第7話
自然公園、あるいは自然運動公園というのが遠足の目的地である。少々難しい漢字の固有名詞はあるのだが、そこにいる誰もが気にしてはいなかった。自然がたくさんある公園という漠とした印象だけで、十分に通用していた。
土埃を巻きあげた六台のバスが未舗装の駐車場へと、きれいな車列を組みながらやってきた。それぞれ体型も顔の形も異なるバスガイドたちが、忙しそうにピーピーと笛を鳴らしながら一台一台、所定の位置へと誘導する。すべてのバスが停止したところで、降車となった。
「よーし。それじゃあバスの前に集合しろ」
ワイワイガヤガヤとはしゃぎながら、児童たちがバスを降りた。三年生全員がいったんバスの前に整列すると、学年主任からのありがたい励ましと、学校行事では必須となる過分な長さの注意事項が言い渡された。
「ちっこ、ちっこもれるう」
バスの中で水をガブガブと飲み続けた小太郎は、小便袋をパンパンに膨らませていた。早く便所に行きたいと思っていたが、よく晴れわたった青空のもと、学年主任の果てしない話は続いている。
しゃがんでいると小便が突破しそうになるので、小太郎は中腰のまま、額に脂汗を垂らしながら聴いている。
みんながしゃがんでいる中、一人だけ挑発的な姿勢で前方を睨みつけていた。角刈りの学年主任は、整列の指示に従わない生意気な児童を、あとでこっぴどく叱ってやろうと心に決めながら拡声器を握っていた。
「それでは気をつけて楽しんでください。けして、他の人には迷惑をかけないように」
角刈りによるムダに長い話がようやく終わり、各クラスの担任が児童たちを立たせた。それぞれが簡単な指示を与えると、一組から順に公園へと歩き出した。
その自然公園は山間の丘陵地を切りひらき、だだっ広いだけの土地に芝生を植えて 池や小川を造成し、さらにいくつかのアスレチック遊具を設置して、憩いの場として整備されていた。市が運営していることもあり、学校関係の遠足には定番の場所なのである。よほどの広さなので、二百人以上の子供たちが押し寄せても、窮屈に感じることはなかった。
自由行動になると、小太郎は便所へと猛ダッシュした。甲虫の死骸だらけの汲み取り便所はひどいニオイだったが、いつも使用する近所の公園も似たり寄ったりなので、臆することなく放尿を始めた。
「出る出る、ああ~、とまらないよう。な~してなの~」
水筒にあったすべての水を飲み干してしまった。そのために、溜りに溜まった小便の水量と勢いは、ビールをがぶ飲みした後の成人男性なみである。
「小太郎、早くしろよ。もれちゃうよう」
その広大な公園には便所が一つしかなかった。バスの中で水分をたらふく摂り、膀胱を膨らませたのは小太郎だけではない。三つの便器に対し、数十人の小便小僧たちが列をなしていた。のんびりと放尿することは、集団の不和を招くのだ。
「こったろー、キイックーー、キックーっ」
「ああ~、もう~、な~にすんの~。やめて、や~め~て~」
後ろで小便を我慢していた男子が、腹立ちまぎれに小太郎の尻へと蹴りを入れた。あと少しで残量を出し切れたのに、その度重なる衝撃で小さなつぼみが右に左に上に下にと揺れた。
「うっわあ、きったねえ。ションベンがこっちゃにとんできたー」
隣の便器で小便をしていたのは五組の男子だ。小太郎のことはほとんど知らないが、手の甲に生温かい滴が当たってしまい、それは生涯にわたって忘れられない出来事となった。
「うわ~、はや~くー、やくはやく~でて~」
背後からの容赦ない攻撃が、小太郎の排尿終了を困難なものにしていた。焦るあまり、しずくがポタポタ滴っているのにズボンとパンツをあげてしまい、十ccほどの液体が股間のあたりを温かく濡らした。
とにかく小便を終えた小太郎は、逃げるように便所を出て人の気配がないところまで走った。ジャージの股間部分に大きなシミができている。明らかに小便を漏らしたのがわかってしまうので、ズボンが乾くまで一人でいる作戦なのだが、少年はいつも一人なので、じっさいはふだん通りの状況となっただけだ。
「みず~」
水筒の中は空になっていた。生命にとって水の欠乏は死活問題となるので、小太郎は水の補給を気にしていた。股のびしょびしょが乾ききるのはまだまだ先なのだが、優先事項を片付けなければ落ち着くことができない。
三年生の児童たちは、広大な自然公園内に散らばって遊んでいた。それぞれ気の合うもの同士グループになって、あっちへこっちへ駆け回る。やはりアスレチック遊具は人気であり、女子も男子もたくさんの子供たちが、まるで蜜花にたかるアリのようにくっ付いていた。
水を探してさ迷う小太郎は、ようやく水源を見つけることができた。さすがに人里離れた山間部なので水道は通っていないが、井戸水をくみ上げる手押し式のポンプがあった。
「こ~れ~、うごかな~い~」
だが、その年代物のポンプは子供には扱いにくい設備だった。全体的に重厚な造りで、鋼鉄製のレバーはただでさえ重く、さらに錆びついているのでとても動かしづらい。
小太郎は両手で握り、圧しかかるようにレバーを押した。すると、蛇口からひと塊の水が吐き出された。急いで水筒で受けようとするが、レバーから手を離しているので、その時には水量が止まってしまう。水筒をいったん地面に置いて再びレバーを押すが、そうすると水の勢いが水筒をはじき飛ばしてしまって、うまく入らなかった。何度か同じ動作を繰り返すが、いつも失敗してしまう。
「ボンズ、んなことやってたら、日い暮れてしまうべや。ワシが出してやるから、ほれ、ほれ」
小太郎がマヌケな子こどもを演じていると、どこからともなく男が現れて、ポンプのレバーを押し下げてくれた。右腕だけでレバーを握っているが、まるで重さなどないような軽い動作で上げたり下げたりしていた。
「あ~わあわわあ」
大量の水が湧き出してきた。小太郎は慌てて蛇口の下へ水筒を構えるが、吐き出される水の直径と勢いがありすぎるために受けきれなかった。手元はもとより、腕や下半身、お腹の部分など、ほぼ全身に近い範囲が濡れてしまった。
「どうだ、いっぱいになったか。ここの水は山のだから、なんまら美味えんだぞ。ちょっと飲んでみれや」
少年が濡れネズミ状態になっていることなど気にすることもなく、男は得意気な笑顔で、そして大声で言った。怪しげな中年男にほらほらと急かされるままに、小太郎は水筒を口に当てて、あふれるばかりの水を飲んだ。
「ん~、」
不味いと思っていた。小太郎はいつも公園やスーパーの便所の水を飲んでいる。家庭用の水道水と違って、そういった場所の水には独特のエグ味があったり、薬臭い場合が多かった。普段から美味しい水など飲んでいないが、ここの井戸水の味は、その鍛え抜かれた舌咽神経をひどく落胆させ 嚥下運動を存分に躊躇わせていた。とにかく、猛烈に金属臭いのだ。
「どうだ、うんまいだろう。ボンズ、友だちにも飲ませてやれや」
ねずみ色の作業服で、やはりねずみ色の帽子をかぶり、でたらめな歯並びを見せつけながら、男はニヤリとした。
「ああ~、ん~、でも~ね~、んん~」
「なんだ、ボンズ、友だちいねえのか」
「ん~」
友だちという言葉が引っかかってしまった。あんこのたっぷり詰まった中華まんじゅうや熱々のラーメン、肉の入ったカレーなど、小太郎があこがれるものは数多いが、友だちという存在も、じつはその一つなのだ。
「・・・」
小太郎に友だちはいない。孤独には慣れてはいるが、その事実を指摘されることには鷹揚ではなかった。小さな呼吸を繰り返しながら、オロオロとしている。
「まあ、どうでもいいやな。考えてみればワシも一人だ。いっつも一人だったべや」
シミとほころびだらけのジャージを着た貧相な少年は、友だちとワイワイやるようには見えなかった。おそらくイジメられているか、誰にも相手にされていないのだろう。家も相当な貧困家庭か、過酷なネグレクトが予想される。男は小太郎にまとわりついている難儀を察した。
「ボンズ、ヒマかあ」
「んん~、えへへ~。なんで~」
「ヒマならなあ、おじさんを手伝えや。おんもしろいぞ~」
もちろん、小太郎は暇すぎる小学生である。男の言い方には良いことがありそうなニュアンスと親しみがあったので、痩せっぽちな胸が少しばかりときめいた。
「おしおし。あとで、いいもんやるからな」
「ん~、じゃあ~、ちょっと~だけね~」
作業服の中年が、来い来いと手招きしながら歩き出した。水筒をカバンにしまった小太郎は、なんの疑いもなく男についていく。遠足にきた子供らしく、やっとワクワクし始めることができたし、多少照れくさかった。
フンフンと、男は調子よく鼻歌を奏でていた。作業服の尻ポケットから手ぬぐいが垂れ下がっているのだが、それが大概に汚くて臭そうで、小太郎は親近感をおぼえた。孤独で貧乏な大人もいるのだなと、どことなくホッとした思いがあった。
しばし歩いて、二人は自然公園内の管理小屋にやってきた。じつは、ここの管理人というのが男の職業であった。通常、この人里離れた場所を訪れる客は多くても数組であり、来客がまったくない日もある。それが今日は百人単位で押しかけているのだ。がぜん職業意識に燃えて、張り切らざるを得ない心境となっていた。
「よっしゃ。まずは東側から攻めるか」
管理人は、小屋の中から巨大なズタ袋を引っぱってきた。袋というにはあまりにも大きいので、抱えることができない。
「ほら、ボンズにはこれな」
小太郎にあてがわれたのは、小さなズタ袋である。管理人の巨大袋は使い古されていたが、小さいほうは新品であった。生地の香りが、ほのかに匂っている。
「とりあえず、水飲んで気合入れていくべや」
小屋の出入り口の脇にもポンプがあった。男がレバーを押し込むと、雑なモルタル塗りの流し受けに、じょぼじょぼと水が落ちた。アルミカップが紐で繋がれており、その最後のほうの流れを掬い取ると、さも美味そうにゴクゴクと飲んだ。
「ボンズも飲めや」
小太郎の番となる。凹みだらけのアルミカップを握ると、管理人がレバーを押して水を出した。一瞬でカップは満水となり、ついでにジャージの袖口もびしょびしょに濡れた。さっき水分補給したばかりなのでまったくノドは渇いていないのだが、断る理由が見つからず、仕方なしに飲むことにした。
「んん~」
先ほど飲んだ水よりも、さらに金属臭くて不味かった。口元をへの字に曲げた小太郎がカップを元の位置に戻す。管理人はすでに背中を向けて歩き出していた。例の巨大ズタ袋を引きずりながら、意気揚々とである。
「ああ~、まってえ~」
小太郎も後を追って歩き出したが、数メートル走ったところでズタ袋を忘れていることに気づき、一度引き返した。そして、それを抱えて男の後に続いた。カバンは小屋の脇に置いてきた。二人は自然公園の中を、東のほうに向かった。
「よし、ボンズ。じゃあな、おじさんのマネするんだぞ。いいことするんだからな。胸張っていくぞ」
「うん~ん」
管理人の男は、まず手始めに野外に設置されたゴミ箱の中身をあさり始めた。手を突っ込んでゴミをつかみ取り、自分が引きずっているズタ袋へと移し替えていた。素手である。
「ボンズは体がちっちゃいからな、ゴミ箱は、まあ無理だなあ。大人になったからのほうがいいべあ」
管理人は仕事であるゴミ収集をしているのである。小太郎は彼の言うことを、いちいち頷きながら聞いていた。楽しいはずの遠足での孤立というのは、子供にとっては耐え難い苦痛である。その悪夢のような状況から救ってくれるのが、この冴えない中年男なのだ。小太郎が孤独な状況を脱することのできる唯一の綱であった。
遠足の際のゴミ片づけに関しては、学校のほうから児童たちに厳しく指導はされている。しかし、二百人を超える人数がすべて順守することはありえない。中にはそのへんにポイ捨てする不届き者もいるし、不意に風で飛ばされてしまうこともある。おもに駄菓子の包装紙であるが、広大な敷地内の、あちこちに散乱しているのが現状だった、
管理人はそれが仕事であるので、自然公園内のゴミを集める。小太郎も、まるでゴミ集めが毎日の習い事のごとく、不平を言わずに黙々と作業していた。なにかに集中していると孤独を忘れるし、現に少年は一人ではなかった。ゴミ集めという共同作業は、たとえそれが汚れ仕事であっても充分な満足感を与えていた。
「ん~、あ~る~。ここにも~、あるよ~」
小太郎はゴミを見つけては拾い、ズタ袋に入れることに夢中になっていた。
「ボンズ、その調子だ。いいぞいいぞ」
少し離れたところから管理人が調子よく褒めるので、小太郎はますます張り切り少年となっていた。まるで落ちているゴミが掘り出し物であるかのように、目を輝かせて地面を見つめるのだ。
「小太郎、なにしてんの」
作業に没頭するあまり、小太郎はクラスの男子連中が固まっている場所に足を踏み入れてしまった。ちょうど駄菓子の大袋が風で吹き飛ばされて転がっていた。これは大物だと、喜び勇んで拾って、ニンマリとした時だった。
「うわあ、小太郎がごみカス食ってるぞ。ゴミ星人だ」
「ごみごみごみごみたろう。うっひょー」
「ごみレンジャー、こたろうー。ばんばばばんばんばん」
貧乏少年がゴミを集めている理由は、お菓子の残りカスを漁っているからだと認識されてしまった。まったくの誤解であるが、小太郎はどうのように言い訳してよいのかわからない。数秒間オロオロしたあと、ん~ん~と唸りながら立っているだけだった。
「おれ、先生よんでくる」
よせばいいのに、一人の男子が担任教師のもとへ突っ走り、小太郎が奇妙なことをしていると告げ口した。バスガイドに軽くあしらわれて暇を持て余していた担任は、なにか面白いことでもあったのかと珍しく反応した。どこだどこだと、眉間にシワを寄せながら走ってきた。
「藤原、おまえなにやってんだ」
担任教師は、小太郎が誰かの食いかけのお菓子を盗んだのだと勘違いしていた。もしそうであるなら、相応の罰を与えてやらなければならない。いい退屈しのぎとなると、嗜虐心が疼いていた。この虚弱な男子を多少痛めつけても、どこからも苦情が出ないのを十分に理解していた。
「ちょっと、その袋の中身を見せろ」
小太郎が頑張ったために、ズタ袋の中身はけっこうな量になっていた。きっとその中に、犯罪の証拠が詰まっているのだろうと決めつけていた。
「ん~。だって~、んん~」
だが小太郎は拒否の姿勢を示す。ズタ袋を、さも大切なモノが入ってあるかのように抱き抱えて離さない。
「いいから、よこせ」
「いや~、いや~、んん~」
担任教師の手がズタ袋を引っぱるが、必死のイヤイヤで防戦する。小太郎がこんなにも頑なになったのは初めてだった。
いつもは、まったく声を出すことのない死んだような児童なのに、今日に限って思わぬ抵抗を見せていた。担任教師は、大人のプライドを愚弄されたと感じた。意地の悪い鬼が心の底から這い上がってきて、彼の脳内で黒いスイッチを弾いた。
ゴツンと、力強いゲンコツが小太郎の頭上にさく裂した。それはバスの中で受けた運動量よりも幾分小さかったが、中指の尖った関節がちょうど渦巻きの真ん中にめり込み、鋭さは倍であった。
あまりの痛さに小太郎はズタ袋を離した。殴打された箇所を両方の手のひらで押さえながら、殺虫剤を噴霧されたハエのごとく芝生の上を転げまわった。他の児童たちは、同級生による本気の苦悶を見て肝を冷やし、自分でなくて本当によかったと胸をなでおろしていた。
「チッ、なんだよ。ただのゴミじゃないか」
ズタ袋を拾い上げた担任教師は、中身を芝生の上に全部ぶちまけた。お菓子の袋が大量に出てきたが、それは使用済みのゴミであり、残念ながら犯罪の証拠を示すものではなかった。
「ちゃんと片づけとけよ」
子供たちが自分を楽しませてくれないとわかった教師は、ようやく立ち上がった小太郎にそう命ずると、どこかへ行ってしまった。
「んんんん~、んん~、うええ~、うえええ~~ん」
小太郎が泣き出した。大きな声で、大量の涙と青っ洟を垂らし、顔中くしゃくしゃになりながらの号泣であった。その鼻水混じりの湿った泣き声は、快晴に包まれた乾いた丘陵地によく響き渡った。
あまりにも大仰に泣くので、その場にいた級友たちは不安な気持ちになった。自分たちのからかいが原因で修復不可能なダメージを与えてしまったのではないかと、気弱な何人かがソワソワしていた。小太郎の声がさらに大きくなると、居たたまれなくなった集団は、一塊になって逃げてしまった。
ワーワーと泣き喚きながら、小太郎は足元に散らばったゴミを集め始めた。駄菓子の袋を拾っては、時々、その残り香をクンクンと嗅ぐ動作をしている。お菓子に対する切望が無意識的な反射を促しているのだろう。涙でふやけた瞳は、あくまでも虚ろであった。
まき散らされたゴミは、すべてズタ袋の中に戻された。涙と鼻水でべっしょりと濡れた袖口が、乾いた陽光を受けてキラキラと反射している。たくさんのゴミを何度も触った手は、香ばしいようなまたは甘い果実のような、なんとも形容しがたい複雑なニオイがしていた。
小太郎がようやく泣き止んだ頃合いを見計らって、管理人が近づいてきた。この男は小太郎が級友たちにからかわれたり、担任教師に叱られる様子を、少し離れた場所で当人の視界に入らないように見ていた。
「ボンズ、じゃあな、今度は向こうの遊具のまわりをやるべや。ボンズの袋はいっぱいだから、こっちゃの袋に入れろや」
心が傷ついた小学生の慰めかたなど知らないし、そもそも人との適度な接触もない半分世捨て人みたいな男である。気の利いた言葉をかけるよりも先に、小太郎を号泣させる原因となった行為を続けるように言ってしまった。
「そんなあ~の~、もう、いい~、んんー、んー」
小太郎は、遠足で級友たちのゴミ集めをしている自分の不可解さに気づいてしまった。みんなが楽しんでいるのに、どうしてゴミ拾いなんてしているのだろう。お昼のお弁当も理不尽に取られ、しかも二度も体罰を受けてしまった。やるせない気持ちを通りこして、絶望にまで達していた。
「うええ~~~んん~」
再び号泣し始める。今度は体を左右に振らして、親にぐずる子供のように、自らが陥っている不条理さをアピールする。さすがに自分の仕事を手伝わせてしまったのはマズかったと、男は反省した。
「ま、まあ、そうか。ちょっと休憩するべか。疲れたなあ、あはは」
ゴミ集めの作業は一時中断となった。なんとなくバツが悪い管理人は、こっちゃ来いと手招きしながら歩き出した。小太郎は拒否の態度をするのかと思いきや、素直に従った。もう泣き声はあげていないが、それでも半ベソをかきながらの後追いである。
「ほれ、入れや」
男が少年を招き入れたのは、さっきの管理小屋である。小太郎の物置の家より大きくて丈夫そうな造りだが、中はそれほど広くはなく土足であった。室内に入ってすぐのところに、アルミ板を張り合わせただけの雑な流し台があった。タワシと洗剤が排水口の縁に転がっており、脇の調理台には電熱コイルタイプのコンロが一つあった。
「ボンズ、ジュース飲むか、ジュース」
粗大ゴミ捨て場から拾ってきたような凸凹だらけの茶箪笥があり、男はそこから湯飲み茶わんを取り出した。
「あれえ、一つしかねえか。まあ、座れやな」
管理人は、とりあえずぼんやりと立っている小太郎を椅子に座らせた。電熱線コンロにヤカンをかけて、お湯を沸かした。ブリキ製で唐草模様の缶から茶の葉を急須に入れて、お湯を注ぎ込む。管理人のサラリーに対してお茶の葉は高価なものなので、その量は気の毒になるほど少なかった。ちなみに、そのお茶は自分用である。
「まあ、これしかねえけど、しゃあねえべや」
ごはん茶碗があった。それを小太郎に持たせると、茶箪笥の引き出しから名刺サイズの小さなビニール袋を取り出した。その袋の封を開けて中身の顆粒を茶碗にいれた。
「ほら、メロンソーダだぞう」
そう言って、お湯ではなく水を注いだ。椅子にちょこんと座って茶碗を手にしている小太郎は、茶碗の液体がシュワシュワシュワと泡立っているのを眺めていた。
「ジュースの粉だ。飲め、うんまいぞう」
小太郎はそういう駄菓子があることは知っていたが、じっさいに飲んだことはなかった。くんくんと用心深く鼻を利かせると、ほのかに甘いメロンの香りを拾った。一度管理人の顔を見上げてから、まるで熱い汁を啜るようにそっと口をつけた。
「んん~?」
所詮は安物の粉ジュースなので、例えば本物の清涼飲料水のような絶妙に美味い味ではなかった。いかにも人工的な香料に甘さを少し加えただけの、中途半端に水っぽい飲み物なのだ。
「ああ~、ん~、メロ~ン~、んん~」
昭和時代は、庶民にとってメロンは高級品であった。ウリのような安いメロンはけっこう出回っていたが、藤原家で小太郎に供されたことはない。しかしながら、学校給食で薄くスライスしたメロンがデザートに出されることがあったので、人生で三度ほどは食べたことがあった。だから、安いといえども本物メロンの味は知っていた。
一度は味わってみたかった駄菓子屋の粉末ジュースであるが、あまり美味しいものではないというのが、小太郎の率直な感想だった。
「ワシな、この粉ジュース、大好きでな。ホントはミカン味がうめえんだけどよ」
そういうわりには、管理人はお茶ばかり啜っている。胸のポケットからクシャクシャに潰れたわかばを取り出すと、折れ曲がったタバコを咥えて火を点けた。無精ひげでシミだらけだが、優しくて穏やかな中年顔が小太郎を見ていた。
「ん~」
小太郎は心の落ち着きを取り戻していた。管理人推薦の粉ジュースはたいして美味くなかったが、なんだか優しい大人と、まったりとした時を共有しているのが心地よかった。仲間意識というか、人に対して親しみをおぼえたのは、養護施設時代にひいきの職員と一緒にいるとき以来だったと思った。
「ん~、ん~、ふふ~ン~」
調子よくなって、足をブランブラン振っていた。気持ちに余裕ができたので、小屋のあちこちに目を配った。全体的に雑然とした印象だが、要所はわりと整頓されていた。
「ああ~、あれ~、な~に~」
部屋の奥まった場所に、廃材を組み合わせたような、いかにも手製な棚があった。小さな瞳がそこに注目した。ごはん茶碗に残っている液体を急いで飲み干し、小太郎は管理人の許可も得ずに近づいた。
「ボンズ、スゲエだろう。ワシの趣味よ」
そこに置かれていたのは、当時ミニカーと呼ばれていた玩具である。実際に市販されている自動車を模倣した、手のひらにのるぐらいの金属模型だ。
ブリキやプラスチックなどではなく、重い合金でしっかりと作られており、本物と同じ色の塗装が施されたそれらは、ミニチュアといえども高級感があった。子供たちには垂涎の的であり、値段が高いのでおいそれとは買ってもらいえない。当然、小太郎が持っているはずもなかった。
「おお~、おおっ~」
五段の棚には、少なくとも五十以上のミニカーがあり、しかもすべてが別車種だ。管理人は小太郎の後ろに立って腕を組んだ。自分のコレクションを見て感嘆の声をあげている子供を見て、満足そうに頷いていた。
「ほら、ボンズ。これ持ってみろ。高えんだから、落とすなよー」
そう言って、上から二番目の棚から赤いスポーツカーを取り出した。屈んで小太郎の手を取ると、真っ赤なポルシェを、そっと乗せた。
「うわわ、うわうわ~、んんん~~~」
少年は興奮していた。右手に持っているミニカーが、この世にあまたある宝物の中でもっとも価値があると、その瞬間に断定した。手のひらに熱さと重さを感じて緊張している。
「どうだボンズ、一つ持っていくか。一つやるよ」
無垢な子供の、称賛に満ちた驚きの態度が、ことのほか嬉しく思った。管理人には友だちがいないので、お金をかけたコレクションを自慢したくてもできなかった。これほどまでに喜んでくれるので、一つくらいあげても構わない心境になっていた。
「ええーっ。・・・、ええーーっ、えええ~~、んんん~」
ビックリである。誰かの好意に接することをほぼ経験していない小太郎にとって、宝石にも匹敵する貴重品をもらえるのは驚愕であった。
「んん~、んん~、へへへ~」
真っ赤なミニカーを手にしながら、小太郎は心の中で踊り狂っていた。これは僥倖である。盆暮れ正月アルマゲドンが一気に押し寄せて、さらに天使と女神と神様仏様がニコニコしながら少年の頭をボコボコと叩いた。
「あり~が~とう~、んん~」
たいていの子供には遠慮というものが欠けている。小太郎はたいていの子供からはかけ離れているが、その部分については共通していた。手に持ったミニカーをありがたくいただいて、精いっぱいの礼を言った。
「あ、ちょ、ちょっと待てや」
少年が手にしている真っ赤なスポーツカーを見て、男のケチ心が疼いた。
「それじゃなくて、こっちな」と言うと、小さな手のひらからひったくるように赤いミニカーを奪い、替わりに一番下の棚から白いモノを引っこ抜いて小太郎に差し出した。
「ほら、こっちゃのほうがカッコいいべや。ぜったい、こっちゃのほうがいいって。な、な」
管理人が新たに手渡したのは、ありふれた大衆車のミニカーだった。しかもドアやフェンダーミラーが欠損していて、白い塗装もところどころ剥げている。使用されている金属も軽々しくて、手にした感触はあきらかに安物だった。
「ん、ん~、う~~~ん~」
大いなる喜びから、ちょっと嬉しいくらいまでにレベルダウンしてしまった。この取得をどのくらいまで楽しめるのか、小太郎の気持ちは混乱していた。
「これ、おめえ、日本で一番売れてる車だからな。おめえ、道路見ろ。この車ばっかりだべや。なあ、そうだべ。なあ、なあ」
管理人は、そう力説する。あの真っ赤なポルシェは限定品で高かったのだ。手放すには惜しいのである。
「んん~、ありがと~」
小太郎は、白いミニカーを見つめたまま再び礼を言った。最初に触った真っ赤なスポーツカーよりはよほど見劣りしたが、それでも小太郎が初めて所有することになった本格的なオモチャである。素直に喜ぶことにした。
「ブ~ン、ブ~ン」
床の上でじっさいに走らせてみた。タイヤは四輪とも固着しているので、手を離したとたんに止まってしまう。ミニカーとして楽しむには、力を込めて強引に滑らせなければならなかった。
「そういえば、もう昼だな。ボンズ、メシはどうすんだ。友だちと一緒に食うのか」
そこまで言って、男は(しまった)と思った。目の前にいる少年は級友たちから相手にされず、一人ぼっちなのである。嘲笑されこそすれ、仲間の一人として認められることはない。
「ま、まあ、ここで食ってけや。今日は天気がいいから、外で食うとアブにたかられるべ」
テキトーなことを言って誤魔化すが、小太郎には友だちがいない以外にも触れられたくないことがあった。
「ぼく~、・・・、おべんとう~ね~、んん~、ないのね~。へへ~」
顔を上げないでボソボソと呟く。もらった白いミニカーを、たいして楽しそうでもなく弄り回していた。
「そったらこと、なあんも心配することねえ。なあもだあ」
もちろん、小太郎が弁当を持参してきていないことは予想できた。それが原因で、みじめさに打ち震えていることも想定内である。であるならば、その哀しみを慰めてやりたいという心意気になっていた。
管理人は、戸棚にあったインスタントラーメンを三袋取った。さらに、部屋の片隅にある膝下くらいの高さしかない冷蔵庫から卵をこれまた三つ取り出して、それらを電熱線コンロの横に置いた。
「ボンズに本格ラーメン食わしてやっからよ」
コンロの上に鍋が置かれた。取っ手のプラスチックが割れて、なべ底も汚いそれに、大量の水が注がれた。ニクロム線がオレンジ色に灯りながら熱さを放出し始めた。小太郎は、管理人がラーメンを調理するのを黙ってみていた。きっと自分の分も作っているのだと思ったが、絶対の確信はもたないことにしていた。もしもの時に際しての、諦めの気持ちは常に備えておかなければならない。
「ボンズ、煮えてきたぞ。サッポロ七番の美味いやつだからな。卵はどうするべや。生のほうがいいか」
男は卵を見せて、どうするかを問うた。
「た~ま~ご、んん~」
まずもって、ラーメンに卵を入れた経験が小太郎にはなかった。それはたぶん、よほど美味くなるだろうと予想できるが、急に問われても、どういう具合にしたらよいのかわからなかった。
「ワシは、半生は好きじぇねえんだ。しっかり煮たほうがいいんだ。それでいいべ」確信に満ちた言葉だった。小太郎は、小さく頷く。
三つの卵がすべて割り入れられた。ラーメンとともに熱湯の中で撹拌され、煮詰められる。
「よっしゃ、粉を入れてかき混ぜたら出来上がりだ。こん時な、火を消すんだぞ。したら、うんまくなるからな。これ、ラーメンがうんまくなる魔法な」
腹をすかせた子供に、その魔術は説得力があった。昨夜も同じメニューだったが、酔っ払いがテキトーに作った激辛ラーメンとは雲泥の差があるはずだと、小太郎は確信していた。
「じゃあな、どんぶりによそうからな」
調理器具はたいがいに汚れていたが、どんぶりはキレイだった。管理人が二人分をよそって床に置いた。袋三つ分のインスタントラーメンは汁も多めなので、それぞれのどんぶりからあふれそうになっていた。
「ボンズ、コショウをたっくさんぶっかけると、うんめえぞ」
「ああ~、んん~。いら~ない~」
昨夜、唐辛子過多のラーメンで下痢三昧になったのである。辛いのは避けたいと思う小太郎であった。
「なんだよ。最近の小学生は軟弱だなあ。じゃあ、食うか」
「いた~だ~き~ます~~」
「おう、たっぷり食えや」
管理小屋の床に、どんぶりを置いての昼食だ。汁の量が多く、しかも熱いので持ち上げられない。しぜん、犬食いの姿勢となってしまった。
「んん~、おいし~」
インスタントラーメンではあるが、卵がたっぷりと入れられたそれは美味かった。小太郎はさらに姿勢を低くして、どんぶりの縁に口をつけて汁をすする。
「あちち~」
「ボンズ、あっついからヤケドすんなよ」
食事中、管理人はなにかと話しかけていた。
内容はワシのラーメンがうまいぞとの自慢ばかりだが、嫌味なニュアンスはまったくなくて、かえって賑やかな食事となり雰囲気は良かった。大人に気づかわれての食事は養護施設以来であり、その安心感は空腹を満たす以上の効果があった。
「どうれ」
一足早く食べ終わった管理人は、どんぶりを持って台所に行き 鍋とどんぶりを手早く洗った。電熱線コンロのスイッチを入れると、洗ったばかりの鍋を置いて水を入れた。鍋の表面についていた水滴が焼けたニクロム線に当たり、バチバチと音を出していた。
「ごちそ~~、さま~、へへ~」
ややしばらくして、小太郎も食べ終えた。いつも空腹状態な少年は、少し食べたぐらいでは物足りないのだが、このラーメンは量が多かったので十分に満足することができた。管理人が自分の分を減らして、多めに分けてくれていた。
「ボンズ、みんな集まってるぞ」
窓の外では、広大な敷地内に散らばった子羊の群れが一か所に集められていた。帰りの時間となり、各クラスの教師たちが号令をかけている。
「きょう~わ~、あり~がと~ねえ。んん~、へへへ」
自分も戻らなければならないことを、小太郎は知った。両膝に両手をついて深々と頭を垂れて、ミニカーとラーメンと、そして優しく接してくれた感謝を言葉と態度にあらわした。窓の外をチラっと見てから、小屋を出ていこうとする。
「ボンズ、また来いよ。今度はジンギスカン食わしてやるからよ」
「んん~、じん~ぎ~か~ん。ん~」
このおじさんはきっとジンギスカンを食べさせてくれるだろうと、小太郎は思った。次の遠足はいつになるのか、きっと大きな肉がたくさんあるジンギスカンなのだと考え、頭の中をジュージューと焦がした。
「それと、これもってけ」と言って、まだ熱が冷めやらぬ茹で卵を差し出した。小太郎がラーメンを食べている間に、三つほど茹でていたのだ。
「ほれっ」
「うぎょ」
さっそく一つを小太郎の額にぶつけた。パキッと小気味よい音がして殻が割れる。おでこをさする小太郎の前で、男がすべての殻を素早く剥き、尻のポケットから食卓塩を取り出してサササっと振りかけた。
「ほれ」
そして、なにが起こっているのか、まだ飲み込めていない小太郎の口に卵を突っ込んだ。
「んん、ん。むむ~ん、フフフ~」
適度に塩味が効いた茹で卵は、小太郎の枯れた舌によくなじんだ。だが、なかなかの大きさなので咀嚼には時間がかかる。窓の外では教師たちが大声で叫んでいた。子羊たちの輪が徐々に狭まっていく。
「んんーっ、んぐっ、うぐっ」
かみ砕いたためにパサパサになった茹で卵をムリに飲み込もうとして、ノドにつっかえてしまった。小太郎が目を白黒させていると、管理人が自分の湯飲み茶わんの残りを無理やり飲ませた。やや冷たくなった薄いお茶が、粉々になった白身と黄身をノドの奥へと流した。
「あと二つは家に帰ってから食えや。つぶすんじぇねえぞ」
管理人は、上ジャージのポケットに茹で卵二つを放り込んだ。
「ほんと~に~~、あり~がと~ねえ。おじさ~ん、おじ~さ~ん、ありが~と~ね~。んん~」
遠足にやってきた子供らしい笑顔だった。最後に一礼すると、小太郎は小屋を出ていった。カバンを持って、担任教師が呼ぶ集合場所へと走っていった。
今日は久しぶりに管理人らしい仕事をしたと、男はまんざらでもなかった。今度来た時にはたっぷりと肉を食わせてやろう。腕を組んで窓の外を見つめる男の顔は、いつになく血色が良かった。
「メシーっ」
藤原夫人の甲高い声が響いた。遠足の疲れにより、物置のベッドでまったりとくつろいでいた小太郎は、弾かれたように跳び上がった。時刻は夕暮れ時であり、近所の家からは夕食のいい匂いが洩れだしていた。
「メシだーっ」
再びの呼び出し音は一回目よりも大きく、多少の鋭さがあった。今日も夫人はいないのだろうと考えていたので、小太郎は夕食をもらいに行く準備をしていなかった。茹で卵二つと水があるので、空腹の心配はしていなかったのだ。
「んん~、はあ~い~」
唯一の食器であるアルミ製のボウルを持って、小太郎は急ぎ馳せ参じる。晩めしが欲しいというよりも、彼女の機嫌を損ねてはいけないとの気持ちが強かった。
「呼ばれたらさっさと来いよ、キモ焼けるな」
藤原夫人の不機嫌はいつも通りであったが、怒気を当てられるのも久しぶりのような気がして、それほど身をすくめることはなかった。
「さっさとよこしな」
小太郎が差し出したアルミボウルをひったくると、藤原夫人は台所の奥へと消えた。少しの間をおいた後、いつものようにドタドタと床を踏み鳴らしながら戻ってきた。
「今日は炒めメシだからね」
小太郎の食器には、しゅうゆ色の焼き飯が山のように盛られていた。藤原夫人が忙しかったり苛立った時は、この献立になることが多かった。
「あ~りが~と~」
藤原家の炒めメシには細切れのナルトぐらいしか具材が入っていなが、小太郎はあんがい好きだった。なんといっても飯の量が多いのと、藤原夫人の味付けと炒め具合は絶妙なのだ。
今日は先生に中華まんじゅうを取り上げられたり、級友たちにからかわれたりもしたが、最後のほうでいいことがあった。炒めメシと茹で卵のおかずはすごく豪勢だと、小太郎は喜んでいた。
「ほら、これも持っていきな」
藤原夫人が唐突に突き出したのは、一本の中華まんじゅうであった。それを炒めメシの上にポンと置くと、さっさと勝手口のドアを閉めて行ってしまった。
「んん~、んん~、ふふふ、ひゃあ」
最後の最後に極上のデザートが供され、小太郎の心は舞い躍った。これは食べきれないのではないかと考えながら、大盛りのアルミボウルからはみ出した中華まんじゅうを凝視していた。躓いて台無しにしてしまわないように、ゆっくりと歩いて物置の家へと戻っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます