第1話 鬼瓦人 おにがわらじん
「この家マジであっちーな!暑すぎて倒れそうだよ!ナツー扇風機!」
「なんだよ兄貴 自分でそんぐらいしろよな!可愛い妹が遊びにきてやってんだから、暑すぎて死にそうだよ」
「ッチ!使えねーな」
バコン 「おい?」
「痛って、、、すいません」
「分かれば良い、あっおにぃ それ仲間にならない方がいいよ」
「世界半分やるから仲間になれ?ここまで冒険してきたのに急に仲間END?いや、どうせYESしか選べないんだろ」
NO←決定!!
不快な音と共に画面がフリーズする
「えっ!?」
「あっはははは!!おにぃ それやられてるよ多分もうだめだよ、、」
「いやリセットを、すればってあれ?最初っからになってる。」
隣で大口開けて大笑いする妹を見てイライラする。
妹の鬼瓦 夏(おにがわら なつ)は中学生にもなって俺の家に上がり込んで、馬鹿にしてくる。
やれオタクだのやれインキャなど、、本当に嫌な妹だな
昨日の夜に、長期休暇をもらってウキウキな俺に、一本の電話が鳴った。
「あっもしもし?じん?ひっさしぶりねーあんた最近ちゃんと休暇取ってんの?」
「母さん、、久しぶりー急に電話ってなんかあった?」
「いやー母さんな旅行いくことになったんよーそんでねそのなつの面倒を見てほしいなー思ってな」
「いやいやいや、確かに俺も休みに入るけど、、なつも一緒に連れていけよ」
「なつも誘ったんだけどね。あれきっと、思春期ってやつよ!って事でなつは明日そっち行く為に早めに寝てるから宜しくね!じゃね!」
ップーップーップー
「ちょまっ!俺の休暇が!!」
っが、昨日の回想だ。本当に面倒ごとを押し付けられた感じだ、昔から人懐っこいなつは、俺の後を追ってくる可愛い妹だったが、最近は
「兄貴!アイス買ってきて!暑い死にそう!!」
そう言いながらバシバシ叩いて来る。
「分かった分かった!」
そんな妹の願いを聞き入れて甘やかすのはだめだとわかっているが、買い物に行く。
「ってくるんかい!」
隣に妹がついてくる
「あっついんだもん!外の方が涼しいくらい、兄貴大丈夫?」
「ゲームしてたら暑さ忘れるんだよ、お前のせいで暑いよ帰ったらエアコンつけるよ」
「やったーハハハ」
なつが両手を上げて喜ぶ、無邪気な感じはまだ可愛らしい
「コンビニまで競争ね!負けたら奢ってよ!」
そう良い走り出す
「しょうがないな、」
そう言い走ろうとする
ガッシャン
目の前が一瞬眩む
「え?」
「兄貴!!」
目の前に地面が急に立ち上がってきた
バタンッ
頭に鈍痛が走り、目が眩む。
壁に血が広がっていく、すぐ横に花瓶が割れているのが分かった
「兄貴、大丈夫!?血が血が!救急車、、死なないでお兄ちゃん!死なないでおにぃちゃーん」
なつの泣く声が聞こえる
意識が薄れていく中、最後の力を振り絞り声を出す
「久しぶり、、に、お、にい、、、ちゃんって呼んだな!なつき!!へ?」
痛みが消え、朦朧としていた意識がはっきりとする。、、が
「なん、、だここ?」
目の前には、先程までビルが立ち並ぶ景色から一転、草原の綺麗な景色が広がっていた。
「おいなつき!ここどこ!?なんっで」
返事がなく、さっきまでの周囲の人の気配?声がなくなり、見渡してみる
草原が広がるだけの景色に寒気がする
「ドッキリか何かか?っつっても俺そんな友達いねーわ」
一人で言って虚しくなる。
ここまで何もない草原は、TVで見る綺麗な景色とは思えない程の恐怖感がある
砂漠や、海の真ん中、何もない空間に恐怖する感じかな?
草原でこんなことを思うとは、、
「何もない、ってか確か、、花瓶で頭打って血が」
頭を触って確認してみるも、なんともない
ここは天国か?いやここまで何もないと、地獄?
体は動くけど、どこか現実感のない景色に戸惑ってしまう
「えーっと、とりあえず何をしようか」
急に一人になって寂しく独り言が増える。
近くに人がいないか?食べるものがないか?ここはどこなのか、急いで把握しなきゃ、もし海外だとしたら生きていけるのか?いろんな不安が募る
「今俺ができることは、、食料探しかな?人はいなくても基本ぼっちの俺なら問題なし!」
自分に言い聞かせるように声を出し、歩き出す。
森と山が遠くに見えた、
「森と山か、、森の方が川とかあって村とかあるイメージがあるなー。 よっし!森の周辺だな!」
気合を入れて森の方に向かう
どっどっドッドッドドドド
すごいスピードで丸い球体が近づいて来る
「はぇっ?」
「止まって〜くぅ〜だぁ〜さぁ〜いぃ〜」
丸く四足歩行の怪物がこちらに向かってくる
黒い体毛に、豚のカラダした犬?初めてみる動物だし、初めて見る大きさだ
大人の像くらいのサイズかな?
「っておいおいおい、観察してる場合じゃないだろ!あっ死」
ドドドドド
「きゃっー!そこの人危ないですよ〜!!」
目の前で犬が急ブレーキする。
風圧と砂埃に少し吹き飛ばされる。
「痛った、、って、俺生きてる、!?助かった、、、のかな?」
ゴホッゴホッ
砂煙を吸い込んでしまい口の中のジャリジャリを吐き出す
「あのぉ〜大丈夫ですか〜?」
弱々しい声で間伸びした声に、少しいらつきを覚える
「大丈夫じゃねー、、ょー」
目の前に、歯を剥き出し今にも噛み付いて来そうな獣がいた。
「ブルヒィッブルヒィッ」
生暖かい風と臭い空気に吐きそうになる、
「あ、、あ、の?会話できるんですか?」
「あ〜ちょっと待ってくださいね〜」
目の前の怪物の上から声がする。
うんしょ ヨイショ うんしょ
少し抜けた掛け声と共に、目の前に手のひらサイズの小さい美人が降りてきた
「あ〜?もしかして〜人間ですか〜?」
手の上で小人?が首を傾げ聞いてくる。
メガネをかけ、フリルのスカートを履いた小人、、かわいい
少し眺めていると、カタカタ震え出した。
「人間だよ?」
失敗した。彼女の反応をもっと見とけばよかった。
「ふぇーんえーんえーん、食われる〜」
「ブルヒィッ!!」
「大丈夫だよ!安心してください!!僕は悪い人間じゃないよ」
「そーなんですか〜?こらクック唸らない」
今にも飛びかかって来そうなクックと呼ばれた魔物が座り込んでこっちをみている
「クックはいい子ですね〜」
そう言いながらこっちを見て笑う
「そうですねー」
(今そのいい子に喰い殺されそうになったんだけど)
小人の女の子としばらく見つめあって、はっと思い出した顔をする
「これはこれは、失礼しました〜私はメア国準魔王軍代表〜アッドレーア・ドーアと言います〜」
小人の女の子は笑顔を浮かべ、流暢に自己紹介する。
聞き馴染みのある言葉にやっと確信する。いやさせられた。
鬼瓦人この度異世界転生したみたいです。
手の上でモジモジと照れている、自称【準魔王軍代表】に少し身構えるが、なぜか恐怖はなかった。
(なぜか、、ではないな可愛いからもあるな)
「えーっと、アッドレットーアさん?」
「ドーアで良いですよ〜 ふふっ人間って感じですね〜」
「一応人間ですから、僕は鬼瓦人って言います。」
「オニガワラ・ジン?オニガワラさんよろしくお願いします〜」
手でスカートを持ち上げ挨拶してくる
動作は礼儀があって、えらい人感は出ている
「ところでドーアさんは、何をされてたんですか?」
「え〜と〜、あっ!!クック!早く早く!はやく任務をこなさないと。行くよ!戦魔【フライ】」
手の平から重さが消え、ドーアが浮いてクックの元に飛んでいく
「あ、あの僕も連れて行ってもらえませんか?」
また一人になるのが怖くて、つい声をかけてしまう
「オニガワラさん?貴方は人間族でしょ、私たちとは住む世界が違うの」
クックはドーアが背に乗ったのを確認し、立ち上がる
流暢に喋るドーアに圧倒され、戸惑う
「オニガワラさん、貴方はとても話しやすいけど、やっぱり人族と魔族では分かり合えないの。」
クックの背中のほうから悲しそうな声で話してくる
「だからね?もし魔族とまた話す機会があれば優しくしてほしいな。
メア国 アッドレア・ドーア この名を使えば魔物も少しは対話してくれるから。」
クックが尻尾を振り、ブフゥーと鳴く
じゃぁなと言っているようだった
咄嗟に手を伸ばす
「待ってっ」
「クック、なんか変な人間族だったね」
魔乗犬(マジョウケン)のクックにつぶやく
「ブッブゥー」
少し寂しそうに鳴くクックの黒いゴワゴワした、背中を撫でる
「急なお別れになったけど、オニガワラ また会えたらいいな
さぁクック!魔王会議に遅れるから飛ばしちゃって!」
その言葉でクックはさらにスピードを出す
「アッドレア様、人間と話してしまった事をお許しください。そしてオニガワラさんにご加護を」
そう呟きながら、ドーアとクックは森に向かう
普段なら聞き逃さない小さな悲鳴と共に。
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