第2話 理不尽
「あの、どこか入れるギルドってありますか?」
僕は、冒険者協会のカウンターの受付嬢に声を掛けた。
「カードの提示をお願いします」
僕はカードを見せる。
――――――――――――――――――
ミュディン/剣士/LV2/Fランク
HP:9
攻撃力:2
守備力:2
魔力:4
素早さ:3
運:10
スキル:―
魔法:―
腕力:2
脚力:3
スタミナ:8
――――――――――――――――――
「ご提示ありがとうございます。ギルドに加入するのには基本Eランクないと難しいかと。さきほど、レベル上げのパーティーの申請の方がいらしたので、その方とレベル上げしてみてはいかがですか? えーと、あの二人ですね」
受付嬢は少し離れた場所に立つ男女を指さした。
一人は、赤い髪の男。彼も剣士だろう。剣を下げている。女性の方は杖を持っていから魔法使いかも。青い長い髪……あれ、僕は二人を知っている。
そうだ。これ、今朝の出来事じゃないか。
そっか。僕はやっぱり死んだんだ。これは死ぬときに見ると言う走馬灯なのかも。でもどうせなら、もっと前からの記憶を見たかったな。
「あの、すみません。レベル上げに行くんですか? 僕も連れて行ってほしいのですけど」
声を掛けると、二人は僕を見た。赤い瞳と紺の瞳が僕を値踏みするようにジロジロと見る。
ボロボロの灰色の外套を羽織りフードを深く被っていて、剣も切れ味が悪い中古の剣。荷物らしい荷物はない。
隣の村からユーラ街に来た田舎者の僕は、彼らのお眼鏡に適うだろうか。
「お前、レベルいくつ?」
「二です……」
「俺は五。ゴブリンを倒した事あるか?」
「ないです……」
僕の家は、ほぼ自給自足で生活していた。四人姉弟の末っ子の僕は自立する事にしたんだ。一番上の姉が結婚して二年目にして、子宝を授かった。二番目と三番目の姉も今年、結婚して家を出て行ってなんか家に居づらかったというのが本音だけど。
冒険者協会の支部が僕の村にもあって、冒険者になった。素質があれば、レベルが上がった時に魔法やスキルを覚えるだろうと言われ、近くの弱いモンスターを村にいる冒険者に手解きを受けながら倒しレベル二にしたものの何も覚えなかった。
魔法やスキルがないのならギルドに入った方がいいと言われ、街まで来たのはいいけれどFランクでは入れないなんて。
ランクは、ステータスの数値の合計によって決まっているらしい。
HP・攻撃力・守備力・魔力・素早さの五つの合計が、四一以上になったらEランクなる。人によってレベルが上がった時に上昇する数値はまちまちらしいので、僕は何レベルになったらEランクになれるのやら。
HPから運までが、レベルによって変わる数値で、腕力、脚力、スタミナはレベルに関係なく自分の努力で増やす事が可能。
というか、運もランクの数値合計に入っていれば、五レベルぐらいで四一超えそうな気がするけど、運を除いた数値ならもっと上げないといけない。はぁ……なんで僕のステータスは、運が一番大きな数値なんだ。
「ちょっとカード見せてくれる?」
そういうので仕方なく見せると、二人の顔つきが険しくなる。
「ねえ、マイケル。この子を仲間にするの? 剣士ってなっているけど、攻撃力は私と一緒よ」
う。魔法使いと一緒なの僕。
「うーん。そうだな。条件付きでなら」
「え? 条件って?」
「俺の荷物を持つ事」
荷物? パッと見たところ荷物なんて背負っているリュックだけのようだけど。そんなに邪魔かな?
「それくらいなら」
「え? 仲間にする気?」
「どうせ、今日一日ダンジョンに潜っていれば、Eランクになるって」
「だったらこの子いらなくない?」
「いるの。俺は、マイケル、こっちはミーチだ」
「はい。宜しくお願いします」
「まあ、いいわ。どうせ今日限りのパーティーだし」
「じゃ、行こうぜ」
マイケルさんの後ろを僕らがついて行くと、荷物預かり所へ向かった。どうやら荷物を預けてあったらしい。お金持ちだなぁ。
「うんじゃ、よろしくな」
「え……」
マイケルさんが僕の前に置いた荷物は、ソロ用テントにたぶん食料が入っているだろうリュックだった。
「ちょっと待って。ダンジョンに寝泊りでもするの?」
「いや。期限がぎりぎりで、手持ちのお金もギリギリでさ。いやぁ助かった。期限過ぎたら超過代かかるし。食料も入っているからさ」
助かったじゃない!
「これ、今回のダンジョンで使わない物だよね?」
「まあ。テントはな。でももう手続きすましちゃったし。食料ならダンジョンで食べるなら分けてやるよ。それに持つって言ったよな? できないなら金出せよ」
「はぁ!?」
「マイケル、あなたって……」
ミーチさんは、ちょっと困惑して見せるも何も言わなかった。結局、なんだかんだと押し切られなぜか、マイケルさんの荷物を持って移動する羽目になってしまった。
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