第2話・視えない彼女〔サッカー観戦で視えない〕


 SE・サッカー場、歓声、試合終了のホイッスル


T「試合、負けちゃったけれど楽しかったね。映像では見たコトあったけれど、本当に人間が走り回って足でボールをゴールに蹴るんだ。

どうしたの? 沈んだ顔をして……サッカーをやめちゃったコトに後悔を感じたって。

そっか、あのね『世の中は決断と選択の連続だよ何かを選べば、もう一方はその時は捨てなきゃならない』

だけどね『選択に完全な正解なんてないよ』……その時の自分の選択が一番いい選択だって信じるしかないから。

『仮に間違っていても、その間違いを教訓にして、次の選択に生かせばいいんじゃないかな』……あはっ、これはパパの受け売りだけどね」


T「少し元気でたみたいだね……あたしのコトも少し見えてきたかな? お腹は空いていないよ、あたし何も食べなくても大丈夫だから……いやだぁ、あたし幽霊じゃないって。ずっと幽霊だと思っていたの? 違うよあたし生きているよ。

今日はこれで帰ろうか……また明日、明日は学校だからダメだって? 大丈夫だよ、学校でも会えるよ」


  ◇◇◇◇◇


 視えない彼女〔学校でも視えない〕


T「へえ~これが、学校の図書館か。電子データじゃなくて紙媒体なんだ……大丈夫だよ、あたしの声は君にしか聞こえないから。

お昼に教室でおいしそうな、お弁当一人で食べていたね……見ていたよ、少し離れた位置から君のコトを。健康が心配だから、お弁当の野菜も食べなきゃダメだよ栄養のバランスが片寄っちゃうよ。

えっ!? 余計なお世話、そ、そだね」


 SE・カミナリのゴロゴロ音、直後に雷雨音


T「あっ、雨……気候変動はじまっているね、まだメチャクチャな気候変動じゃないね、一日の内に真夏日と冬日じゃないから……午前中は蒸し暑くて半袖の汗ダラダラで、午後になると肌寒くて氷点下で雪は降って積もらないから……ねぇ、校内を案内してくれないかな、見てみたいの」


 SE・生徒たちが雑談をしているような笑い声


T「学校に結構、生徒が残っているね……少し驚き、マイクロチップ処置室はどこにあるの? えっ!? そんな場所知らないの……ほらっ、体に埋め込まれたマイクロチップを、誕生日にアップデートする部屋だよ……本当に知らないの? そっか」


 SE・雷鳴音、カミナリが落ちる音


T「きゃあっ!? ピカッと光った驚いたぁ、自然の生のカミナリって、あんな感じなんだぁ……君はカミナリに撃たれたコトなんてあるの? あるワケない、カミナリに撃たれていたら死んでいる…だよね、あたしカミナリの本当の怖さは知らないから……なに、その顔?」


T「あたし何か変なコト言ったかな? 一旦、図書館にもどろう……あそこで大切なモノを見つけないといけないから」


  ◇◇◇◇◇


 学校の図書館2


 SE・棚に並んだ本が落ちる音


T「あちゃ、本が床に落っちゃった……どうして、本に触れたのかって? あれ? 本当だ、どうしてだろう? モノに触れる時と触れない時があるのかな? 時間的な何かとか……さっきの、カミナリが影響しているのかな? 不思議」


T「えーと、海外のSF小説で古典のカテゴリー分けされている棚はと……あれ? ないなぁ、あっ、そう言えば本棚と壁の隙間に落ちてホコリを被っていたって言っていた……えーと、そうなると。ここらの棚の裏側に……あっ、あった! すごいホコリまみれ」


 SE・本のホコリを叩いて払う音。


T「けほっ、いったい。いつから挟まっていたのよ……この本、はいっ、この本読んで『タイムマシン』ってタイトルの古典SF。

必ず君の役に立つ時が来るから……ちゃんと読むんだぞ。

君の人生を左右する大切な本だから……今日はもう帰らないと、次は夏の海に行ってみたいな……連れて行ってくれないかな」

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