士として憧れた源平を彩った名将達・・・。私のように憧れるような彼らが未来後世に憧れとして受け継がれ続けなければ・・・。)
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「なるほどね。斎藤判官はそんなこと考えてるんだ。」
「はい、若のお考えとはかなり近いものがあります。」
小太郎の言う通り斎藤と朱若の考えはかなり近い。斎藤にとってはこの先の未来を見ても不透明に感じるが、朱若にとっては頼朝による兄弟粛清の阻止という未来まで見据えたものがあるかないかでしかない。
「小太郎が本気を出せば結局出し抜けるのも楽勝なんだな・・・。」
「ええ。あの時は同業者も日ノ本にはいませんから少々油断していたのかもしれません。武士であれ、どこに現れるかさえわかって待ち伏せておけば我らとの邂逅はさほど難しくはありませぬ。ですが、それなりの腕は・・・要求されますがね。」
やはり、風魔党は只者の追随を許さないようだ。
(・・・そうだ!)
「いいことを思いついた!」
朱若のにやけに小太郎も悪戯に乗らんとする悪い笑み。
再び二人の悪巧みが始まった。
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大蔵館
(まったく・・・私は一体何をやっているのだ・・・。)
義賢は動き出した秩父党の中に未だくすぶらざるを得なかった。
何せ、重隆の独善的な組織ではあるものの組織としては常に一本化されていて部下達を寝返らそうにも上手くいきそうにない。
(それほどまでに、重隆の支配はよく浸透しているということか・・・いや、もしくは先代からの支配体系によるものかもしれんな。)
重隆は姑息ではあるものの策略にはそれなりに心得ている。
しかし、親の寵愛だけでは北坂東の一部に大勢力を持つ秩父党の党首にはなれない。
秩父氏が代々先祖から受け継いできた伝統がそれを可能にしているのだろう。
(大方、先代による次代への引き継ぎがしっかりなされているからこそ秩父党は天慶の乱(平将門の乱)以降百年以上続いているに他ならないな・・・。)
「む・・・。」
「これはこれは、義賢様ではありませぬか。」
この媚びいるようなあからさまな擦り寄る姿勢。嫌悪感しか感じない。
「重隆か。」
例の悪漢、いや、漢と呼ぶのさえ腹立たしいその男はここにいた。
「最近、義賢様は酷くおつかれのようですなぁ〜。戦は我らに任せてこの屋敷でずっとくつろいでいて良いのですぞ?」
(こやつ・・・だんだん隠す気が無くなってきたようだな・・・クソッ!)
悟られるように袖のうちでは拳に力が入る。
「まぁ、今後も困らぬように万事養ってあげ・・・ってイイッ!?」
突然重隆の頭に石がぶつけられた。
義賢もこれにはさすがに動転する。
(なんだ!?いきなり重隆にどこからともなく石が落ちてきたが・・・)
「だ、誰ぞッ!こんなことをするのはッイイッ!?イダっ!?くぅ・・・くそぉぉぉぉぉ!!!」
頭を抱えながら無様に逃げていく様に思わず笑みが零れてしまう。
「ぷッ・・・くくく、あ〜愉快愉快!誰ぞ?何者かは知らぬがスッキリした。感謝申し上げる。」
義賢は忍んでいるからこそ返事は期待せずにお礼を言った。ただ、言いたかっただけだ。ここ最近上手くいかない自分の中で少しだけスッキリした。そういう素直な気持ちだった。
「いいっていいって。俺もムカついたしさぁ。ていうか!なかなかなやられぶりだったね。重隆ってかなりのかませ犬なんだな。」
「え・・・!?」
予想外の返答に義賢は声のする天井に顔を上げる。
「そなた・・・は?」
そこには天井のハリに腰掛ける少年と跪いてかしこまった黒ずくめの装束の男。
驚いて尋ねる義賢に少年は愉快な笑みを作って告げる。
「俺は源朱若。あんたの兄義朝の四男。初めまして、だな。義賢叔父上。」
「そ、そなたが・・・兄上の神童・・・。」
固まりつつも固唾を飲んで真剣な面持ちで望む義賢に再び投げかける。
「さぁ・・・これからの話をしようか。叔父上?」
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どうも、綴です。
投稿が遅くなって申し訳ありません・・・。
ですが、毎週二話投稿できるように更新していきますので決心投稿は連絡しない限りは途切れないのでご安心ください。(作者はしっかり生きてます。)
一応、週末にはもう一話更新出来たらと思っていますのでぜひ気軽に覗いて見てくださいね。(事情がある場合は最新話に加筆致します。)
もし当作をお気に召して頂けたら応援、星レビューしてくれると嬉しいです。
また気になることがあれば気軽コメントへ!
あなたの言葉が作品をよりよくさせます!
厳しめでもいいので反応して頂けると成長出来るのでもしあればお願いします!
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